波・風を読もう (重要)   
 御蔵島に船が着くかどうかは、御蔵島港付近の波の状況に関係している。港が荒れた状態で接岸しようとすると、船は岸壁に叩き付けられて壊れてしまうので、港が荒れていないことが接岸の条件だ。波は風によって引き起こされている為、波の向きと強さは、風の向きと強さにおおよそ比例していると大まかには考えておこう。誤解が多いのだが、伊豆諸島周辺の波が高ければ欠航をすると思ってしまいやすいが、今回の特集をよく読んでいただければ重要なのは実は波の向きだということが分かるはずだ。細かいことを言うと、黒潮が御蔵島港に入ってるかどうかや、船がカメリア号かサルビア号なのか船長さんが誰なのかなどもやや微妙に関係しているが、今回は大まかに、御蔵島の風の話と、波の話を特集した。よく読んでおけば、きっと得をすることがあるはずだ。
■風の名前
 御蔵島の風には、吹く方向によって名前がついている。これは地理的に本土との輸送が帆船による海上交通のみであった歴史が長かった為、帆船を駆動させる風は重要で、かつては特に冬季に港に吹く季節風、北〜北西〜西〜南西にかけては細かい名称がつけられていたという(参考文献:御蔵島民族資料緊急調査報告)。

■現在の御蔵島港
 御蔵島港は島の北西側にあるため、基本的に冬季の北や西から吹く季節風に対して弱い。北や西からの風はもろに御蔵島港を直撃してしまう為、船が着岸するのが難しくなってしまうのだ。そのかわり、東から吹く風(コチ)や南東、ミナミの風に対しては、今でも断然強さを誇る(重要)。八丈島港が4m以上の高波で欠航しても、風がコチ(東)やミナミ(南)であれば御蔵島港には着岸してしまうほどだ。2003年も3月にもその様な反転現象がおきた。台風が通り過ぎたあとは、風向きが変化して南風に変わることがよくある。2004年の台風2号が通り過ぎたあとも南風に変わり、翌日の午後の便は予報通り南が吹いて、周辺海域の波は高かったが着岸することができた。
[633] いよいよです 掲示板:ジジ さんからの情報 投稿日:2004/09/03(Fri)
 台風が島の北側を通って西側からのうねりが大きいと接岸できない可能性大!と東海汽船のおねーさんが教えてくれました・・・  ジジさん情報ありがとうございました。

天気予報と波浪予測


 御蔵島は伊豆諸島南部という天気欄を読もう。但し波は伊豆諸島南部でも微妙にばらつく場合がある。念のために波浪予測(気象庁発表)を参照しておくのが良いでしょう。またYahooのピンポイント天気予報  マピオンのピンポイント天気予報などではピンポイントで天気予報が出ているので便利だ。ところで「風の向きと波の向きは大まかには同じと考えておこう」と上で書いたが、逆の言い方をすれば、細かいことを言うと風の向きと波の向きは異なっていることがよくあるということなのだ。次の気象庁のサイトでアクロバット形式で配布されている波浪予測を少し研究してみよう(24時間後の波浪予測がアクロバット形式で手に入る気象庁のサイト)。これをよく見ると風の向きと並みの向きがところどころ異なっている場合があるのに気づくだろう。より精度の高い波の向きはやはり波浪予測でしっかりと調べておく必要がありそうだ。

波の影響(船の着岸を予測してみよう)

 波の向きと強さが分かれば、御蔵島港の状態をある程度想像することができるだろう。ニシやサガが吹くと当然御蔵島港を直撃してしまうので波高さ2〜2.5m位でも欠航しやすくなる。船が影響を受けやすいのが、ナライ(北東)〜ダシノカゼ(北)〜サガ(北西)〜ニシ(西)〜ナガシ(南西)だ。この方向で2.5mの波だと着岸は微妙となる。逆にコチ(東)や南東、ミナミ(南)の波には強く波高4m以上でも御蔵島には着岸できることが多い。ミナミの場合は八丈島の八重根港には波がもろに入るので、波が4mもあると御蔵島は着岸できても八丈島は欠航となる。2003年の台風4号が来たときも、24時間前の波浪予測では風が南西で波高4m以上であった。実際、このとき御蔵島には着岸し八丈島は欠航した。このことからも波浪予測の精度はかなり高いと言えるだろう。船の欠航は、この他、黒潮が御蔵島に入っているかどうかでも違う。港に黒潮が入ると流れが速く、波がそれほど高くなくても船が着岸できないこともある。
 
波浪予測は「24時間後」のものよりも、6時間毎の予測の方がより精度が高いので、6時間毎の予測を確認するようにしよう。

風下天気

 船の欠航とは関係はないが、御蔵島では「風下天気」(かざしたてんき)という言葉があるそうである。島の風下側は晴れるという意味である。 実際に夏場など島の風上側は雨や曇りになり、風下側は快晴になる現象が発生する。ではなぜこのようなことが起こるのだろう。
 実は水蒸気を多く含んだ風が島に吹き付けると、風は斜面を駆け上がり山の上に押し上げられる。御山の標高は850.8mもあり山の上は気圧が低いため空気の体積は一気に大きくなる。これを断熱膨張という。この断熱膨張現象は吸熱現象であるため、周りの熱を奪い空気の温度が急激に下がる。そこで空気に含まれていた水蒸気が突然コロイド状の霧に代わり雲となるのだ。
 風はそのまま山を越えるが、そのときには水蒸気は淘汰される為、風下は快晴になる。そんなときにウォッチング船で島の周りを一周すると、島の片側は大雨で、反対側は快晴で暑い日ざしが照りつけるという現象にであうことができるだろう。


2006年05月17日更新