「その3、私の一言には
          3つの言葉で返事すること」






「ユリウス、ちゃんとご飯食べた?」

私の問いかけに戻ってくるのは。

「・・・・・・・」

沈黙と工具の音だけ。

わかってるけど!っていうよりも予想の範囲内すぎて最早笑ってしまう。

いつも仕事をしてる時のユリウスって聞いていないわけじゃないんだけど、反応は期待できないのよね。

とはいえ、あんまり夢中にさせておくとひたすら仕事ばかりしてしまうワーカーホリックなのも分かってるから、時々ムリヤリ意識を引きはがす。

「ユリウス、ユリウスってば!」

「・・・・ああ」

一応返事は返ってきたけど、聞いてるのかしら?

今日はそれがちょっと不安になるぐらい上の空だわ。

「ならいいんだけど。あ、もうそろそろ3時間帯は続けて仕事してるんだから寝なくちゃダメよ?」

「・・・・・・・・」

そしてまた無言。

わかってるけど!

ユリウスにおしゃべりなんて求めてないけど、ここまで無反応だとなんだかちょっと悔しくて。

「寝られないなら一緒に寝てあげましょうか?」

「・・・!ばっ!何を!?」

あ、反応した。

見事な動揺っぷりと、カチャンッと音を立てた工具に私は勝ち誇ったように笑ってしまった。

「冗談よ。それにちゃんと寝て欲しいのは本当だからね?」

「・・・・わかった。」

ちょっと引きつった顔で頷いて、次の瞬間にはもうユリウスの視線は手元の時計に落ちていた。

その素早さに思わずため息を一つ。

まあ、いつもこの静けさを楽しんでいるのは私だし、こうやって仕事しているユリウスを見るのも好きだからしかたない。

「さてと、」

さすがに言わなくてはならない事も全部言ったので、私は今まで座っていたソファーから立ち上がった。

ユリウスの所は居心地が良すぎてつい長居してしまうけれど、そろそろ塔の仕事を手伝わなくては行けない時間だし。

「あ、そうだ。本も返しにいかなくちゃ。」

ふっとブラッドに借りていた本があったことを思いだしてそう呟いた。

・・・・念のため言っておくけど、わざとじゃなかったわよ?

だってまさかそう言った途端。

カチャ。

「どこへ行くんだ?」

「え?」

「本を返しに行く、と言っただろう?誰の所へ行く?遊園地か?まさか時計屋の所か?」

「え?ブラッドのとこだけど?」

「!」

ガタンッ

今までの反応の薄さが嘘のように食い付いてくるユリウスに押されぎみになりながら頷いたら、いきなりう席を立ったユリウスに手を捕まれた。

「えーっと・・・・」

これはどういう風に解釈すれば・・・・。

ちょっ、なんでそんな恨みがましい目で見られなくちゃいけないの!?

「外は寒いぞ。」

「え?」

「雪が降っている。」

「ああ、そう言えば降ってたわね。」

「風邪を引くかも知れない。それにお前が行っても今は昼だ。あの怠惰な帽子屋が活動しているとも思えん。それに・・・・」

「ユリウス。」

ああ、もう。

なんでこの人ってこうなのかしら。

私は零れ落ちそうになる笑いをなんとか堪えながら、私の手を捕まえたままの普段は無愛想の代名詞みたいな恋人を覗き込んで言ってやったのだ。





「貴方ってヤキモチ妬くときだけは言葉数が多いわよね。」

「うるさいっっ!!(///)」





                                           〜 END 〜










(ユリウスは絶対ヤキモチやきで、アリスを引き留めるためな口達者になると思う)