御蔵島のイルカ (イルカの赤ちゃん)

2018年8月18日更新
 御蔵島はミナミハンドウイルカの繁殖海域です。毎年、その年に生まれたイルカの赤ちゃんが観察されています。水族館でもなかなか観察できないイルカの赤ちゃんですが、御蔵島ではイルカの赤ちゃんを普通に見かけます。子供をつれたイルカは警戒心が強いですので、イルカの赤ちゃんをみつけたら急な動きはやめて、そっと観察するようにしてみましょう。こちらが危害を加えないことが分かれば、逃げずにイルカの方から近づいてくるかもしれませんよ。
 映像は生後間もないミナミハンドウイルカの授乳の様子。生後間もないイルカの母子はメスの群れの最後尾を構成する事が多いのですが、これは群れの先鋒が警戒をする役目も担っている為です。特に有効なアプローチをしてくるドルフィンスイマーに対しては先鋒のイルカが相手をし、スイマーを母子に近づけさせないのですが、静かに見ている観察者に対しては警戒を解く為、母子イルカを近くで観察できることになります。今回はその方法にて生後間もない胎児線が残るイルカの母子の授乳を撮影しました。

                                 2007年に撮影
今回観察した自然な状態での授乳は、母親のイルカが尾びれを上げた状態で固定し泳がず、子イルカが後ろから泳いで押すことで、子イルカは母イルカの乳頭に口を押し付けて授乳することが可能となっています。授乳の際には海流の流れに対して遡る方向だと、母イルカも尾びれを動かす必要があるため授乳がむずかしくなります。少なくとも流れが無い場所か、今回の映像のように海流の流れに沿った方向での授乳が必須となります。御蔵島の場合は海流の流れに沿って授乳した後、元の位置に戻るのに流れに逆らって泳ぐ必要はなく、外洋と違って流れのない島影を周って島を一周するか、または波が砕けて濁った岸に近いところは流れが少なく、外敵やオスの群からも身を隠しやすく、そこを移動すれば安全に繰り返し同じ場所での授乳も比較的体力を使わずに行うことができます。こうした授乳のしやすく子育てしやすいことも、御蔵島の周辺にイルカが生息する理由の一つなのかもしれません。というのが旅人の持論です。
生まれたばかりのイルカに見られる胎児線。イルカ・ウォッチングの際も、こうした赤ちゃんのイルカの特徴を観察できたらよいですね。 イルカは胎生ですので、生まれるまでは母親のお腹の中に居ます。お腹の中では背びれを折りたたんでいますので生まれたばかりのイルカはこのように背びれが曲がっているのです。
御蔵島のイルカの赤ちゃんに見られる胎児線  
 生まれて数週間のイルカの赤ちゃんの肌には、背中からおなかにかけて数本の白い線が薄く見られます。これは胎児線と言われるもので、イルカの赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいたときの名残です。赤ちゃんイルカが狭い母親のイルカのおなかにいるときに付いたシワの跡なのです。この胎児線は、日がたつとだんだん消えてしまいます。この胎児線があるということは、この個体が御蔵島の周辺で生まれたと考えてよいということになるでしょう。 また皮膚の色は、だんだんと白色から母親とおなじグレーに近づいてきます。静かに観察すれば授乳中のイルカの様子も観察できる場合もあります。  (2003年6月 御蔵島で観察)
まだ伸びていない背びれ
 こちらは前のページでも登場した、サンカクと名づけられたイルカと、その赤ちゃんの背びれ。狭いお母さんのおなかの中にいたので、生まれたばかりのときはまだ背びれは曲がったままです。数日後には、この背びれもまっすぐ伸びてきます。
 (2002年6月 御蔵島)

ワンポイント:
 御蔵島で赤ちゃんのイルカを見かけたら、肌の色や胎児線があるかなどを気をつけて見てみましょう