君が僕を見る時、誰を見てるのか知っていたよ。 同じ顔をした双子の兄弟。 いつも無愛想な顔ばっかりだから、君が戸惑ったのも無理はないね。 『いつもそんな風に笑ってればいいのに』 うん、僕もそう思った。 ナルは大事な弟で、僕の対で、誤解を受けやすい性格だけど本当は優しい奴だって僕は知っているから。 もしかしたら、最初に君がそう言ったからなんだか僕は嬉しくなって君に憑いたのかもしれないね。 ナルの事をわかってくれるかもしれない人。 ナルの側にいてくれる子。 そんな風に思いながら、僕は君の夢に現れ続けた。 君が僕を「ナル」と呼ぶ事を否定もしないままで。 君にとって僕はナルの一面で、それでいいとずっとずっと思ってた。 不確定な君の能力が場所や状況によって引き出されるたび、道に迷ったような顔をする君を導いていくのが僕の役目。 僕になかなか気が付いてくれないナルの役を君の夢の中で僕がする、なんてなんだか不思議な関係だなって思ったりしたよ。 生を失ってから出会った女の子。 ―― だから、油断していたのかもしれない。 ・・・・ああ、体が、僕の体が見つかったんだと知った時 会いたいと思ったのは・・・・ 「どうしたの、こんなところで。」 浮かない顔をした麻衣がこちらを見ている。 本当に君は表情が顔に出やすいね。 寂しいって誰が見てもわかってしまうような顔は、きっとナルの正体を知ったからなんだろう。 ナルに会えなくなると思っているから、そんな顔をしているんだろうか。 愚問だ。麻衣にとって「僕」はナルだ。 木をはさんで背中側に麻衣が回るのを感じながら、麻衣の声を聞きながら僕は目を閉じる。 「ナル」に話しかける麻衣の声は少し沈んでいて切ない彼女の気持ちを代弁しているかのようだ。 ―― ふいに、これでいいんだ、と思った。 体を見つけてもらって、僕にとっての心残りがなくなった時、僕は最後に麻衣に会いたいと思った。 たった一つ、伝えたかったから。 ずっと君に微笑みかけていたのは、僕なんだ、と。 「ナル」 じゃなくて「ジーン」と呼んで欲しかった。 ・・・・ああ、本当に人って不可思議だ。 どうしてもう終わりだとわかっているのに ―― 恋などするのだろう。 「たんなる学者バカだから。」 口から滑り出た言葉はやきもちというより羨望。 いつか君はナルと恋に落ちるだろう。 そして初めて、ナルが微笑む顔を見た時、君は気が付いてくれるだろうか。 「・・・・捜してた」 捜してた。 最期に残された僅かな時で、君に伝えたかった。 「麻衣にすこし言いたい事があって、会えるといいなと思ってた。」 背中を向けた麻衣に、僕の顔は見えない。 見えないから、だから。 「やっぱりやめておく・・・・」 そう言って僕が笑った事は君は知らない。 無言の告白 ―― 僕が残した微笑みの全てが、君への想いの欠片だと、いつか気が付いてくれるだろうか・・・・ 〜 終 〜 (これだけは趣味丸出しで書きました。今、マイブーム過ぎて(><)) |