『偶然』という名の『運命』




雪が降る寒い夜。

そんな寒さなどぶっ飛ばすあつ〜い雰囲気に満ちている家が1つ。

最近、異世界からやってきた台風娘、メイをお嫁さんにもらったばっかりのレオニス・クレベール大尉の家である。







暖炉の前で本を読んでいたレオニスは、肩にふわっとかかってきた重さと温もりに顔をた。

「メイ」

自分の肩に後ろから抱きついている最愛の妻の名を呼ぶ。

「どうかしたのか?」

くるっと体を反転させることでメイを自分の腕の中に納めて、レオニスは囁いた。

その腕の中にすっぽり収まったまま、メイは首を振って言った。

「ううん、なんでもない。・・・ただね、あたしたちって偶然に助けられてるなあって思って。」

「?」

メイの言いたいことが掴めずに首をかしげるレオニス。

その顔にクスクス笑いながらメイは続けた。

「だってそうでしょ?
もしあたしがレオニスにぶつからなかったら、ペンダントを拾うこともなかったし、お見合い話をしているときに行かなかったら、レオニスは結婚させられてたかも。」

そんな事は絶対ない、と言おうとして開けた口はメイの指一本で止められてしまう。

そして悪戯っぽい笑顔で言った。

「なによりあたしが降誕祭の日に出かけてレオニスを見つけなかったら、こうはなってないと思うよ?」

・・・確かに不器用なレオニスが彼女に想いを伝えられたのは、降誕祭の奇跡があったからかもしれない。

しかしレオニスは少し考えてからメイが腰砕けになってしまうほどの、優しい笑みで言ったのだ。




「たぶんその『偶然』が、私とメイの『運命』だったのだろう。」




「・・・そんなにあっさり言われるとは・・・」

「何かまずかったか?」

まさかレオニスがこんなにさらっと、あんな台詞を言えるとは思っていなかったメイは不意打ちの言葉にパッと赤くなる。

その顔を覗き込んで今度はレオニスが悪戯っぽく笑った。

「もう、意地悪。」

そう言って、でもメイは満面の笑みを浮かべてレオニスの頬にキスをした。

「でも、大好き。」

「メイ・・・」

そのあまりの可愛さと、甘い贈り物にレオニスは目眩をおこしかける。

可愛いメイ、愛しいメイ。

彼女の笑みを見るだけで、幸せになれる。

その涼しげな声で自分への想いが紡がれると、本気で死んでもいいと思えてしまうほど、嬉しくなってしまう自分には思わず呆れるしかない。







レオニスは口では伝えきれない想いを伝えるために、そっとメイを上向かせるとその唇に己のそれを重ねた。

長く、甘いキスの途中、うっすらと目を開けたレオニスは、至近距離にあるメイを見つめて心の中でこっそり付け足した。

(もし『運命』がなかったとしても、やはり私はお前を手に入れるために全力を尽くしたさ・・・始めて会った時から、惹かれていたのだから・・・な)










                               〜 END 〜








― あとがき ―
あんましそれっぽくないんですが、一応『偶然の力』の続編です。
『偶然の力』が甘くなかったので、なるべく甘く!を目指したんですが・・・
短いのに謎な物が出来上がってしまいました(- -;)
うう、それにしても最近隊長ばっかし書いてる気がします。
東条は不器用なキャラを押せ押せで書くのが好きなんです〜(^^;)
シオン〜〜がんばってくれ〜〜〜(笑)