〜冬の特別拝観〜
   大徳寺(瑞峯院〜芳春院〜大仙院)…今宮神社……天寧寺 

京都では、「京の冬の旅」と銘打って、毎年1月ごろから三月中ごろまで、普段見せてくれない文化財を公開してくれている。毎年楽しみにしているのだが……今回は大徳寺内の塔頭を中心に廻った。青春十八切符を利用しての、日帰り強行軍。相変わらずの貧乏旅行である。(笑)久々に、母と一緒の女二人旅だ。
なお、今回紹介する場所はいつも公開しているとは限らないので、行こうと思われる方は事前調査をお忘れなく…。(大仙院だけは年中開いてます)


今回は拡大写真を用意しておりません。「これ、もっと大きく見たい」というのがありましたら、リクして下さい。載せますので。  


大徳寺

ちょうど昼前に京都へ到着。一路、大徳寺を目指すことに。
まず、地下鉄で北大路まで出る。京都駅前からバスで直接大徳寺へ行くことも可能だが、風魔はあまり京都のバスは信用していない。(笑) ……失礼。 というか、京都のバスは渋滞とかで時間が読みにくいので、なるべく使わないのが無難だと思う。意外とぐるぐる廻らされて余計な時間をとられるし。基本的に京都歩きのオススメは、地下鉄、私鉄を使ってなるべく目的地近くまで行き、そこから別の交通手段(バスやタクシー)を使う。同行者が二人くらいいるときは、バスを使うのもタクシーを使うのも、あまり変わらなくなるので、意外とタクシーがオススメだったりする。
北大路で軽く食事をして大徳寺へ。

さて、大徳寺。境内は自由に歩ける。
さすがは大寺院。見上げると首が痛くなるような巨大な堂が並ぶ。境内を入ってすぐのところに法堂から本堂へと三棟のお堂が続く。ただ大きいだけでなく、どっしりとした風格と優美さがあると思う。派手さのない、優美さ……。禅の基本といえば基本だろう。
そして、この大徳寺は、松がいいと思う。大伽藍に負けないだけの大きな松が、きちんと手入れされて青々しく天を向いている。冬にきても「いいな」と思えるのは、この松の緑があるからかも…しれない。
それに、意外と……掃き清められた地面を見るのは冬がいい。(行楽シーズンは人が多いので無理) そんなものを見る人間はあまりいないかもしれないが、大徳寺は手入れの行き届いた清々しさが心地良い寺だと思うので…。冬に訪れたときには、ちょっと足元も見下ろしてほしい。


社務所とは 思えない

両脇が松の散歩道。楽しい構図。


一列に   粛々と  一心に    歩み  果てなく 



瑞峯院(大徳寺内)


  
瑞峯院は、室町時代の大友宗燐が創建したお寺。方丈、唐門、表門、ともに禅宗方丈建築で、重文に指定されている逸品だ。
風魔は入るのは二回目である。

まず、表門から中をひょいと覗いた感じが良い。
(←)門を外枠として見ると、あおい苔の中を折れて行く道と、右手から少し張り出して見える屋根が、好い構図だ


受け付けを済ませて一番に目にするのが、方丈前の独座庭(枯山水)だ。
中央の大きな岩が蓬莱の山岳。そこへ荒波が打ち寄せている。方丈の奥に茶室があって、その茶室前の方は内海を表現しているらしい。方丈前の砂よりも、波形が穏やかだ。
方丈の縁側に座って横から眺めるものなのもしれないが、縦に奥行きを感じながら見る方が、風魔は好きだった。波が蓬莱山にぶち当たってぶわりと広がる様子がリアルに感じられる気がする。方丈の縁側の縦の線が、砂の白さを引き締めてくれるところも、良いと思う。
茶室前庭は、少し背丈のある緑茶色の苔が柔らかそうで、暖かな印象を与えてくれた。外海の荒荒しさとの「違い」を表現しようとしたのだろうか…。そんな風に思った。方丈前のものよりホッと和む感じだ。
(右下写真)


