恋と書いて、戦と読む



悔しい!

またヒノエくんにからかわれた!!

あんなのは絶対、ズルイんだから!

あんな・・・・あんな、色っぽい目で下から見上げて

『姫君』

なんて呼んで。

ヒノエくんが女の子みんなに対して、あのくらいの事をやってのける人だってわかってるのに。

〜〜〜〜〜なんで赤くなっちゃうのよ、私!

もっとさらっと、右から左に流して、格好良く対応出来なきゃ絶対、ヒノエくんには勝てないのに。

・・・・でも、あんな視線に慣れてないんだから、しょうがないでしょ。

心臓はどきどきするし、顔は赤くなるし、どうしたらいいのかわからなくなっちゃって。

可愛げもない言葉ばっかり口をつく。

『ヒノエくんにとっては誰でも姫君でしょ。』

とんがった声でそう言って、つんっとそっぽをむくのが精一杯。

―― それなのに、ヒノエくんったら

『ほんとに可愛いね、望美は』

だって。

・・・・だから、何がどうして可愛いの。

からかってるだけでしょ?

そう思えば思うほど悔しくなる。

余裕綽々のその笑顔をどうやったら壊せるの?

どうやったら・・・・本気で好きになってもらえる?

私ばっかり、動揺して、私ばっかり・・・・・ヒノエくんが好きで。

悔しい、悔しい、悔しい!

絶対、絶対! ――










ほんとに参るよ。

手を握って、とっておきの甘い声で囁いても、望美は全然信じてくれない。

『姫君』

・・・・そう呼ぶのはもう、お前だけだよ。

気付いてない?

確かに少し前まで遊んでいたことは認めるけどね。

だってオレにとっては女の子はみんな綺麗な華で、愛でられれば満足だったし。

手に入れたいと思ったのはお前だけ。

だからこんなに本気で口説いてるのに、お前ときたら鈍感もいいとこだよ。

ねえ、望美?

お前が少しでも赤くなってくれると、オレも有頂天になるんだよ?

つんっとそっぽ向いて拗ねて見せる仕草だって、可愛くてしかたない。

それなのに、望美ときたら信じられない、とばかりに言うんだ。

『ヒノエくんにとっては誰でも姫君でしょ。』

なんて。

・・・・さて、どうやって信じさせたらいいかな。

オレの胸に手でも当ててみるかい?

そうしたらきっとわかるぜ。

お前が笑うたびにオレの心臓が煩いぐらい跳ねてるって。

でも、それはちょっと格好悪いかな。

オレばっかり、望美に惚れてるみたいだろ。

だから、お前を手に入れる策を練るよ。

とっておきの甘い策を。

もちろん、絶対 ――











―― 負ける気はないからね!















                                             〜 終 〜










― ひとこと ―
これが弁慶なら望美が悔しいと思うまもなく丸め込まれてます(笑)







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