Meaning
―― 真夜中が好ましいと思っていた 九十の月日の半分は眠らずに過ごしていた私には夜はとても近いもので、真夜中は特にそうだった。 深淵の闇の縁で、一人天に輝く星を見上げる。 本家や周りの人間のように美しいと思ったことはなかったが、見ているだけの価値があるものに思えた。 その闇の中で考える。 私は一体何のために此処に存在して、一体いつまで存在し続けるのか、と・・・・ 天の星々は答えを出すことはなく、私の中でも答えは出ない。 目覚めている間は習慣のように考え続けた答え。 それは九十の半分の月日をかけても出ることが無く、どんな書物をめくろうとも得られなかった。 唯一百年前の龍神の神子に仕えたという先代の書き付けだけが、手がかりになりそうなものだった。 しかし、それをいくら読み返してみても答えは得られない。 人になれば、存在に意味がつくのだろうか? それとも八葉になればなのか? わからない・・・・・ 繰り返せば繰り返すほど、答えは遠ざかる気がして、気がつけば空が白み始めている。 そんな夜を何度も過ごした。 そうして、いつの間にか堂々巡りの考えが諦めと共に享受されるようになった頃・・・・ 唐突に、お前が現れた。 龍神の神子と呼ばれるお前が。 北山に呆然とたたずんでいる少女を見付けた時、尋常ではない神気に我が目を疑った。 後に随分と深苑に力がないと言われていたが、それは間違いだ。 お前は常人とは相容れない神気を纏って私の前に現れたのだ。 だから戸惑うお前を龍神の神子と呼ぶ星の一族の子ども達の言うことを無視することはできなかった。 否、そうであってほしいと私自身が願っていたのだと思う。 そうしてお前と行動を共にするようになって、ただそれだけの変化しかないはずなのに、私のすべては一変した。 『泰継さん!あれはなんですか?』 何にでもそやって尋ねてくるるお前に、1つずつ答えてやりながら少し呆れたものだ。 『泰継さん!女郎花って綺麗ですね!』 お前がそう言うから、他の草花より少し目をとめていただけの花が美しく見えるようになった。 『泰継さ〜ん、おいていかないでください〜』 お前がそう言うから、後ろから歩いてくる者を気遣うことを覚えた。 『泰継さん!』 お前が笑ってそう呼ぶから・・・・私は自分の名が好きになった。 そうやって1つ、1つお前と共にいることで変わっていく自分を知った頃から、私は真夜中に考えることが変わりはじめた。 他の八葉の事。 鬼の事。 院の元にいるもう一人の神子の事。 ・・・・そして、お前の事。 真夜中の闇は音がなく、澄んだ空気に時折お前の声の幻を聞く。 そのたび、あたりを見回してしまって苦笑う。 いるはずがない、いては困るとわかっているのに、なぜその姿を求めてしまうのか。 そのたびに訪れるこの、押し寄せる感情(もの)はなんなのだろうか。 深淵の闇よりも私を暖かく包み、同時にひどく落ち着かなくさせるものは。 たまらなくお前の顔を見たくなって、こんな真夜中に出向きたくなる気持ちをもてあまし、私は夜空を仰ぐ。 途端に目に飛び込んでくる星達を、お前に見せたらなんと言うだろうか? そんな事を考えて、自分で自分を笑う。 ・・・・やはり真夜中は堂々めぐりの時間らしい。 「・・・・花梨・・・・」 神子と認めて以来、紡いでいないお前の名を呟くと私は気づく。 いつの間にか真夜中より、夜明けを待ち望んでいる事に。 白んだ空はお前に会いに行ける先触れ。 そして私は立ち上がる。 ・・・・お前に会うために。 私はきっとお前を護るために・・・・否、お前に出会うために。 ―― それが真夜中より、明け方を好むようになった私が得た、ここに在る意味・・・・ 〜 終 〜 |
― いいわけ(?) ―
やっちまいました、モノローグ(^^;)
再度、「遙か2」をプレイしたら急に書きたくなっちゃいまして。
でもこれって一体いつのモノローグなんだろう・・・・。
思いついたのは通常恋愛イベント第二段階を終えた時だったんで、そのへんかなあ。
しかしホントに泰継さんって「存在意義」を連発しますよね。
私的にはこんな感じで変わっていったのかな、と思います。
やっぱり地の玄武は深い(笑)
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