裏にまわると、閑眠庭と呼ばれる彼山水の庭がある。これは、最近の作庭。(重森三玲氏作)キリシタン大名だった大友宗燐に因んで、縦四、横三個の石が十字架に組まれているらしい。(実はよく知らなかった。笑)

閑眠庭の奥に長細い茶室がある。大徳寺内唯一の逆勝手席なのだそうだ。(すみません、茶道は詳しくないので…)ここは、内部を見せてくれた。天井の細工が珍しい。薄くした竹だったか木だったかを編んだもので、とても細かい。最近はどこのお寺も茶室内部へはなかなか入れてくれないので、結構嬉しかったり。
(右下写真…茶室内部)



簾越しの静観
日本らしい「おもしろ」さ



〜ちょっと脱線〜

  高桐院

今回は入らなかったが、大徳寺内の常設拝観寺院のひとつに、高桐院がある。とてもきれいなお寺だ。
特に紅葉がいい。拝観受付まで続いている長いアプローチ(小道)が最高だと思う。一面の苔の上に被さる紅葉の葉……。新緑の頃などは、自分が緑色になるような気分がするくらいだ。このアプローチ部分までは無料で入れるので(というか、その先に拝観受付がある)、時間がない人や、拝観料を払うのが勿体無い人は、ぜひ、このアプローチ部分まででいいから入って欲しい。それでもう十分だと思う。奥の庭もいいのだが、風魔はこの入口付近が一番好きだ…。
 
今回はもみじが冬枯れの為、少々寂しいがこんな感じ。


芳春院(大徳寺内)

前田利家夫人のまつ(芳春院)が建立した寺院で、前田家の菩提寺。風魔はここも二回目の訪問だ。
境内はとても広く、門から入ると長い石畳がずっと奥の唐門まで続いている。道の脇はさつきの植え込みやもみじなどが植わっていて、よく手入れされている。唐門付近の紅梅は横に張り出していてなかなか良い形だ。
中に入ると、まず本堂前の花岸庭を目にすることになる。
枯山水の庭園だが、岩だけを配しているわけではなく、白砂の波の一番奥には緑も見える。山渓を表現した苔の大地の上に、桔梗や沙羅が枝を広げている。
入った途端、視界がパッと明るくなる気がする庭だ。砂の白さがとても美しく映える。(写真は撮れないので、ナシ。ごめんなさい)

本堂をくるりと回って裏手にいくと、今度は前庭とはうってかわって広い池のある緑多い庭が広がっている。そのギャップにぜひ驚いて欲しい。
京都四閣のひとつ「呑湖閣」を配した楼閣山水庭。小堀遠州作の名園である。
この庭は非常にうつくしい。薄い屋根がスッと空に張りだした、姿の良い楼閣。濃い緑水をたっぷりと湛えた池と、種々の常緑樹がそれを囲んでいる。
昔はこの楼閣へ続く橋を歩くこともできたらしいが、今は本堂から眺めるだけである。残念。この庭園の池に臨む建物でお茶をいただくことが出来た様子。我々はスルーしたが、きっと心地よいひとときを過ごすことができることだろう……。



大仙院(大徳寺内)

常設の拝観寺院のひとつで、いつでも見ることができる寺だ。だが、何時訪れても「いいなあ」と思える見事な庭だと思う。丁寧に手入れされ尽くしている気がする。特に真冬の寒い時期……誰も拝観客がいない時に訪れるのが好きだ。季節を選ばないタイプの庭園だからだろうか。風魔は何も考えずに(特に目当てもなく)京都に来るとついつい、しつこく訪れてしまう場所だ。

門外も一つの絵になる。外門へ至るまでの道(大仙院と真珠庵に通じる)は両脇にまっすぐに背の高い松が並んでいる。太くも細くもなく、有名寺院へ続いている割に静かだ。そして、表門前に配されている一本の松の木が見事だ。背は低く、四方へと長く枝を張り巡らせている巨木だ。枝も葉も荒れた様子がなく元気で青々としている。拝観しない人でも見られるので、ここまでちょっと足を伸ばして見て欲しい。

