恋愛遊戯

 

      欲しいのは一人だけ

      他の者などいらない

      だから

      手に入れるために一世一代の賭をする

 

「友雅さん!」

「なんだい?神子殿?」

100話の内容が予想できるあかねの呼び声に友雅はとくっと跳ね上がった鼓動をまったく表に出さない余裕の笑みで振り返った。

そこには思った通り怒った顔のあかねがいる。

本人は精一杯恐い顔をしているつもりなのだろうが、友雅にはひどく可愛らしくしか映らない。

「おや、恐い顔をしてどうしたのだね?」

「友雅さん、また女房さんを口説いてたでしょ!」

友雅はそらっとぼけた顔をしてあかねから視線を逸らす。

「見ていたのかい?盗み聞きとはお行儀が悪いね。」

 

        本当は聞こえるように、なるべく神子殿の部屋に近いところで女房に甘い言葉をかけてみたのだけど。

 

「ぬ、盗み聞きじゃありません!あんな人通りの多い所であんな事言ってれば聞こえちゃいます!

そんな事より、本気じゃないんだったら口説くのなんて失礼です!」

 

        私にかけてくれる言葉も本気じゃないんでしょう?

 

「そんな事はないよ。皆、私が戯れでしていることはわかってるのだから。

もっとも神子殿にはそんな恋は理解できないかな?」

 

         私が本気になっているのは唯一人。君以外は皆、気付いているのだから

 

         わかんない。そんなこと貴方は誰に本気になるの?

 

「わかりません!本気じゃない恋なんて私は嫌です。」

「じゃあ、神子殿は本気の恋をしているのかい?」

「えっ・・・」

意外な切り返しに不意をつかれて少し赤くなるあかね。

 

          胸が痛い。そんな顔で一体誰を想うんだい?

          今すぐ抱きしめてその心を占める者を追いだして、私で一杯にしたい。

          でも私は本気を知って臆病になった。

          もし、拒まれたら?

          この想いが君に届かなかったら?

          この狂おしい想いを抱いて君の幸せを願うなど・・出来ない。

          君の愛しく想う者を殺めてしまうかもしれない。

          だから・・・

 

「神子殿が本気の恋ができるぐらい大人になったら、私を虜にしてくれればいい。遊びの恋などけしてできないほどにね。」

「なっ!また子供扱いして〜〜〜〜〜!!」

いつもの軽い友雅の言葉にあかねはさっと赤くなって思わず怒鳴る。

そんなあかねに余裕たっぷりの笑い声を残して友雅は背を向けた。

 

          本当は狂おしいほどに焦がれているけれど。

          すぐにでもその身を抱きしめて、愛してくれと懇願したいほど。

          でもその心を手に入れたいから。

          自分以外の誰もみえないほどにからめ取りたいから・・・

          だからわざと怒らせる。

          だからわざと困らせる。

          君の心が一時でも私で一杯になるように・・・

          だから

 

心を隠すように背を向けてしまった友雅は知らない。

その背中にあかねが指で作ったピストルを向けていることに。

 

          貴方はいつも子供扱い。

          だから今は子供っぽく怒ったりするしかないんだけど・・・

          でも必ず貴方の認める大人の女の人になってやるんだから!

          そして振り向かせたい。

          移り気な貴方を・・・

          だから

 

 

手に入れるために一世一代の賭をする

      

                悪戯をしかけて

      やきもちやいて

                わざと怒らせて

      いちいち怒って

      

      そしていつかあなたの心を手に入れたい

      他のものなどいらないから

      欲しいのはただ一人だから

 

互いの瞳の先にいるのが誰なのかに気付くまで続く恋愛遊戯・・・・

 

 

                                                        〜 終 〜

 

 あとがき 
うわっなんか激しく失敗した気がする(泣)

まとめ方がうまくないですね。

でもお互いの心を知る前ってこんな感じじゃないかなと思って。

本当はお互いの心を虜にしてるのに気付かずに相手の心を手に入れようと必死になってる・・・そんな感じを一欠片でも感じていただければ本望です(^^;)