最強の弱点
ねえ、熊野の別当さん。 貴方の弱点を知ってるよって言ったらどんな顔をする? いつだって余裕たっぷりで、先を見据えた視線で人を、物事を計っている貴方。 冷静で、動揺することなく判断を下せる統べる者の器をもった貴方。 ・・・・でもね。 本当はきっと、貴方は弱点だらけ。 大切なものを抱えきれないほど手の中に持っているんだから当たり前だよね。 熊野も、大切な人たちも、貴方にとってはきっと弱点。 でも、それを悟らせないように、貴方は笑う。 出来て当然のことのように「護る」と口に出すことで、周りに貴方なら護れないものなんてないんじゃないかと思わせる。 強くなければいけない。 不可能なんてないように振る舞わなくてはいけない。 それが若くして熊野別当という地位についた貴方の背負ったもの。 辛いことも嫌になることも人には見せずに、いつだって大人の顔で振る舞う貴方。 ・・・・・でも、でもね 最近、違う顔をしてるの、気がついてる? 困ったように笑う顔。 目を細めて、泣き出しそうに見える顔。 本当に嬉しそうに笑う顔。 照れた顔。 それからとびっきり優しい顔。 私の見間違いか、自惚れでないならみんな・・・・私といる時だけ見せてくれる顔。 ね?ほらこんなに簡単にばれちゃってる、貴方の弱点。 そんな優しい目で嬉しそうに私を見てたら、あっという間にみんなにばれちゃう。 ・・・・でも、でも、でもね すごく嬉しいから、まあ、いっか。 貴方の弱点になんかならないぐらい、強くなるから。 だから、いいよね? ヒノエくん。 〜 終 〜 |