人と植物の共存
かつて御蔵島はニオイエビネランの咲き乱れる島でした。
ところが本土からの人々の乱獲、山採りにより、野生のものは絶滅してしまいました。
これらの野生の花を見ても採取したりしないでそのままにしようね。みんなで自然を守ろうね。

 ハチジョウススキは高さが2mにもなる大きなススキです。
 体は大きいけれども優しい草で、内地のススキと違い葉の縁は鋭くないので手を切ることもありません。島ではこのススキは防風垣として畑の周りや、海側に面している家の壁の前などに植えられ、人とハチジョウススキは助け合いながら島を守っています。
 

今でも見られるハチジョウススキのカザグネ(風除け)
畑からの土砂の流出も防ぐ昔からの知恵だ。
■ハチジョウススキは森のカサブタ
 ハチジョウススキがどんなところに生えているかをよく観察してみましょう。畑のカザグネとして生えているハチジョウススキは人が植えたものですが、人が植えなくても生えているところがあります。例えば毎年ハチジョウススキの草刈をするのは、そう、道路沿いですよね。一見、道路沿いにどこにもかしこにも生えて雑草のように見ててしまうハチジョウススキですが、実は道路沿いの裸の地面を見つけると、真っ先に生えて土砂が流れるのをとめてくれる役割もしてくれています。人の体で言うと、怪我をしたときにできるかさぶたの役割をしているのです。このような植物を先駆植物(せんくしょくぶつ)といいます。そうしてさらに何十年もそのまま放っておくと、ハチジョウススキは役目を終えてやがて森に居場所を譲ります。先駆植物は森の回復力の象徴と言ってもよいかもしれません。


 また逆の例もあります。2005年1月、御蔵島で絶滅危惧種のムカゴトンボの群生地が発見されました。森が台風の影響で崩れたところが開けて、そこが自然に絶滅危惧種の群生地になったのでした。森は年を取ると極相林といって植物の種類がどんどん少なくなっていきます。それを知ってか知らずか自然の営みの中で森が時には他の生命に逆に命を譲り、植物相を豊かにする、そんな譲り譲られの生命の不思議が見えてくるような気がします。