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ブラック・ダリア事件 |
![]() エリザベス・ショートの屍体 ![]() エリザベス・ショート |
極めて異常な光景である。発見者がマネキンだと思ったその屍体は、腰からきれいに半分に分かれていた。まるでいたずら坊やが胴と脚を持って引っこ抜いたバービー人形のようである。しかも、口は右の耳から左の耳まで切り裂かれ、悪魔の形相を呈していた。 新聞報道は過熱した。女優志願の美女が半分になって見つかったのである。部数競争のこの上ない題材だ。『ロサンゼルス・エグザミナー』のウェイン・サットンはいち早くマサチューセッツの実家の電話番号を調べ上げた。編集長は云った。 |
![]() 新聞用に修正された現場写真 ![]() 犯人からの小包 |
検視解剖の結果は、更に驚くべきものだった。肛門と膣には何かが押し込まれていた。それは人間の皮膚だった。小片をパズルのように並べると、それは大腿のえぐられた部分であることが判明した。 捜査は難航を極めた。軍人専門のクラブでホステスをしていた彼女の交友関係は幅広かった。前述の通り、彼女は性交が出来なかったので、男たちはいつもおあずけを食った。そのために、お高くとまった女だと思われていた。多くの男たちから恨みを買っている可能性があった。 エリザベスの発見から1週間が経とうとしていた頃、ビルトモア・ホテル近くのポストから怪し気な小包が回収された。宛名は「『ロサンゼルス・エグザミナー』ほか各紙」。新聞からの切り文字で「ダリアの所持品」と書かれていた。中にはアドレス帳、名刺、エリザベスの出生証明書、社会保険証、それぞれ違う軍人と撮った写真数枚が入っていた。アドレス帳は数ページ分が破り取られていた。すべてが指紋を消すためにガソリンに浸されていた。 |
![]() エリザベス・ショートの屍体 |
『ヘラルド・エクスプレス』の記者、アギー・アンダーウッドは、ガーナー・ブラウン警部補と親しかった。ブラウン警部補は「エリザベス・ショート殺しとジョーゼット・バウアドーフ殺しとは関連がある」と考えていた。 |
![]() エリザベス・ショートの屍体 |
一方、捜査本部には興味深いタレ込みがあった。犯人を知っている男の話を録音したというのだ。半信半疑でテープに耳を傾けると、かなり詳細な殺害状況が語られていた。しかも、その男はエリザベスが性交が出来なかったことを知っているようなのだ。この時点ではそのことは公表されていなかった。 あまりに出来過ぎた話だが、『切断』の著者ジョン・ギルモアの父親はロサンゼルス市警の警官なので、信憑性は高いと考えてよいだろう。 なお、本件はその余りに衝撃的な遺体の状況ゆえに、いくつもの創作の題材になっている。ロバート・デニーロとロバート・デュバルが共演した映画『告白』(原作はジョン・グレゴリー・ダン)もその一つだ。また、ジェイムス・エルロイのベストセラー『ブラック・ダリア』ももちろん本件をモチーフにしている。2006年にはブライアン・デパルマ監督により映画化されて、我が国でも話題を集めた。 |
| 参考文献 |
『切断〜ブラックダリア殺人事件の真実』ジョン・ギルモア著(翔泳社) |