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<土浦君のホワイトデー>

3/14。

世間一般でいうところのホワイトデー。

そんな日の前日、土浦遼太郎は台所で頭を抱えていた。

目の前には明らかにお菓子作りようの計りやら計量カップやらボールやら泡立て器やらが鎮座している。

おまけに土浦本人はしっかりエプロンを着けているあたりまさに「今からお料理しますよ!」と言わんばかりである。

が、しかし。

「・・・何を作れってんだよ・・・」

深々とため息をついて土浦は呻いた。





というのも、先月の2/14の事。

その日つきあい始めてもう1年ちょっとになる恋人である香穂子から土浦は手作りチョコレートケーキをもらった。

ここまではいい。

ごく普通のカップルとして正しい姿に違いない。

しかし綺麗にラッピングされたチョコレートケーキを渡した香穂子はキラキラと輝く目で土浦を見て言ったのだ。

『ホワイトデーは期待してるから!』

・・・通常この言葉を他のカップルが使ったのであれば期待=心のこもったプレゼントであろうが、土浦・日野カップルに関しては特殊仕様が成り立つ。

すなわち期待=手の込んだ料理、である。

しかし土浦遼太郎19歳。

ここまで男性にしては料理をよく作ると言われてきたが、お菓子作りは完全に範疇外だった。

(だいたい男が粉振るったりバター溶かしたりしないだろ!?)

・・・別にしても構わないと思うが、そのあたり微妙な土浦のボーダーラインのようだ。

けれど、頼んできたのは他ならぬ香穂子である。

出来るなら期待に応えてやりたいし、作っていけばそれは喜んでくれるだろう。

「・・・はあ。」

とりあえず何か作ろうと思う物の料理とお菓子では勝手が違う。

「しょうがないよな。やるか。」

そう呟いて、とりあえず土浦は小麦粉とふるいを手に取った。

こんな事なら香穂子の作ったきんぴらにアドバイスなんかするんじゃなかった、と後悔しても後の祭り。

いっその事、フランス料理のフルコースを作れと言われる方がましだったかもしれない、などと思いつつ悪戦苦闘の土浦のお菓子作りが始まり・・・。





翌日。

「これが限界だった。」

と土浦が渡したホワイトデーのプレゼントは見事なシュークリームで、土浦料理人伝説に拍車をかけたらしい。






                                            〜 Fin 〜










<ホワイトデー土浦編。土浦くんはやっぱり手作りでお返しでしょう。>














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