2.絞りとピント |
ニコノスVのレンズは、ボディーにレンズを差し込んで90度まわすとカチッとはまる。ただし上下が反対でも取り付けられてしまう。取り付けたときに絞りのダイヤルが右手で操作できるようにセットしよう。レンズのマウント部近くにMade
in Japan の刻印があります。レンズをセットしたときに、この刻印が上に来るようにしましょう。そうすれば右手にあるダイヤルが絞りになります。(写真の○赤丸fのダイヤル位置) |
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(1)絞りを知ろう |
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イルカは早い動きをするので、ぶれないようにとシャッター速度に興味が行ってしまうかもしれません。でもイルカを撮影するときにシャッター速度より良く知っておく必要があるのが実は絞りなのです。絞りには二つの役目があります。
@光の量を調節する役目
暗いところではレンズの窓を開けて(f 22→f2.8方向に絞りダイヤルを回し)フィルムに光が沢山当たるようにします。また明るいところでは窓を小さく(f
2.8→f22の方向)して光があたり過ぎないようにします。水深が深くなると光が届きにくくなるので絞りを開ける必要があります。ただ水面近くであれば陸上と殆ど変わらず撮影をすることができるでしょう。水面近くであっても遠くにいるイルカの場合は、イルカに反射した光がカメラに届くまでに光が減衰してしまうため、やはり暗く写ります。せいぜい遠くても5mくらいが限界だと思います。実際にイルカを写すときには、晴れているときか、、曇っている時かでこの絞りを調節することになります。ニコノスVを絞り優先の設定にして撮影する場合、絞りを開ける(f22→f2.8の方向)と、光の量が増えて明るいので、シャッターが開いている時間は短くて済み、シャッターは自動的に早く切れます。また逆に、絞りを絞る(f2.8→f22方向)と、光が不足しますので、シャッターは長く開いて、自動的にシャッターは遅く切れ、光がフィルムにあたる量を多くしようとします。しかしシャッター速度が1/125秒よりも遅くなると、たとえば1/60秒などになってしまうとイルカはブレて写ってしまいます。 つまり、絞り値を変えてみて、ファインダー内の情報を見たときに、シャッター速度が1/125秒かそれ以上の速度になっていなければ、絞りを開ける(f22→f2.8)必要があるということになります。 どのくらい絞りを開ければよいかですが、もしシャッターを半押しして測光をした時にシャッター速度が1/60秒という表示が出たら、絞りを一段開ければシャッター速度が一段速くなり、1/125秒になります。
Aピントの合う範囲を広くする役目
絞りは、明るさを調節する以外に、ピントが合って写る前後範囲を調節する役目もあります。実際にニコノスVのピントの目盛りを3mにあわせても、実際にピントが合って写る距離は3mぴったりのところにあるものだけでなく、3mの前後のある程度の範囲はピントが合って写るわけです。このピントが合って写る範囲のことを被写界深度と言います。絞りを絞る(f2.8→f22方向)と、ピントが合って写る前後範囲(被写界深度)が広くなります。ところが35mレンズの場合、絞ってもピントが合う前後範囲(被写界深度)が狭く、イルカを写すのに実用レベル(被写界深度1m〜5m)にするまで絞ってしまうと
f 11になってしまい、これでは暗いため、フィルムに光が当たる時間を長くしようと自動的にシャッター速度が遅くなり、動きの早いイルカはブレて写ってしまいます。それどころか水中では体が固定できないので手ぶれのひどい写真になってしまいます。シャッターを早く切るために絞りを開けると今度は被写界深度が狭くなりピンボケの写真を連発してしまいます。つまり動きが速くて距離が常に変化するイルカを撮影するのには標準レンズ35mmは向かないということなのです。ただし天候、水深、透明度などの最低条件が整い、更に水面近くにイルカが来た場合に「絞り」の設定を駆使すれば撮影ができるでしょう。ただし、困ったことに35mmレンズで大人のイルカの全身を真横から撮ろうとすると、最低4mは離れる必要があるでしょう。しかし4mという距離に来た瞬間は一瞬ですが、その時の構図が必ず良いとは限りません。つまり殆どの場合は4mの距離には居ないわけですのでシャッターチャンスはほぼ全て逃してしまっていることになります。現実的には35mmレンズでイルカを手軽に撮影できる場面と言うのはかなり少ないのです。では、どのようなレンズを選べば良いのでしょうか。 |
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(2)イルカを写すのに適したレンズを知ろう |
