ミトンの手袋 〜 said,A 〜
綿菓子みたいだけど、冷たい雪の降る日、貴方が誘いに来てくれたから私は目一杯厚着して、手にはお気に入りの茶色いミトンの手袋をはめて、外に出た。 外は一面の銀世界。 眩しいくらいで思わず私は目を細める。 「なにやってんだよ?ほら、行くぞ。」 「あ、待ってください。ゼフェル様。」 ぶっきらぼうに言う背中を私はあわてて追いかける。 サク、サク、サク 雪を踏む音がやけに響く。 (こんな静かな所にいたら、心臓の音が聞こえちゃわないかな・・・) 「アンジェ?なんか言ったか?」 私が変な心配をしてたら急にゼフェル様が振り返った。 「え?べ、別になにも言ってないです!」 あわてて私は首を振った。 「そうか?もしかしたら腹でも鳴ったんじゃねえの?」 「ち、違います!ゼフェル様の意地悪!!・・きゃあっ?!」 「あ、バカ!」 トサッ 興奮しちゃったせいで足を滑らせた私を間一髪抱き留めてゼフェル様はふうっと溜め息をついた。 「お前、ただでさえドジなんだから、気をつけろよ。」 「・・・ごめんなさい・・・」 とにかくはずかしくて顔を伏せてしまった私を、元通り立たせるとゼフェル様は一瞬躊躇った後、私の手を掴んだ。 「ゼ、ゼフェル様?!」 「あ〜、うるせえ。叫ぶなよ。こうすりゃあ、お前が転んでも助けられるだろ?なんか不満かよ?」 そういうなりぷいっと顔を反らせてしまうゼフェル様。 ・・・でも耳まで赤いって気付いてる? 私は気がつかれないようにほんの少し笑った。 (それにしても勿体なかったな。ミトンの手袋してなかったらちゃんと手を繋げたのに。) 私がそんな事を思ったちょうどその時、ぽつっとゼフェル様が言った。 「・・・なあ、なんでこんな物、はめてんだよ・・・?」 一瞬意味がわからなくて・・でもわかった瞬間私はぱっと赤くなった。 ぶっきらぼうだけど、今の言葉の意味ってたぶん・・・私と同じ事考えていた・・・? 今度は無理だった。 嬉しくって私はくすくす笑ってしまう。 途端にゼフェル様は赤い顔で肩越しに私を睨み付けてくる。 「なんだよ。笑うな!」 「ごめんなさい・・・だって・・・」 「あーもーいい。んな事言った俺がバカだった。」 そう言って振り離そうとする手に私はあわてて飛びつく。 「おい・・・」 「違うの!嬉しかったんですってば!・・・ゼフェル様が私と同じ事、考えていてくれたのが。・・・だからこうしましょう!」 私は右手のミトンをはずすとゼフェル様に差し出した。 「はい。ゼフェル様はこれをつけてください。」 「これって・・お前はどうすんだよ?」 「私にはこんなに暖かい手がありますもん。」 私はそう言って手袋を外した手できゅっとゼフェル様の左手を握った。 ゼフェル様は驚いたみたいに少し目を見開いて・・・でもその後、器用に片手と口でミトンをはめるとポケットに突っ込んだ。 そして私の手を握ったままもう片一方のポケットに手を入れて、滅多に見せてくれない、はにかんだ笑顔で言ってくれたのだ。 「・・・お前の手・・・あったけえな。」 って・・・ 〜 Fin 〜 |
― あとがき ―
初々しい二人が書いてみたくて書いてみましたv(まんま・汗)
なんでミトンなのか?!
・・・ただ単に、寒い日に東条が愛用している手袋がミトン、というだけです(^^;)
まあ、一応本命であるカップリングの創作、第一弾としては気合い入れて書きました。
冬らしい創作でしょ?(笑)
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