天誅御見舞い申し上げます |
在庫を川に棄てるビール製造者 |
禁酒法。 |
禁酒法の母、キャリー・ネイション |
1 天誅御見舞い申し上げます 1900年6月7日、カンザス州カイオワの酒場を1匹のブルドッグが訪れた。身長180センチメートル、体重は100キロ近くはあろうかというその大巨漢は、よく見ればブルドッグによく似たオバタリアン(死語)だ。スイングドアを颯爽とすり抜けた怪物は、そのまままっすぐすたすたすたと店の主人に突進した。 |
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キャリーが女闘士に変身したのは45歳の時である。その頃には彼女はどうにかやりくりしてカンザス州メディソン・ロッジで木賃宿を経営していた。そして、ご近所づきあいで顔を出した「婦人キリスト教禁酒同盟」にすっかりハマってしまったのである。 |
「聖戦」の模様を伝える当時の漫画 |
1900年12月27日、キャリーは今度はウイチタにあるケアリー・ホテルを訪れた。そして、地下にある高級サロンに降り立つや、顔を真っ赤に紅潮させた。その壁には入浴するクレオパトラの巨大絵が飾られていたのである。猛然とカウンターに突進するブルドッグ。 |
ビリー・サンデー |
2 呑ん兵衛はアウト! キャリー・ネイションの他にも禁酒法の成立に貢献した「奇人」がもう一人いる。元大リーガーの伝道師、ビリー・サンデーである。 |
ニューヨークでの禁酒法反対パレード |
3 禁酒法の悪影響 禁酒法の影響は、それはそれは凄まじいものだった。施行前には全国で1万5千しかなかった酒場が、施行後にはなんと3万2千に膨れ上がった。もちろん、すべてモグリである。1930年までの逮捕者はのべ55万人。質の悪い密造酒で失明する者が続出し、アルコール中毒による死者は6倍に膨れ上がった。 (2007年8月25日/岸田裁月) |
参考文献 |
『世界犯罪百科全書』オリヴァー・サイリャックス著(原書房) |