エリゼベートに血を供給したのは小人のヤーノシュだったといわれている。貧乏な百姓たちは娘を城に奉公に出すことに躊躇しなかった。着物の一枚もやれば進んで娘を差し出した。娘たちはまるでピクニックにでも出掛けるかのように嬉々として城の門をくぐったが、生きて戻ることはなかった。彼女たちは血を搾り取られ、メチャメチャになって城の庭に埋められた。その庭には真紅の薔薇の花がいっぱい咲き乱れていたというが、これはちょっと出来過ぎだ。
エリゼベートの拷問は、人としてどうかと思うようなものばかりだ。真っ赤に焼けた鋼で性器を焼く。喉を焼く。乳房をやっとこで潰す。或る時などは、娘の口に両手を入れて左右に広げて裂いてしまった。逃げ出そうとした娘の足首を切断するエリゼベートは微笑んで曰く、
「あら、あなたは素敵な赤い靴を履いてるのねえ」
これもちょっと出来過ぎだ。
パゾリーニに『ソドムの市』という問題作がある。これはサド侯爵の『ソドムの百二十日』を映画化したもので、4人のナチス将校が美少年美少女を集めて、犯して殺してウンコ喰わせる物凄い映画である。エリゼベートはこのサド侯爵の忌わしき想像の産物を現実に行った。否。それ以上のもんのスゴイことをやってのけたのである。
彼女は60人の美少女を選りすぐると盛大なる宴を催した。小人の道化が踊る。魔女が火を吹く。宴たけなわという時にガシャーンと広間の扉が閉まる。これを合図に兵士が剣を抜く。ざんばらり。ざんばらり。転げ落ちる首。飛び散る血糊。逃げ惑う少女を裸に剥いてせむしが犯す。そして、射精とともに心臓に短剣が突き立てられる。
バラバラ屍体は集められ、脱水ロールにかけられる。浴槽が血で満たされると、エリゼベートは衣服を脱いでこれに浸る。と同時にオーガズムに達し、城内には女王様の歓喜の雄叫びが響き渡る。
よく「冷血」というが、人体から搾り出されたばかりの血は温かいものである。私はこのことを、実際に吐血してみて実感した。
血は温かいのだなあ。
私は死ぬのかなあ。
あいにく私は死ななかったが、きっとエリゼベートも血の温もりを知り、その虜になったに違いない。浴槽に溜めることをもどかしく思った彼女は、直接に「血のシャワー」を浴びることをも試みた。少女の動脈を切り、吹き出す血を裸身に浴びるのである。しかし、少女が騒いで喧しかった。だから、次の時は、少女の口を針で縫うことを忘れなかった。
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