Freundschaft auf die offne Stirn,

                                   〜 火積×かなで 〜











そんな話になったのはほんの偶然だったと思う。

久しぶりに火積に逢えてかなではそれはそれははしゃいでいた。

何せ夏休みに恋人同士になれたと思ったらすぐに仙台・横浜間の遠距離恋愛になってしまったのだから、やっと休日を利用して火積が会いに来てくれると言われた時には躍り上がって喜んだぐらいだ。

実際会ってからもいつもメールや電話をしているくせに、話す事が山積みのような気がしてかなではよくしゃべった。

まあ、火積が基本的に無口なのでそれでちょうどバランスが取れているぐらいだったかもしれないが。

話を戻そう。

そんなわけであれやこれやと話している中で、かなでが至誠館のメンバーの話をし出したのは別におかしな事ではなかった。

最近の様子を火積に聞いていくうちに、なんとなく新の話になったのも。

相変わらず誰とでもすぐ仲良くなってしまって困るという火積のぼやきに、声をたてて笑ったかなでは頷いて何気なく言ったのだ。

「新くんって時々ビックリさせられるよね。おでこにキスされた時はさすがに驚いたかな。」

―― その瞬間、空気が凍った。

「・・・・今、何つった?」

「え?え?え?」

ついさっきまで初秋の日差し燦々の公園だったはずなのに、うすら寒く感じる程の迫力にさすがのかなでもちょっと慌てた。

「お、怒ってる?」

「別に怒って・・・・・・・・・ねえ。」

「嘘!今、間が空いたよね!?」

何分、見た目に反してとても素直な所のある火積だ。

微妙な間で真意を捉えてしまってかなでにずばっと否定されて、火積は小さく舌打ちをする。

火積にしてみれば嘘をつききれなかった自分への苛立ちから出た舌打ちだったが、当然今この場面では逆効果もいいところで。

「ごめん・・・・」

しゅん、と耳が垂れたウサギのようにしょんぼりとしてしまったかなでに、火積は大いに慌てた。

「違う!別にあんたに怒ったわけじゃねえんだ。ただ・・・・その・・・・」

「え?私に怒ったんじゃないの?」

「そう・・・・いや、そうでもねえ・・・・いや・・・・」

ぱっと顔を上げてじっと火積の顔を見上げれば、火積は困ったように目をあっちこっちに走らせていて。

どういう意味なんだろうと不安げにかなでが見守る中、とうとう諦めたように火積が一つため息をついて口を開いた。

「・・・・あんたが水嶋にキスされたなんていうから、だ。」

「ふえ?」

くりっと若草色の目を見開いたかなではたっぷり、アダージョで5小節分は考え込んで・・・・・。

「あの、それって・・・・」

おずおずと見上げた先には、うっすらと赤く染まった火積の強面がそれ以上言うなと言わんばかりにそっぽを向いていた。

でももちろん、そんな空気は恋する乙女は読んではくれない。

「もしかして、やきもち妬いた?」

核心をついた言葉にパンチでもくらったように顔をゆがめて、火積は片手で顔を覆った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・悪いか。」

ぼそっと呟いた言葉は肯定を意味するもので。

―― いたたまれなさにかなでから目を逸らしていた火積は知らない。

その瞬間、かなでがどれほど嬉しそうに笑ったかを。

「火積くん、火積くん。」

完全に顔を逸らしてしまった火積の袖をかなではちょいちょいっと引っ張った。

「?」

その仕草に釣られるように振り返った火積にかなでは手招きをしながら言った。

「かがんで。」

「あ?」

「いいから、かがんで?」

「?」

かなでの意図が読めぬまま、とにかく指示された通り腰を落とせばかなでの目線が近くなる。

ことんっと、火積の心臓が音を立てた、その時。

かなでの手がすいっと火積の緋色の髪に伸びて。

―――――――― ちゅっ

「っっっっっっ!?」

「ふふ、今は「友情」のキスで勘弁してあげる!」

いつかの新のセリフをなぞって悪戯っぽく笑ってさすがに恥ずかしくなったのかくるっと踵を返して歩き出してしまうかなでを、火積は呆然としばし見つめて。

「〜〜〜〜〜〜〜っ」

たった今、かなでの唇が触れていった異常に熱い額を抑えて、深く深くため息をついたのだった。










額なら友情。

(こんなに心臓に悪い「友情」があるわけねえだろ!)










(額にキスって新のイベントですよね(^^;)ムリヤリ火積に変換しました。)

















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