瞳が合う時
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『主と臣下が並んで歩くわけにはまいりません』 そう言っていつも一歩後ろを歩く貴方。 いくら、やめてと頼んでも絶対譲らない。 隣を歩きたいのに。 ・・・後ろにいる貴方がこんなに気になってるのに。 (もう、頑固者!) ちょっと毒づいて、私は一歩前を歩く。
『主と臣下が並んで歩くわけにはまいりません』 それは私にとって自然なこと。 なのに貴女はいつも渋い顔をなさる。 しかしこれは譲れない。 一歩の距離―それが私の心の奥にある疼きを止める唯一の手段。 隣を歩いてしまったら、臣下のふりはもう出来ない。 だから私は一歩前を行く貴女を見つめている。
均衡が崩れたのは昨日。 いつも通り怨霊退治に出かけた時、ふっとあかねが振り返った。
そして目が合う。
そこまではいつものこと。 あかねは少し笑って再び前を向く。 頼久は心に宿った暖かさをそっと噛みしめる。 それがいつもの事だった。
でも昨日目が合った時
気付いてしまった、お互いの気持ちに
知らなかった。 貴方が後ろを歩きながら、あんな瞳で私を見ていたこと。 優しい包み込むような眼差しの奥に、強い想いを滲ませた瞳・・・ いつからそんな瞳で見ていたの? 私、期待しちゃうよ?
知らなかった。 貴女があんな瞳で私を振り返っていてくれたとは。 微笑みの奥に微かに切ない光を宿した視線・・・ いつからそんな瞳で振り返っていらしたのです? 私は自惚れてもいいのでしょうか?
だから今日はあなたを誘いに行こう。 瞳の奥にある想いを確かめるために・・・伝えるために。 瞳が合った時から、時間は動き出した。
並んで歩く二人の姿が見られるようになるのは、もうすぐ・・・
〜 終 〜
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― あとがき ―
すっごい短い上に突発的に書いたものなので、なんか不発ですね〜(^^;)
作中の『瞳』という字は『め』と読んでいただくといいかな。
振り向いて目が合った時、何か感じるというシーンが書きたくてやったんで、前後がさっぱりわかんないですね(汗)