身長差



「ねえ、麟くん?」

「ん?」

「背が高くなって良かった事って何?」

唐突に投げかけられた疑問に、麟は眉を寄せた。

ここまでの会話との脈絡はほぼ皆無に近い。

「突然、何?」

「うん、ちょっとね今」

そう言って千歳は自分が持ってきた和菓子を一欠片口に入れゆっくり咀嚼すると、お茶を一口飲んだ。

一連の行動を横目で伺って麟もそれに習う。

目の前に広がる景色はまだ冬のものだけれど、二人の上に降る日射しはもう暖かい。

そんな事を考えていたら、また千歳が麟の方を向いて、ちょっとだけ言いにくそうに言った。

「今ね、話してて・・・・視線が上だなあって思ったから。」

「なるほど、上だね。」

麟がちょっと見下ろして、千歳がちょっと見上げて。

―― 12年前とは反対の高さ。

それがひっくり返ったのは、ほんの少し前の事だから、千歳が違和感を感じるのは当然かもしれない。

ふむ、と考えるように視線を廻して麟はお茶を一口飲んだ。

「そうだなあ・・・・景色が違うよ。」

「そうよね。大分大きくなったもの。」

「見えなかったものが見えるようになった。」

「ふーん。」

「それから、高いところの物をとるのに苦労しなくなった。」

「ああ!それはあるわよね。・・・って、今まではどうしてたの?」

「あのね、一応僕は符術師だよ?」

「あ、麒伯さんね。」

最近姿を見ていないが、12年前は確かに麟のお使いやら細々とした事をこなしていた麟の式神を思い出して、千歳は納得したように頷く。

それを横目に麟は少し苦笑した。

「まあ、いちいち呼ぶのは面倒だったから。」

「便利になった?」

「まあ、そうだね。でもそれより・・・・」

そこで中途半端に言葉を切って、麟は口の端を上げて笑った。

「!」

一瞬、ほとんど反射的に千歳は身を引こうとしたが、時おそし。

つっと、麟の指に頬を撫でられた途端、固まってしまった千歳の方へ麟は、身をかがめて・・・・。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

唇を離して真っ赤になっている千歳を愛おしそうに見つめながら、麟は悪戯っぽく囁いた。










「お姉さんに口付けやすくなったのが、一番良かったかな。」















                                          〜 終 〜










― ひとこと ―
なんか、懐かしかったです。やっぱ麟×千歳は好きvv





ブラウザの「戻る」で戻って下さい