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@広角レンズはピントがあう範囲が広い。
このイルカが遠くにいても近くにいても関係なくピントがあってしまう状態にする方法は「絞る(f2.8→f22方向)」と良いとご説明しました。しかし35mmレンズでは絞ったとしてもピントが合う範囲(被写界深度)が狭くて、イルカを写すのには適さないことをご理解されたと思います。ではどのようなレンズがイルカを写すのに適しているでしょうか。最も有効な方法は広角レンズを使うことです。水中カメラでは35mmレンズが標準レンズです。これより数値が小さいレンズ(例えば20mmレンズ)を広角レンズと呼びます。標準レンズと広角レンズを比べると広角レンズはピントが合って写る前後範囲(被写界深度)がとても広い特性があります。 しかも絞りを開けて被写界深度が狭くなったとしてもイルカを写すのには十分過ぎるほど広い被写界深度が得られます。ようはイルカが近くにいても遠くにいても関係なくピントが合った状態にお手軽になる性質があるのです。これはイルカを撮影する上で重要な要素になります。例えば20mmレンズの場合には、ピントの設定を3mに合わせておけば、絞りをどんな値に変更しても1.6m以上のところにあるものは全てピントが合った状態になります。恐るべし広角レンズなのです。広角レンズを使用することにより、ピント設定を3mに合わせて置けば、ピントダイヤルをいじることなく、ドルフィンスイム中にイルカが近くにいようが遠くにいようがお手軽にパシャパシャ撮影できるのです。
左35mmレンズ(水中では標準レンズ)、右20mmレンズ(広角レンズ)
20mmレンズがコストパフォーマンスが高く、イルカも撮れる実用レベルだと思います。しかしそれでも価格は高いです。35mmレンズを既にお持ちの方は、Sea&Sea製ワイドコンバージョンレンズ(WCL-16:\27800-)を35mmレンズに取り付ければ、16mmレンズになり、イルカを撮影するのに実用的なレベルになるでしょう。
水中でイルカとの距離を見てからピントを設定しようとするとシャッターチャンスを逃がしてしまいます。そこで初めから1.5m〜10mの距離なら全てピントが合うような絞りの設定をしてしまいましょう。以下がNikonosVの20mmレンズの絞り設定(f)とピント設定(m)を決めたときにピントが合って見える範囲を示した表です。ドルフィン・スイム中に撮影することを考えると1.5m以上から10m程度までピントが合って写る設定にする必要があります。実際には光は水中では減衰しやすい関係で10mの距離にいるイルカを写すとコントラストが無くなり、海の青は綺麗に写りますが肝心のイルカも青くなってしまい結果として海だけ写ったような状態になるでしょう。しかしカメラの性能上1.5m〜5mも1.5m〜10mも同じ設定になりますのでここでは1.5m〜10mの範囲として説明いたします。簡単に言うとピント(m)のダイヤルを3mにあわせておけば、なんと!どんな絞り(f)に設定してもイルカを写すには充分な被写界深度だと分かるでしょう。これが広角レンズの良いところです。あとは明るさによって絞りを変更してあげれば良いだけです。晴れの日はF5.6、3mの設定で大抵は大丈夫でしょう。曇りの日や早朝のウォッチング時にはF2.8、3mの設定が良いでしょう。ピントのダイヤルは、一番上の写真の○(青丸)のダイヤルです。
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20mmレンズの被写界深度表 (UWニッコール20mm)
実際にピントが合って写る前後の距離範囲(単位:m)とピント設定と絞りとの関係 |
●ピント m |
0.4 |
0.5 |
0.7 |
1.0 |
1.5 |
3.0(★) |
∞ |
●絞り f |
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2.8 |
0.30-0.44 |
0.45-0.56 |
0.60-0.87 |
0.79-1.37 |
1.06-2.62 |
1.60-30.3 |
4.34-∞ |
4 |
0.36-0.45 |
0.46-0.60 |
0.56-0.94 |
0.73-1.63 |
0.94-3.89 |
1.34-∞ |
3.06-∞ |
5.6(★) |
0.35-0.48 |
0.41-0.65 |
0.52-1.09 |
0.66-2.21 |
0.83-11.4 |
1.10-∞ |
2.20-∞ |
8 |
0.33-0.53 |
0.38-0.75 |
0.48-1.45 |
0.58-4.85 |
0.70-∞ |
0.88-∞ |
1.55-∞ |
11 |
