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森で見られる木
かつて御蔵島はニオイエビネランの咲き乱れる島でした。
ところが本土からの人々の乱獲、山採りにより、野生のものは絶滅してしまいました。
これらの野生の花を見ても採取したりしないでそのままにしようね。みんなで自然を守ろうね。


ヤブツバキ
 葉に光沢があり、葉の周りにはギザギザがあります。おなじみの赤い椿の花を咲かせる木です。実から取れた椿油は、御蔵島の名物のひとつ、「忌の日の明神のアブラアゲ(揚げた餅)」を作るのにも用いられてきました。
サカキ
 御蔵島では神棚に祀る木としておなじみです。葉のふちにはギザギザがありません。墓所(はかしょ)に飾る場合もあります。図鑑などにはマサカキとして載っていると思います。(写真はハカショに備えるサカキを運んでいるところ)
ヒサカキ
 御蔵島ではウスサカキと呼ばれています。サカキと同じように葉には光沢がありますが、やや小さくなります。またサカキとは違い、葉にはギザギザがあります。こちらもサカキと同じように神前やお墓に祀るのに用いられています。
シキミ
 御蔵島ではコウノキと呼ばれています。葉の縁にはギザギザはありませんが、縁がややヨレヨレになったものが目立ちます。御蔵島ではこの木を使ってマワシッコ(御蔵島の駒)を作ったそうです。(写真はしげを工房に展示されているマワシッコ)
ヤマグルマ
 細い枝の先に葉が束になって固まっています。葉の付き方がユズリに似ていますが、ヤマグルマは葉が丸くて特徴てきです。御蔵島ではこの木の皮をはがして、臼でついてこねると粘り気がでてくることから、棒の先につけてトリモチとして用いててきました。
ユズリハ
 御蔵島ではユズリと呼ばれています。葉の束が花のようにも見えることから、島ではユズリの花ということもあります。よく見ると、葉の束は最も内側にある一重目の葉が3枚、二重目が5枚、三重目が7枚ついていて、島では七五三の花ともいうことがあります。御蔵島の神主さんの家では正月に鏡餅の上に橙(だいだい)を乗せてそのうえにこのユズリの花を差して飾ります。新しい葉が出ると古い葉が落ちて居場所を譲るところからこの名前がつきました。大らかな心構えを私たち現代人に教えてくれている、そんな気がすることがあります。
シマガマズミ
  御蔵島ではヨーゾメと呼ばれています。木の幹がしなやかな為、ショイカゴ(編んだ背負う籠)の材料として御蔵島では用いられてきました。竹を編む前のフチの部分にこのヨーゾメを使うのだと、島のお年寄りの方が教えてくれました。
ハチジョウグワ (シマグワ)
 薄い緑色をした房状の花が垂れ下がって咲いています。ハチジョウグワも6月くらいになると小さな葡萄のような実をつけます。やがて実の色が濃くなる(6月)頃には、実を食べることができます。御蔵島の桑は、高級品と言われる「シマグワ」のなかでも最高級で、現在では出荷していないため「幻のシマグワ」となっています。御蔵島では豊かな桑の葉を利用して、かつては養蚕が盛んな時代もありました。御蔵島では「桑の木」を「かのき」と呼んでいます。
ハチジョウキブシ
 ころころした玉のような花が房状に連なって咲きます。これも伊豆諸島の固有主です。御蔵島ではボロ沢に向かう車道でも観察できます。
ツゲ
 小さな丸い葉が密集している細い木です。ツゲは成長が遅いので大きい木は大変少ないです。鈴原湿原や長滝山、巌ヶ原などの風衝地帯(ふうしょうちたい:地形的に風が強くあたる場所)では、大きな木はなぎ倒されてしまうので生えることが困難ですが、ツゲは背が低く強度もあるため、強い風に形を変えながらもしっかりと根付いています。御代が池の畔(ほとり)には、日本一の大きさのツゲがあります。
 「ツゲのクシ」で有名なツゲの木。御蔵島の特産品で、かつて島の主産業でした。しかしかつて御蔵島が三宅島役人に搾取されていた時代に、島の下半分のツゲは全て切り出されてしまい無くなってしまったと言います。
イヌビワ
 小さな実がなっているのが分かるでしょうか。鳥たちがまだ実が青いうちからついばみに来ています。御蔵島ではカアグルマ(カワグルマ)と呼ばれています。秋に実がなると昔はこれを採って食べたものだとうことです。最近では御蔵島でも実を食べることはなくなったということです。タンテイロの森ではたくさんのカアグルマが見られ、多くの鳥たちも観察できます。
イヌマキ
 御蔵島ではアスナロと呼ばれています。秋になると赤と緑の実が二つくっついているように見える実がなります。赤い方の実が食べられ、島では今でもときよりアスナロの実を食べることができます。稲根神社拝殿には大きなイヌマキがあります。またタンテイロの森でもたくさんのイヌマキを見ることができます。
タブノキ
 スダジイなどと同じように、背の高い木になります。スダジイやタブノキが御蔵島の豊かな成熟した森を形作っています。御蔵島ではタミノキと呼ばれています。
 タブノキの芯はとても硬いため、老木になって枯れても芯の部分だけは残ります。芸術的な形をしたその芯はビランと呼ばれ、磨いてそのまま置物にしたり、パイプなどに加工されたりもしてきました。
スダジイ
 御蔵島ではシイノキとも呼ばれています。秋になるとドングリをたくさん降らせます。ドングリは現在でも生で食べたり、殻ごとフライパンで数秒暖めて食べたりします。春には房状の花を咲かせます。御蔵島ではタブノキとならんで、成熟した森(極相林)を構成する木となっています。里稲根神社巨樹の森でも見ることができます。
オオシマザクラ
 ヤマザクラが島の気候に合わせて変化したものだと考えられています。見上げるほどの高木になる伊豆諸島の固有の桜です。毎年4月には白い清楚な花を咲かせます。黒崎高尾の展望台では木の上のオオシマザクラの花を間近にみることができるでしょう。その他、えびね公園でも見ることができるでしょう。普通、学校などに植えられているソメイヨシノはオオシマザクラを交配親の一つとしているます。
 オオシマザクラの葉は大きく、塩漬けにすると良い香りがしてきて、桜餅を包むのにも用いられます。