外門までのアプローチ。
正面が真珠庵、左手に折れると大仙院。

横這いの松。


さて、建物内部に入って左手に折れると方丈前に広い枯山水の庭が広がる。石も何もなく、白砂が盛り塩のように二山だけ盛り上げてある簡素な庭だ。再奥の角に一本だけ沙羅双樹の機が植わっている。これが咲いて、花が白砂の上にポツリと落ちたりすると良い風情だ。何もないからこそ尚、美しく映える――。冬は葉もないから、沙羅の幹の美しさが特に際立っていた。侘びの境地を感じることが出来る。
方丈を回った真裏の庭も、何もない白砂の細長い庭だ。庭の向こう側に和尚さんの書かれた書などが展示してある建物があるので、そちら側から簾越しに臨むのがなかなか良い。まっすぐに揃えられた簾と、その向こうの白さとが、くっきりと際立つ感じだ。
なお、方丈内部の襖絵も有名な逸品なので、そちらも見ながら廻ってみよう。

前庭
閑とした世界の不思議

裏庭
凛と張り詰めた清々しさ


さて。前庭もなかなか良い大仙院ではあるが、本当の醍醐味は、入って右手(左手が表庭)にある小さな石庭にある――と風魔は思う。

ごく小さな小庭が二つ、建物の角を挟む形で並んでいる。その小さな敷地内に巧みに岩を配置して、鶴島、亀島、蓬莱山――そこを流れる滝、河、そして大海までもを、見事に表現してある。シンプルな表庭とは裏腹に、狭い庭のなかに所狭しと岩が配されている。だが、それがちっとも雑然と見えない。狭苦しくも感じられない
完成されたひとつの「世界」が、そこには存在する。小さな世界が無限に感じられる――ここはそんな庭だ。
ぜひ、ゆくりと座って、低い視点から眺めて欲しい……。


































〜ちょっと脱線〜

  今宮神社〜あぶり餅屋へ〜


大徳寺を後にして、すぐ近くにある今宮神社に回った。
せっかくここまで来たなら、やはり「お約束」のお店でお茶をしなきゃならないでしょう!……ということで。(笑)
東門の門前に二軒の「あぶり餅屋」が、まるで宿命のライバルのように向かい合って店を構えているのだ。大徳寺まできたなら、ここに寄って帰るというのは、何故か「お約束」になっている風魔である。
あぶり餅は、みたらし団子のように固くなく、とろりと柔らかな餅を細い竹串に巻きつけ、それにきなこをまぶして網の上で焼いたもの。店の前網でおばあちゃんが炙ってくれる。それを店先で頂くのだ。寒いときは奥に暖房してある座敷が広々しているから、そっちで食べてもよい。香ばしくて程よい甘さが美味しい。よく焦げた表面がしゅわしゅわと口の中で小さな音を立てるのが面白い。京都らしい絶品和菓子という感じはないが、素朴な味わいが好きな人には良いだろう。
どちらの店に入るかは、その人の好き好き。客引きのおばさんや店の雰囲気を見て、決めよう。ちなみに、風魔がよく行くのは……こちら側のお店。
 分かるかな…

今宮神社

疫病除けとして信仰を集めている今宮神社。ガイドブックでは普通、殆ど取り上げていないように思う。まあ、通りぬける程度だろう。
大寺院ばかり見てきた後では、いかにも地元の人の信仰対象となっている小さな神社――という感じを受けがちだが、さすがは京都。地方などにはなかなか見られない立派な社である。(この規模がゴロゴロしている辺りが京都の凄さだろう)
表門近くには自転車や車があったりして、少しだけ雑然と見えるが、本殿前は広々しており、きちんと整えられている。殺風景なほど何もないのが神社の本殿前というものだろう。まるで掃き清められた後の地面のようで、自分の足跡が気になるかのようだ。
大きな木々を森のように背負って建っている本殿――その茶色い屋根と緑の退避が美しい。


