Sel'ge Liebe auf den Mund,

                                 〜 火原×香穂子 〜










キスをする時は目を閉じる、なんていつ誰が始めたんだろう、と頭の片隅で香穂子は思った。

目を閉じてしまうと他の感覚に意識がいく。

だから。

「・・ん・・・・」

触れ合った唇の熱がこんなにも熱く感じる。

柔らかく触れてすぐに離れてしまうのが寂しくて、思わず手を伸ばせば逆にぎゅっと抱きしめられた。

「かず・・・・」

「香穂ちゃん。」

耳元で聞こえた声が、いつも知っている元気の良い彼の声と同じとは思えない程、甘くて。

大きく跳ね上がった鼓動を納めるように小さな深呼吸を一つ。

そしてキスの後の気恥ずかしさを誤魔化すように顔を見ないまま言った。

「和樹先輩はキスが好きですね。」

「え?そう?」

「うん。」

驚いたようにぱっと離れて顔を覗き込んでくる火原に、香穂子は少しだけ悪戯っぽく頷いた。

「そっかな?・・・・うん、でもそうかも。」

冗談なのだから流してしまってもかまわないのに、火原は一瞬考えてから大まじめに頷くから、かえって香穂子の方が驚いてしまった。

「え?好きなんですか?」

「うん、好きだよ。あ!もちろん、香穂ちゃんとするキスが、だけどね。」

にっこり笑って照れもせずそう言うから、せっかくひいたはずの頬の熱が戻ってきてしまう。

けれど、そんな香穂子の様子さえも愛おしそうに目を細めて、火原は笑った。

「だって俺だけの特権じゃない?」

「え?」

「香穂ちゃんの唇に触れて良いの。」

そう言って今度は目を閉じる暇もなく唇が重なった。

「んっ・・・・」

けれど、今度はすぐに唇が離れる事はなくて、少しだけ角度を持って重ねられた唇を開けて、と強請るようになぞられて。

「・・・・ぅ・・」

ゆるゆると溶かされていく思考と同じ速度で瞼を落としながら、なんとはなしに思った。

キスの時、目を閉じるのは、他に余分なものなんてない状態で相手を感じたいからなのかもしれない、と。

こうしていると愛しいという気持ちにおぼれていきそうになるから。

「・・・はっ」

少しの息苦しささえ煩わしいように継いだ息が甘い。

そして。

「香穂ちゃん・・・・大好き。」

甘くて熱い瞼の裏の闇にキスの合間の囁きが溶けた。










唇なら愛情。










(あ・・・っまっっ(><)短いけど、これが最後のと張るぐらいぐだ甘です。)











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