<小話〜その8〜>

 
初北京ダック!(&京劇)  

 夕食は、初の北京ダックを食べた。
 全聚徳という名の大きなレストランだ。
 後で知ったのだが北京では有名な店らしく、厚手の立派な絨毯に、木製の巨大テープル、きらきらと明るい照明など――なんだかジーンズで入るのが申し訳ない雰囲気だった。著名人の来訪写真らしきものもちらほら飾ってある。
 さて、初めは今までと同じように、大皿に餃子や万頭、炒め物などが並び、最後のダックが出てくる。最後を見越して、きちんとお腹の容量を空けておかなければならない。料理人のお兄さんが、わざわざ厨房から出てきて切り分けてくれる。
 風魔はもともと鳥の皮があまり好きではなかったので、「大丈夫かな〜」とちょっと不安だったのだが……。飴色にこんがり焼けた皮はぜんぜん脂っぽくなく、カリカリしていて美味しかった。甘い味噌をつけて、クレープのような皮に包んで食べるものらしい。この店でも蒸篭に入った皮が何枚も出てきた。が、この店では特別に(?)一人に一個ずつミニバーガーのようなパンを配ってくれ、これにはさんで食べてもイイ感じ。「目から鱗」…という程の感激はなかったが、想像以上に美味しいものだと思った。余談だが、今回の旅で一番感動したのは、やはり各種水餃子と点心類だった……と思う――。

写真32 ←ダックを切り分けるコックさん。
シェフ帽の形がちょっと平べったくて変わっている。
写真sake
美味なる食事に
旨い酒
これ、何よりの
至福かな――

 

 食事の後、眠い目をこすりながら京劇を見に行く。
 まったく知識もなかったので、意味がわかるか不安だったが、一応日本語の簡単なガイドもついていて、大体は理解できた。電光掲示板にはずっと英語の解説が流れていて、ちゅんたはそっちの方が分かりやすいと、ヘッドフォンを外してしまったが……。1テーブルに7人くらいが腰を下ろし、ちょっとしたおつまみと飲み物も出してもらえる。(ここで食べた、甘く炒った豆は旨かった!)
 最初は女性が一人で踊ってくれた。なんとなくしか意味は理解はできなかったが、指の動きが優雅で、長いピンクのひれを地に付かないようにひらひらと操る様は見事。いかにも「舞い」という感じの美しい劇だった。
 ニ幕目の題目は「孫悟空」。これはとっても分かりやすかった、さすがに。(笑)一幕目とはうってかわり、激しい活劇ものだったので、ハラハラドキドキしながら食い入るように見てしまう。剣を高く投げ上げて、くるりと1回転してから受け取るとか、別の人と獲物を宙で交換するとか――なんだか高度な新体操を見ているような気分だ。ひとつワザが決まるたびに、思わず拍手。もっとも、さすがに京「劇」というだけあって、単なる技術を見せるのでなく、きちんと「流れ」があって、その辺りを注意して見ると面白い。特に役者さんの表情に注目して欲しい。真剣に睨みをきかせている時と、コミカルな表情をしている時と――あの分厚い化粧の下からでもきちんと分かるように演技をされている。表面のきらびやかな衣装や派手な動きばかりを追いがちだが、やはり「演劇」というだけのことはある。
 今回の旅行の中で、「あまり期待していなかったのに……!」と、良い意味で一番意外だったのが、この京劇だった。

 皆さんも、「ツアーのおきまりコース」と思わずに、ぜひ見て帰って欲しい。
 しかし――写真を撮らなかったのは一生の不覚。キラキラしていて綺麗だったのになあぁっ!