12/30(木) 【冬の海】
暮れに友達と、壱岐・対馬に旅してきました。
どこか旅行に・・と言うと、いつも、何も下調べもせず行き、帰ってきてから、もっと調べてから行けばよかったと後悔することが多いので、今度こそ、いろいろ情報を仕入れてから行こうと思っていたのですが、結局、あたふたと出かけることになってしまいました。
でも、行き当たりばったりの旅もいいかな・・・としみじみ思えるいい旅になりました。
一日目は博多から船で対馬に渡り、タクシー遊覧。
対馬は、考えていたよりもずっとずっと広い島でした。ものの3時間という短い時間では、ほん一部しか観光できませんでしたが、タクシーの運転手さんも、資料館の館長さんも、少しでもたくさんの名所を案内したいという好意にあふれていて、島を丸ごと愛している様子がじんわりと伝わってきました。
元藩主の菩提寺万松院のしっとりとした石段を、運転手さんに案内されてゆっくりとあがったのですが、一段一段大事に歩くその足取りからは、時代が変わっても藩主を敬う厳かな気持ちがやんわり伝わってきて、思わず背筋がピンとのびるようでした。
対馬を堪能するには、丸2日は必要らしい。壱岐とちがって、道路が縦横に走っているわけではないので、時間をかけないと回りきらないのだそうだ。
「対馬にはもっとゆっくりおいでなさい。今日のはホンのさわりです。」
その言い方がなんだか、1年間の疲れを癒してくれるかのようにまろやかで、たった3時間でもこの島に来て本当によかったと思いました。
二日目は、壱岐の最北端、勝本の朝市から始まりました。
60過ぎあるいは70過ぎの女性が、生き生きと働く朝市は、干物や塩辛に加え、松や備え餅などの正月ものが並び、まるで「かさこじぞう」に出てくるような独特のにぎわいがありました。
その後、「イルカパーク」へ。
この壱岐は、かつてイルカに悩まされた島なんだそうです。20数年前、イカやブリを食い荒らすイルカの大群を操業中の漁船が見つけ、直ちに300隻の漁船が出動し、1000頭のイルカを捕殺し、世界中を敵に回したことがあったらしいのです。(そう言えば。当時の人気歌手オリビア・ニュートンジョンがその事件を知って「野蛮な国で歌うのはイヤ。」と言ったとかで、「なんてヤツ!」と弟が憤慨していたのをうっすら覚えています・・・。)
そのこともあってか、その後壱岐では、イルカを殺さず捕獲し、入り江で育て、芸を仕込み、日本中の水族館に送っているのだそうです。
イルカパークと聞くと、「鴨川シーワールド」のような施設を思い描いていた私は、そのあまりの素朴さに衝撃を受けてしまいました。それはなんとも心地よい衝撃でした。
イルカパークの待合い室で、壱岐の名勝の写真を眺めていたら、ものすごい写真を見つけました。「蛇ガ谷」というらしい。ヤセの断崖みたいなんだけど、その奥に見える海の色がとても美しくぜひとも行ってみたいと思ったのです。
係員にどうやって行くのか尋ねると、「辰の島」という離れ島にあるので、クルマでは行けないと言う。オフシーズンなので、グラスボートが出ているかも分からないと言う。
どうしても行ってみたいのだと言うと、係員は、漁業組合に電話をしてくれました。そして、30分後でよければ船を出すという。ああ。なんていい人達なんだろう。
30分後、グラスボート貸し切り状態で、辰の島に向かいました。
浜はうっすらと白く、海の色はほんのりエメラルド色。船長さんは「天気がもっとよかったらもっといい色なんだけど。」と何度も言ったけれど、私には十分過ぎるほど美しい色でした。
「今日は特別サービスだ。」と船長さんが案内してくれたんだけど、船長さんがいなかったら、道に迷っていたかもしれない。360度何処を見ても人は一人もおらず、いかにも無人島らしい寂寥感が漂っているところでした。イルカが1000頭殺されていたという入り江は、大変美しいところで、ふぐが泳いでいるのが見えるほど水は透き通っていました。
20分も歩くと、蛇ガ谷に着きました。
蛇ガ谷の底に広がる海原は外海らしい群青色した荒波で、何度も激しくぶつかる波を見ているだけで、気が遠くなりそうでした。夏はこの外海を遊覧船で巡るという。季節は海をものすごく変えるんだなとしみじみ思いました。
三日目は、帰りの船が出る芦辺港近くの少弐公園を中心に回りました。
少弐公園とは元寇で勇敢に闘いその若い命を落とした少弐資時を祀ってある公園で、芦辺港には4年前に元寇720年を記念して建てられた資時像が荒々しく周囲を睨みつけていました。
どうして“700年”じゃなく“720年”だったんだろう。
どうしても気になって、帰宅してから弟に尋ねると「700年というと25年前か・・。中国や韓国に配慮したんじゃないか。」とポツリ。
ああ。そうかもしれないなぁと思いました。
壱岐・対馬の向こうにはもうすぐそこに朝鮮半島があるのでした。
壱岐の筒城浜は、日本の海水浴場100選にも選ばれたことのあるほどの美しい白浜なのだけど、「冬のソナタ」に出てきたあの美しい海岸にそっくり。イカが干してあるところもとてもよく似ていたのです。
浜を歩くとサクサク音がしました。冬のソナタの主人公達もこんな風にサクサク音を立てて歩いたのかなとふと思いました。
「今度は夏にいらっしゃれ。」
漁業組合の人たちはみなそう言った。ウニが本当に美味しいそうな。
近いうちにまた来たいと本当に思いました。
