ジョー・ボール
ジョー・ボールの店「ソーシャブル・イン」
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屍体処理の方法はいろいろとあるが、ワニに喰わせたというのは他に類を見ない。そのユニークな屍体処理法ゆえにジョー・ボールは今日に名を残している。
テキサス州エルメンドルフ郊外の181号線沿いの酒場「ソーシャブル・イン」の名物は、州一番が売りの美人ウェイトレスはもちろんだが、何よりも裏の池に飼われている5匹のアリゲーターだった。毎晩、客が盛り上がると、店主は馬肉を池に投げ入れた。場合によっては犬や猫を生きたまま投げ入れることもあった。
店主の「アリゲーター・ジョー」ことジョー・ボールは、酒の密売人上がりのガラの悪い男だった。大酒飲みだがあっちの方もお盛んで、めまぐるしく入れ代わるウェイトレスを片っ端から喰いまくっていた。
事件が明るみになったのは1938年9月のことである。ニューフェイスで一番の人気者だったウェイトレス、ヘイゼル・ブラウンが突然、失踪したのである。
「どうせ男と駆け落ちしたんだろうよ」
店主の言い分を保安官は信じられなかった。ヘイゼルが店主とデキていることは周知の事実だったからだ。ヘイゼルの前には、店主の3人目の妻がやはり失踪している。
店主に疑惑の眼が向けられているその時に、こんな噂が飛び交った。あそこの店主は人間の手足をワニの池に投げ込んでいた…。
「そんなバカな! がっはっはっはっ」
などと店主は豪快に笑ってみせたが、その内心はビビリまくりだったのだろう。24日の夜、保安官が再び激しく詰問すると、店主はレジスターの下に手をのばし、銃を取り出すや頭に一発。あっという間に死んじまった。
かくして「アリゲーター・ジョー」の真実の顔が次第に明らかになっていった。
失踪した3人目の妻はサン・ディエゴで生きていた。彼女はひどく怯えていた。店主はウェイトレスを次々と殺し、ワニの餌にしていたのだ。次は自分がワニの餌になるかも知れない。そう思うといてもたってもいられなくなり、命からがら逃げ出したのである。
彼女の証言により、店主には共犯者がいることが明らかになった。店の雑役夫クリフォード・ホイーラーである。追求の結果、店主が確かにヘイゼル・ブラウンを殺したこと、店主に強要されて遺体をバラバラにしたことを認めた。また、ヘイゼル以前の殺しも証言した。やはりウェイトレスだったミニー・ゴットハードの件である。
州警察はボールが少なくとも5名、おそらく十数名は殺したと見ている。しかし、当人が死んでしまっているので真相は闇の中だ。証拠を食べてしまったアリゲーターは、サンディエゴ動物園に引き取られ、子供たちの人気者になったそうである。いやん。
なお、この事件をモチーフにしたのがトビー・フーパー監督の『悪魔の沼』である。酒場はモーテルに、店主は完全なキチガイに変更されている。
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