Death
ブリュートの街でその娘を見た時、一目でこの子なんだとわかった。 なんでだったのか、わからないんだけど。 その日、アタシはいつものようにブリュートの街に買い物に出かけてた。 いつのもように、人間達の世界はキラキラしてて。 いつものように、その溢れんばかりの色や光の中でアタシだけ異質で。 ブリュートの街はいつ来ても活気があって、綺麗な物も美味しい物も溢れているからとってもお気に入りなんだけど、来るたびに自分がどれほど異質で醜いモノなのか思い知らされる。 だって、アタシはロッド城に続く街道沿いに出ているこぢんまりして、でもいつも綺麗な花を売っている花屋の看板娘のおばあちゃんが看板娘をしていた頃から知ってるし。 もう初老の風格のある喫茶店の主人が生まれた時、喜んでいるその親達も知ってる。 あっと言う間に流れていく人の世界の時間の中で、人間達がどれほど輝いているか知っているから。 だから、そんな人間達の何人分も生きてるアタシが何も変わらずいる事の醜さにゾッとするの。 アタシの何より嫌いなモノは醜いモノ。 でも、アタシの知っている中で一番醜いのは、きっと・・・・アタシ。 ブリュートの街の変わらない活気の中を歩きながら、そんな事を考えていた時、あの子が目に飛び込んできたのよ。 金色のお日様みたいな髪をして、マリンブルーの大きな目の女の子。 沢山の行き交う人の中に、くっきりと切り取ったみたいにその子ははっきりアタシの目に飛び込んできて。 その瞬間、 ああ、この子だわ・・・・と。 ―― アタシに終わりをもたらしてくれる人魚姫が そう思った途端、どくんっと心臓が鳴った。 それはずっと求めていた死神に出会えた喜びだったのか・・・・そうでなかったのか、今ではわからないけれど。 気が付いたら、アタシはその子を追って歩き出してた。 きっといつもならバラ色なんじゃないかと思わせるあの子の頬が青白いのが少し気になって。 そうしてあんたとアタシは出会う。 「ちょぉっと、だいじょーぶ?」 ―― 終わりの人魚姫・・・・愛しい死神 ―― 死にたいと思って求めた存在のせいで、死にたくないと思うなんて ・・・・とんだ皮肉な、運命ね 〜 Fin 〜 |