<小話 ~その5~>
  トイレのこと~ (ちょっと耳に痛いおはなし) 読みたくない方は飛ばして下さいまし


 どこだったか場所は忘れたが、いわゆる有料の公衆トイレというやつに入った時のこと。

 中国はトイレ事情があまりよろしくないという噂を聞いていたので、ちょっとばかり心配していたのだが、さすがに観光地やら都市ではそんなことはないらしい。扉のないトイレはとりあえずなかったし、(江南ではあったらしい……仕切のないトイレ  知人談)大抵は水洗だった。
 それでも、事前に読んでいたマナーブックに、「中国ではホテルやレストラン以外では、水洗でも紙は水に流さない」と書いてあったので、その通りにしていた。(便座の後ろに方に汚物入れというには大きすぎるカゴが置いてある。そこに捨てるらしいのだ)

 どうも、その時入った公衆トイレもその類のトイレだったらしい。
 いくつかあるトイレのドアをガチャと開けると―――。
 中には、紙が詰まって使い物にならなくなっている便器が……。
 それも、そのトイレの約半分がそうなっている。
 ちょうど、団体観光客のよく通る場所のトイレである。恐らくは、我らのように海外から来た、何も知らない観光客が使って行ったのだろう。
 なんだか、とても恥ずかしい気になった。
 たとえ、おんぷにだっこ状態のツアーであっても、最低限のその国の常識やらマナーは勉強していくのが礼儀というものだろう。そう言う風魔自身も、時間がなくて事前の研究が本当に不充分だった。トイレマナーは、本当に偶然知っていた、というだけのことだ。きっと、これと同じような非常識なことを、自分も何処かで気づかずにやっているに違いない。――本当に、自分が情けなく思った瞬間だった。

 あの後、あのトイレを清掃した人はどうしただろう。
 あのトイレは無事に直すことが出来たんだろうか。

 余所様のお国にお邪魔するのだ。その国の常識や大切にしている部分を自分たちの尺度でだけ計って、土足で踏みにじったりすることのないように、出来る限りの努力はしなくては……と改めて反省させられた体験だった……。