DESTINY
上も下もわからない空間であかねは目を開けた。 しかし真実、目を開けたのか、それすら彼女にはわからない。 薄紫の闇がすべてをを包んでいて、上も下もわからない空間にあかねはいるのだから。 自分の体すら、あるのか定かでない薄紫の闇。 でも、なぜかあかねはその闇が恐いとは思わなかった。 薄紫の闇はまるで優しくくるむように包んでくれているような気がするから。 ・・・ここはどこなんだろう・・・ あかねはぼんやりとそんな風に思う。 ふと、目の前の闇が揺らいだ。 そして緩く影を作る。 ・・・・だれ?・・・・ 「・・・・・・・・・・・・・・・」 影が何かを紡ぐ。 ・・・なに?なにか言ってるの?・・・ あかねはなぜか聞き取らなくてはいけない気がして必死で耳を澄ます。 「・・・・・・・・・・・・・どの・・・」 ・・・え?・・・ あかねが聞き取ろうとした瞬間、ふわっと再び薄紫の闇が揺らぐ。 ・・・まって!あなたはいったい誰なの?・・・ 薄れていく姿に差し出したあかねの手は役割を果たすことのないまま、薄紫の闇に溶けた・・・ |
「ふう・・・」 「あかねちゃん?どうかしたの?」 放課後、屋上の手すりに寄りかかってぼんやりしていたあかねは後ろからかけられた声にびっくりして振り返った。 「あ、詩文くん。」 名前を呼ばれてにっこり笑ったのは後輩であり、あかねの仲のいい友達の1人である、流山詩文だった。 「どうかしたの?こんな所で溜め息なんかついちゃって。」 「うん・・・別に何かあるってわけじゃないんだけどね・・・」 歯切れの悪いあかねの言葉に勘のいい詩文は何かを感じ取って、そのくりっとした目であかねを覗きこむと言った。 「何かあったんでしょ?話してみてよ。」 「うん・・・実はね、夢をみるの・・・」 「夢?」 「うん、夢・・・」 首を傾げた詩文から、照れたようにあかねは目をそらすと話し始めた。 「いつから見始めたのかわかんないんだけどね、いつも何処か分からない場所に私はいるの。 で、いつもここはどこだろう?って思うんだけど、わからなくて・・・そのうちに影ができるの。 人・・だと思うんだけど、それもよくわかんなくて・・。 その影の人がね、いつも何か言ってるんだけど、いつも聞き取れなくて・・耳をすませているのに聞こえなくて・・・そこでいつも目が覚めるの。 そんな夢。」 詩文はなぜかその話をするあかねを見てどきっとした。 あかねが今までに見たことがないような遠い目をして、まるで本当に夢を見ているような・・そんな風に見えたのだ。 「あかねちゃん!」 「えっ?ど、どうしたの?」 詩文が思わず出した大きな声にびっくりしたあかねを見て詩文はほっと息をついた。 あかねのさっきまでの雰囲気は消えていた。 「ごめん、大きな声出して。・・・あのさ、もし眠れないようなら、ハーブティーとかあげようか?」 「ううん、大丈夫。別に嫌な夢なわけじゃないの。 ・・・ただ、なんていうのかな?・・・少し切ない気がして・・・」 あかねはそう言って、その後ふと詩文に聞いた。 「ねえ詩文くん、薄紫みたいな色の別の言い方って何かあったよね?」 「うん。えっと確か・・・紫苑色だったと思うよ。」 「紫苑色・・・か」 ・・・なぜかあかねの心をその色が掠めていった・・・ ―― それから暫く後、あかねは突然数奇な運命の見舞われることとなった。 高校の入学式の日に魔界へ通じているという噂の井戸を見に行ったあかねは京という世界へ召還されてしまったのだ。 「俺はどうしても帰んなくちゃならないんだ。詩文、こいつを護ってやれ。」 「ちょ、ちょっと天真くん?!・・・・・・・・あ〜、行っちゃった。」 飛び出していく天真を呆然と見送ったあかねと詩文は途方に暮れた表情で顔を見合わせた。 「これからどうしようか?」 「誰かいるかもしれないし、ちょっと呼んでみよう。」 あかねは息を吸い込むと大きな声で叫んだ。 「誰かいませんかあー?」 「そ、そんなに大きな声じゃなくても・・・」 びっくりした詩文にあかねがへへっと照れ笑いをした時だった。 「お呼びですか、神子殿」 ・・・えっ・・・?! あかねは弾かれたように振り返った。 そしてぶつかったのは、自分を映した紫苑の瞳 「うわっほんとに来た。」 驚いている自分の声が嘘のように遠い。 「呼んだんだから当たり前だよ。」 呆れたような詩文の声も耳を掠めていくだけ。 ただ魅入られたようにあかねは目の前にたつ青年を見つめていた。 紫苑の瞳・・・紫苑の夢 ・・・この人なの・・・? ・・・この人があの影の・・・ 「どうかされましたか?」 いつの間にか怪訝そうに変わった青年の声にはっとあかねは我に返った。 そしてあわてて軽く頭を振る。 ・・・なに混乱してるんだろ・・あれは夢の事なんだから。 自分を戒めて、あかねは今度は真っ直ぐに青年を見て言った。 「あの一緒に来た友達が出て行っちゃったんです。探しに行きたいんですけどいいですか?」 その強い眼差しを受け止めた青年は一瞬表情を揺らがせる。 しかしすぐに片膝つくと言った。 「承知いたしました。お供いたします。」 そして青年は少し目線をあげる。 「神子殿」 ・・・トクッ・・・ 鼓動が跳ねる。 まるで何かを教えようとしているみたいに。 あかねはあわてて言った。 「じゃあ、行きましょう。」 そして青年に背を向ける。 ――でも心臓が煩いくらい鳴っていることは気がついていた・・・ ―― 夢は予兆 そのことを彼女が確信するのは、この出会いから3ヶ月後。 天の青龍、源頼久の妻となった後の事だった・・・ 〜 終 〜 |
― あとがき ―
あ〜〜〜ごめんなさい〜〜
なんか一杯一杯な創作書いてしまいました(汗)
夢、と言われて『夢=予兆』という構図が浮かんだ結果、こうなったんです。
でもどうもまとまってないですね(T T)
無理はしちゃあいけませんね。
スイマセン・・・これは逃げるしかないですね。では!(ダッシュ)
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