<小話 ~その4~>
極寒大地~♪ 気温について
旅行前、北京は寒い寒いと散々脅かされていた我ら。
旅行代理店のお兄ちゃんをはじめ、買ったガイドブック、そして出発直前の世界気象予報――と、とにかく手に入れる情報が全て一方向を指し示していた。
すなわち、北京=極寒!
よく考えれば、シベリアの奥地じゃああるまいし、普通にひとが生活している都市である。だが、温暖な山陽に暮らす風魔にとって「最低気温マイナス10度」という言葉は、その時は恐怖以外の何者でもなかったのである。
そこで、行く前に一番に考えたのは防犯対策ではなく、防寒対策。
買い込む、買い込む!カイロに厚手の下着に手袋、果ては帽子まで。下着売り場に行き、みっともないほどデカデカと「あったか ほかほか」とか「抜群!遠赤外線効果」とか書かれた袋を幾つも手に取る。今まで、「あんなの年寄の買うものだよな」と言っていた暴言を撤回し、会社の忘年会のビンゴ景品にカイロを所望して(一番だったのに!)、周囲の失笑を買おうとも、風魔は防寒にいそしんだ。
そして、いざ出陣――!
初日は様子見のつもりで、ダウンジャケットに手袋、それにタイツの上からちょっと厚手のズボンに身を包んだ軽装でとりあえず出かけた。でも、鞄の中にはしっかり予備のチョッキやらカイロを入れて。
しかし。
「あれ、あれれれ??」
一日歩き回ったが、何故かあまり寒くない。そりゃあ、日本に比べれば気温が低いのだが、体感的には想像ほどでもなかった。結局その日はカイロも使わなかったほど。
「ほら見ろ~(笑)」 と、寒さに強いちゅんたには笑われ………。
「いったい、ワタシの苦労はなんだったの!?」……と、ちょっと虚しい拳を振り上げてみたりして。(涙)
それでも、さすがに二日目の万里の長城早朝は寒かった。
この時ばかりはダウンの下にベスト、セーター、さらにフリースの中着を来て、スパッツの上にジーンズ、それに腰と靴下の中にカイロという……それこそダルマ状態にして行って、それでも丁度いいくらいだ。
特に夜が明けてからは暴風だったので、泣きが入った。
風魔はあそこで、生まれて初めて風が大木を真っ二つにぶち割るところを目撃した。雷のように木の幹を上から真っ二つに裂けて道路に落ちてきた。もう少し近くにいたら直撃して、重症になるところだった。あぷない、危ない。――それにしても、本当に風の威力は恐ろしいものだ。
そして、もう一つ今回恐ろしかったこと。
いや、「恐ろしかった」というより、恐ろしいことに気づいてしまったと言うべきか…。
それは、十年近く付き合ってきたちゅんたの体感センサーの異常さ!!
風魔および他のツアー客が厚手のセーターや手袋、マフラーで必死に防寒しているというのに、ちゅんた一人が「なんだ、あんま寒くないじゃん」と、半そでシャツにフリースだけ着た上にジャケットを羽織って歩いていたという事実!!
……もとからあまり寒がらないヤツだとは思っていたが、ここまでとは!!
まさに目から鱗の体験だった……。
しかし、現地のガイドさんはやはり我らよりずーっと薄着で皮ジャン一枚でずっと通していた。でも、あれはきっと「慣れ」の成せるワザなんでしょうね。
と、言うことは。
「やっぱり、ちゅんたは普通じゃない~~!!」
出会って×年目に知る、相棒に隠されていた衝撃の真実でした―――。(笑)
(ゴ、ゴメン ちゅんた……)