御蔵島は子供が生まれると、その子の将来の為に山に1000本のツゲを植える習慣があったといいます。江戸時代にツゲのクシが流行すると、御蔵島は本格的なツゲの生産を始めました。江戸時代当時はツゲの出荷を三宅島経由で江戸に出荷していましたが、便宜の為に三宅島の役人に御蔵の印鑑を渡した為に、長い間三宅島の役人の搾取にあいつづけたと言います。三宅島から独立したあとも江戸の商人の代金未払いなどで大変苦しい時代が続いたと言います。昔はクシの材料が木だった為、表面が良く滑るツゲのクシは無くてはならない材料でした。現在ではクシはプラスチック製品が主流となり、木のクシの需要が少ない為、現在ではツゲのクシは製造されていません。しかし将棋の駒や印鑑の材料などとして、いまでも日本の文化に深く浸透していることは言うまでもないでしょう。御蔵島のお土産として、「豊かな自然」と「人の技」とが見事に調和したツゲ細工はイチ押しです。


御蔵島郵便局のツゲ細工のイルカ
このツゲ細工のイルカは御蔵島郵便局で見ることができます。

しげを工房
 御蔵島のツゲ細工といえば「しげを工房」だった。以前はこの小屋の中でツゲ細工を自分で体験することができたが現在では実施していない。
 ツゲの木はとても重くて硬い。イルカを彫ろうと思ったら1日ではとうてい無理だ。二日かけてゆっくりと一生懸命やすりで削る作業。それだけに完成したと納得したときは喜びも大きい。ところでツゲは高級木材。10cm程度のイルカを彫ろうと思ったら材料費が¥7,000-程だった。予算がなければ「イルカの尾」のペンダントを彫ったりしたものだった。「イルカの尾」だけなら2000円くらいで、時間も一日あれば充分。御蔵島のリピータの中には、そんな伝統的な島の時間を過ごすことを楽しみにしていた人も多かった。海が荒れたら続々と様々な宿から旅人が「しげを工房」に集まってきて、ずっしりと重く超硬いツゲ材を削りながら海山の情報を交換したものだ。

将棋の駒
 御蔵島のツゲを用いて、ツゲ細工職人が丹念に仕上げた将棋の駒。本物のツゲでしか味わうことができない重厚感が伝わってくる。高級な将棋の駒も、御蔵島の豊かな自然と、伝統的な御蔵島のツゲ細工の技がみごとに融合して生み出された奇跡の一品だ。
ツゲの箸
 御蔵島で購入したつげの箸だ。竹芝桟橋で購入すると数千円するのだが、御蔵島の農協で購入するときっと安く手に入るはずだ。御蔵島の農協にはクワの箸も売っている。どちらかというと、箸として使うなら「クワ」の方がお勧めだ。ツゲは滑りやすく、使っているうちに黒ずみやすいのだ。また御蔵島とクワの関係は深い。御蔵島は養蚕が盛んだったころもあり、その為クワも大切にされてきたのだ。御蔵島のクワは「ハチジョウグワ」であり、伊豆諸島の固有種だ。ツゲもクワも農協で\900-くらいからで購入できるだろう。


かつてのしげを工房の作業場
作業場で木工ヤスリを用いて削る作業。根気のいる作業だ。
作業場を夜遅くまで開けてもらって、ウォッチング後に作業を続けたり、充実した島時間があった。


 
 2009年5月14日更新
御蔵島のツゲ細工