0.31-0.61 |
0.35-0.93 |
0.43-2.51 |
0.50-∞ |
0.59-∞ |
0.70-∞ |
1.11-∞ |
16 |
0.28-0.81 |
0.31-1.64 |
0.37-∞ |
0.42-∞ |
0.47-∞ |
0.53-∞ |
0.8-∞ |
22 |
0.25-1.40 |
0.28-3.0 |
0.35-∞ |
0.35-∞ |
0.32-∞ |
0.42-∞ |
0.6-∞ |
15mmレンズの被写界深度表 (UWニッコール15mm)
実際にピントが合って写る前後の距離範囲(単位:m)とピント設定と絞りとの関係 |
●ピント m |
0.5 |
0.7 |
1.0 |
1.5 |
3.0(★) |
∞ |
●絞り f |
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2.8 |
0.43-0.62 |
0.54-1.82 |
0.69-1.93 |
0.87-6.37 |
1.19-∞ |
2.47-∞ |
4 |
0.39-0.78 |
0.49-1.87 |
0.61-3.28 |
0.74-∞ |
0.95-∞ |
1.74-∞ |
5.6(★) |
0.37-0.85 |
0.44-1.94 |
0.53-95.3 |
0.62-∞ |
0.76-∞ |
1.26-∞ |
8 |
0.33-1.24 |
0.39-18.9 |
0.45-∞ |
0.59-∞ |
0.58-∞ |
0.90-∞ |
11 |
0.3-3.21 |
0.34-∞ |
0.38-∞ |
0.41-∞ |
0.46-∞ |
0.67-∞ |
16 |
0.25-∞ |
0.28-∞ |
0.30-∞ |
0.32-∞ |
0.35-∞ |
0.48-∞ |
22 |
0.22-∞ |
0.24-∞ |
0.25-∞ |
0.26-∞ |
0.27-∞ |
0.36-∞ |
快晴で水深1〜2mなら可 |
晴れた日で水深1〜2mで |
通常使う範囲。★標準設定。 |
早朝や、曇り時 |
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参考までに水中では標準レンズと呼ばれる35mmレンズだとどうなるでしょうか。(陸上では50mmレンズが標準レンズですが)20mmレンズと比べるとイルカを写せるピント範囲が狭く、難しいということが分かるでしょう。
実際にピントが合って写る前後の距離範囲(単位:m)とピント設定と絞りとの関係( NIKONOS 35mmレンズ ) |
35mmレンズの被写界深度表
実際にピントが合って写る前後の距離範囲(単位:m)とピント設定と絞りとの関係 |
●ピント(m) |
1.5 |
2.0 |
3.0 |
5.0 |
10.0 |
∞ |
●絞り(f) |
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2.5 |
1.38-1.65 |
1.79-2.27 |
2.54-3.68 |
3.82-7.27 |
6.14-27.1 |
15.7-∞ |
4 |
1.32-1.75 |
1.68-2.48 |
2.32-4.26 |
3.35-10.0 |
4.99-∞ |
9.79-∞ |
5.6 |
1.26-1.87 |
1.58-2.74 |
2.13-5.14 |
2.96-16.9 |
4.17-∞ |
6.99-∞ |
8 |
1.18-2.10 |
1.45-3.27 |
1.90-7.44 |
2.53-∞ |
3.35-∞ |
4.89-∞ |
11 |
1.09-2.48 |
1.32-4.33 |
1.68-17.2 |
2.14−∞ |
2.69-∞ |
3.56-∞ |
16 |
0.97-3.57 |
1.15-9.58 |
1.40-∞ |
1.71-∞ |
2.04-∞ |
2.45-∞ |
22 |
0.86-7.80 |
0.1-∞ |
1.18-∞ |
1.38-∞ |
1.59-∞ |
1.78-∞ |
35mmで撮影するとすれば、絞り f 8/ ピント3m /絞り優先オートの設定にし、イルカが約2m〜7mの範囲に来たときに撮影するか、あるいは良く晴れた日の浅い水深なら、絞り
f 11/ ピント3m/絞り優先オートで撮影できるでしょう。それでも上手く行かない場合は、フィルムをASA1600にしてしまえば、絞りf
8/ピント3m/絞り優オートでもアンダーにならずに撮影出来るはずです。季節にもよりますが、夏場の晴れた日中でしたら、フィルムがASA400でも浅瀬でf
11を使うことが出来るでしょう。
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