夢の続き
―― チュンッ・・チュンッ・・・ かすかな小鳥の声にシルフィスは薄く目を開けた。 「う・・・ん・・・」 頬をなでる朝の光に呻いた次の瞬間、シルフィスは急に目をあけるとぱっと自分の隣に目を移した。 そして自分の肩を枕に穏やかな寝息を立てている少女の姿を確認してほっと息をはいた。 「・・・・よかった。」 ―― 夢じゃない ―― 言葉にならなかった言葉にシルフィスは苦笑する。 何度こんな朝を夢にみたかわからないから、こんな風に危惧してしまうんだと思うと情けないような、恥ずかしいような気分だ。 シルフィスは細心の注意をはらって自分の腕を抜くと僅かに身じろぎしただけで眠り続けている少女を頬杖をついて見つめる。 クラインには珍しい枯葉色の髪と寝息をたてる可愛らしい唇、今は閉じられている瞼の下には髪と同じ色の見る者を惹きつけずにはいられない瞳を持つ少女 ―― メイ。 台風娘との字を戴く彼女に恋したのはいつの事だったか、もう忘れてしまった。 魔導実験の失敗によって片道切符だけでクラインに召還されてしまって表向きは魔法研究院に見習いとして暮らすはめになった・・・というとんでもない経歴すら感じさせないほどに威勢のいい彼女。 そんなメイをアンヘル族として奇異の目で見られるせいで王都になれることができなかったシルフィスは呆れと驚きが入り交じった目で見ていたものだ。 どうしてあんなに強いのだろう?と。 ・・・・でもけしてメイは強いわけじゃなかった。 どこでもやっていけるから大丈夫、という姿勢。 それは彼女を偶然召還してしまった不器用な青年への彼女流の気遣いだということに偶然気付いてからシルフィスはメイに目をひかれるようになった。 元気のいいメイ、明るいメイ、可愛いメイ、優しいメイ・・・・ ―― 『シルフィス!』 ―― 名前を呼ばれるたびに鼓動が跳ねて自覚していなかった想いを知らしめた。 友達では我慢できなくて、自分の腕にメイを抱きしめたくて何度夢にみたかしれない。 夢の中でしっかりと抱きしめたはずなのに目を覚ました朝の光の中で何度も切ない溜め息をついた。 でも・・・・ シルフィスはメイの枯葉色の髪を梳いた。 さらさらと滑り落ちる髪の紛れもなく本物の感触にどうしても頬が緩んでしまう。 「メイ・・・」 男に分化してからも強力なライバルのせいでなかなか想いをつたえられなかったけれどやっとメイに告白できたのは昨日の事。 『シルフィスが一緒にいたらなんでも乗り越えていけるって言ってくれたからあたしは帰れなくなってからもがんばろうと想ったんだよ?』 照れたように頬を赤くしてそう言うメイを思いっ切り抱きしめて・・・・ちょっと無理をさせてしまった気もする。 (・・・・でもそれだけ貴女を愛してるんですって事で許してくださいね?) 少しばつが悪そうに微笑んでシルフィスはメイの額に唇を落とした。 「ん・・・・」 その感触にメイが無意識にシルフィスにすりよってくる。 シルフィスはもう一度メイを抱きしめ直すと朝日の中で丸くなった。 今日は確かメイも休日だったはず。 彼女が起きたら一緒にどこかへ行こうか、それともこうして過ごしていようか。 でもメイが目覚めるまでもう少し、眠っていよう。 眠って彼女を抱きしめる夢を見てももう目覚める事は切なくない。 ―― だってこれからは、目覚めても夢の続き 〜 END 〜 |
― あとがき ―
短めだけど少しは甘いお話ができたでしょうか〜?
この創作は東条が友人のライブに行った時にタイトルの『夢の続き』
というオリジナルの曲を聞きまして。
その曲が想いが通じた後のすっごく可愛い心境を歌っていて東条は
思わず「これだ!」と思いましたね(バカ・汗)
でも曲の方では女の子の側からの心境だったんですけど、ちょっとア
レンジかけてシルフィス側からにしてしまいましたけど(^^;)
インスピレーション(と呼ぶほど大層なものかな・笑)をくれた友人のバンドに感謝ですv
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