今宮神社から大徳寺前まで戻って、再びバスへ。北大路まで行ってから、地下鉄の鞍馬口駅で降りた。
実は、つぎの目的地はまったく訪れたことのない場所、エリアだったので、行き方がよく分からず四苦八苦。バスで行けないかと考えたのだが……やはり、確実な路線を取ろうということで地下鉄を使うことに。
めざすは天寧寺。どんなお寺なのか、まったく知らないまま、特別拝観で開けていてくれるからというので、行ってみることにした。
鞍馬口駅からは徒歩ですぐの距離にある。ただし、普通のガイドブックでは行きつくのはちょっと骨が折れるだろう。普通の生活エリアにある細い道を行く。しかも、有名寺院ではないので、標識もなく、下手をすれば人に聞いても分からない。(笑)風魔は「歩き」専用の細かい地図(あらゆる店や建物が出ている!)を持っているのでなんとかなったが……。それでも、あやうく行きすぎるところだった。
なんとか到着したのが、15:50。なんと、拝観時間は16:00までだった!危ない、危ない。最後の客として、中に入れてもらえた……。(なんて迷惑な客……)


天寧寺

もとは会津若松にあった寺で、焼けてしまった為、寺宝を集めて京都で再興したらしい。曹洞宗に属する。今残っている建物は、天明の大火で焼失した後、再建されたもの。茶人として名高い金森宗和のお墓がある為、宗和像も安置されていた。他に剣道示現流開祖善吉和尚の墓と像もあった。(案内人の人が、この人達についての説明を延々と聞かせてくれる。でもよく分からない 笑)
寺自体はこじんまりした小さなものだった。特筆するような大木も名園もないが、小さな木々を大事に手入れしている様子が心和む。
外門を潜ってから、庭を通って建物の入口へと向かう。入口からふと振り向いて通ってきた道を眺めると、正面に小さな鐘堂が見え、そこへ吸い込まれるように続くひし形の敷石が面白い風情だ。

宗和像などが安置されている部屋を見てから奥の棟へと足を運ぶ。天井の作りが珍しいものらしかったが、あまり説明が聞こえなかったので……割愛。(す、すみません)奥の棟には細長い小さな庭と、茶室がついていた。茶室は暗かったが、開け放たれた窓の向こうに可愛い灯篭が見えていて、悪くない眺めだ。あと、小さな襖絵が四種類あって、それが可愛かったので思わず撮ってしまったり。
細長い庭は、白砂と常緑樹の小さなもの。新しそうな造りで、まあ普通。奥にちらりと見える蔵が可愛かったので、それを視界に入れて端っこから見てみるといいように思う。
奥の棟から逆に、今通ってきた本堂を振りかえると、なかなかいい雰囲気だった。大寺院のように洗練された美はないが、素朴な庭だ。小寺院なりに大事にされている雰囲気が暖かく感じられる。窓枠ごしに眺めると絵になる。
すっかり誰もいなくなってしまったので、じっと窓辺に座って眺めた。夕日が斜めに庭に射しこみ、本堂の屋根瓦を柔らかい色に染めた――。


拝観を終えて外に出る。
来たときには、急いで中に入ってしまったのでよく見られなかった表門を外から眺めた。天寧寺の最も有名な「素晴らしい景色」とは、実はこの表門にこそある。外側から門を額縁のように見たてて、その向こうにある景色を見るのだ。
まっすぐに伸びた石畳の向こう、遥か空の下に、あおい山が広がっている。―――比叡山である。額の中に比叡の山が、まるで描かれたような見事な構図で収まっている。本当に、一枚の絵のようだ。「こんな風景が見られるのはここだけですよ」と案内係りの人が嬉しそうに教えてくれた。
「額縁の門」と呼ばれるに相応しい――。












門内拡大



今回の旅はここまで。ちょうどお昼頃から夕方五時くらいまでのコース。
久しぶりに珍しいものが色々見られて嬉しかった。特別拝観はたまにやっているので、情報網を広げてマメにチェックすることをお勧めしたい。もっとも、特別拝観全てが「あたり」とは限りませんので、事前リサーチは必要。(笑)
ちなみに……今回は、比較的冒険をせず、「あたり」の多いコースを選んで歩いているので、参考にしてやってください。




戻る