浸蝕と火山

●浸蝕を続ける島
 お椀を伏せたような形状とも言われるが、実際には真直ぐに切り立った断崖に囲まれた形状をしている。この断崖は7000年にも渡る黒潮の浸蝕によるもので、群発する火山性の地震によって加速されできたものである。三宅島の場合は十数年周期で、他の島も数百年程の間隔で噴火が起こってきたが、御蔵島は噴火が7000年も無い(5000年前という説もある)ため、溶岩による新しい陸地が形成されることもなく、ひたすら黒潮と火山性地震の浸食にさらされ続けた結果、現在の島の形状となった。この島の形状形成の理由を空想家は「オオミズナギドリががんばって巣穴を作って、その為に崖がくずれ、オオミズナギドリが作ってくれた崖下の浅瀬にイルカちゃんが住んでいるのでオオミズナギドリありがとう」説を唱える銀座に営業所を持つ某自称非営利活動団体もあるが、今回の三宅島の噴火だけでも御蔵島の断崖の浸食は著しく、明らかに「浸蝕」が主な要因であると分かる。
●火山でできた島
 御蔵島自体の噴火は7000年も無い(ある資料では約5000年前が最後の噴火とも言われる)が、御蔵島付近を震源とした火山性の地震はときどき発生している。イルカとオオミズナギドリがいるから御蔵島が噴火せず浸食が進んだのではなく、噴火がなく、黒潮に削られるままになり、更に地震で海食が進んだ地形を選んでバンドウイルカの繁殖地とオオミズナギドリの営巣地があるということを理解しておきたい。伊豆諸島でオオミズナギドリの営巣地があり、バンドウイルカが根付いているのは御蔵島と利島であり、この2島だけが4000年以上噴火していない。(式根島も7000年噴火していないが、江戸時代1703(元禄16)年までは新島とつながった一つの島であり、新島の方は新島向山が886年に噴火している。
 一般的に御蔵島の形は、三宅島方向から見た島の景観がこんもりとしたすり鉢状の地形に見えるために「お椀のような形をした島」と言われることが多い。でも島をいろいろな角度から眺めてみよう。すると全く別の景観が現れる。島を西側や東側から見てみると、御山山頂から南東方向に4つのピークがあり、とても特徴的に見えることが分かるだろう。反対側の里がある北西方向はなだらかな地形になっている。

南東方向に4つのピークが見える。4つのピークの更に先には島のような元根がある。元根もかつては地中にあった溶岩の先端(火山岩頚)だったのかもしれない。それが黒潮の侵食によって取り残されたのだろう。おなじみの「お椀を伏せた形状」は島を写真右側から見た形状だ。

●御蔵島の山は生きている。
 2002年5月27日、地球惑星科学関連合同大会において、新しく22箇所の活火山候補が火山噴火予知連絡会によって発表されました。その中で御蔵島と利島も活火山候補リストに追加されました。従来までは最後の噴火が2000年以内のものを活火山候補としていましたが、最後の噴火から1万年以内のものをも活火山候補とすることに基準を見直したためです。その後、2003年1月21日の火山噴火予知連絡会では活火山のランクはA〜Cに三段階に分類されることになり、御蔵島は過去100年間噴火していない火山としてCランクとなりました。ちなみに最も活動度が高いAランクには三宅島etc.、次に活動度が高いBランクには富士山etc.があげられています。御蔵島は富士山よりも更に活動度が低いCランクに分類されました。また御蔵島火山は海上保安庁の海域火山データベースにも登録されています。

●カルデラを観察しよう
 カルデラとは噴火した跡が陥没してできる窪地のことです。御蔵島で最大のカルデラといえば川口の谷。乙女峠からはこのカルデラ全体を観察することができるでしょう。またカルデラの中腹には御代ヶ池などの小さなカルデラ湖もあり、湖の畔から眺める御代ヶ池の景色は新東京都百景にも選ばれています。

2004年09月29日更新