<小話 〜その1〜>

カンボジアの第一印象のこと




まずは空港に降り立った第一印象を。

 まず空港は当然小さい。飛行機から降り立ち、タラップを降りると、コンクリートの滑走路をてくてく歩いて建物を目指す。ひたすらだだっ広く何もないが、近くに停まっていたののは軍用機だった。長閑なのか殺伐としているのか、微妙なところだ。
 二階建てらしき(実際は違うのかも)小さな建物が、ちんまりと見える。あれが、管制塔かっ!?小学校より小さいぞ!(当たり前だよ)と思いながら、建物内に入る。中は小さな田舎の駅の待合のような雰囲気だ。
 プノンペンでは、入国審査を受けなければならない。そして、現地取得だったので、ここでビザを取らなければならない。

 ―――が、なんだか、全然そんな雰囲気じゃない

 入国審査というと、普通はずらずら並んで、一人ずつそれなりに、厳しい雰囲気があるものである。普通は。
 看板らしきものも、殆どなく、とりあえず何処へ行けばいいのやら分からない。待合室並の広さの部屋に、入国カードを書く台が二つほど、その横のカウンターらしきところに何人かの軍服みたいなものを着た兄さんたちが、話ながらたむろしている。その横に一人用のカウンターが三つほどあって、パラパラと人が座っている。
 たぶん、あの一人カウンターが入国審査だろう、いくらなんでも。そうすると、ビザはどうすんの!?この軍服で談笑している、兄さんたちのところか!?
 なんかチガウ……と思いながらも、もうどうしていいのか分からないので、その兄さんたちの近くへ寄っていって、ビザ取得のお金と前もって書いてあった申請用紙数枚――どれとどれを出せばいいのか分からなかったので――手持ちのもの全部をどさっと渡した。
 と、どうやらあっていたらしい。
 言葉はぜんぜんわからなかったが、身振りでパスポートを出せと示され、パスポートも提示すると、適当に処理してくれた。順番に並んだりはしない。差し出したら、適当に近くにいる人が取ってやってくれる…。アバウトさがステキだ。
 そして、次。その書類をまた全部持って、入国審査らしきカウンターへ。
 どさりと一式また差し出すと、お兄さん、いらないものを返し、抜けているところを親切に書き足してくれた。
 「ははあ。分からないところは空けといたんだけど……良かったー」と思っていると……いきなり。

「××××…?」

 はい?
 なんて言ったの!!??

 早すぎて分からんっ!…っていうか、今の英語!!??

 入国審査なんである。
 当然、質問はいくつかあるだろう。滞在目的は〜?とか何処に行くのか〜?とか、聞かれることもある。それが普通だ。だが、風魔が知る、一般常識範囲の質問英語に、該当する文書はなかった。

どうしよう、何て言ってるのっ!?

 と青くなった風魔だったが。
 お兄さん通じないと分かると、親切ににっこり笑ってジェスチャーしてくれた。
 パスポートの写真と、風魔の顔を指で指し比べ……そして……一言
 
 ………………おにいさん。
 ……………それはちょっと……。

 風魔は意味を理解したとたん、思いっきり脱力した。

どうやら、

「おねーさん、写真より実物の方が美人ね」

 そう言っているのである。

  その場は、こっちもにっこり笑って「Thank you」と手を振ったが……

 ……おにーさん、入国審査って、意味分かってるかっっ!!??

 冷や汗かいた、さっきのワタシの心労を返せ〜っ!心臓に悪いじゃないかっ!


 カンボジア……。
 おちゃっぴぃな人々の国……。これが、風魔の第一印象であった。





第一印象その2

 シェムリアップからホテルまでの道のりの中で、一言。

 まず、空港は「あの」プノンペンよりこれまた遥かに小さい。
 預けてあった荷物も、兄さんたちが、力技で運んできてくれる。ベルトコンベアみたいなものがある筈はない。それを受け取って、迎えに来てくれていたガイドさんについてホテルへ。

 見るもの全てが珍しい、シェムリアップである。
 プノンペンはまだきちんと、車も多い、「街」だったのだが、こっちは違う。
 窓の外には広大なジャングルのような森が広がって、後は空しか見えない。
 当然だが、下はただの土道。物凄いガタボコ道である。そこを自転車が通っていく。
 風魔たちがついた時には、雨季だったのでそのデコボコ道は水浸しだった。そこを自転車にのったお姉さんたちは、果敢に通過していく。水飛沫が跳ねまくろうが、水溜りに嵌ろうが、へっちゃらである。きれいなスカート(?)が台無しであるが、彼らには日常なのだろう。気にした様子もない。なんだか、たくましくて格好いいと思ってしまう程である。
 空港を出て暫くは、何もない荒地なのか田畑なのか微妙な土地がつづいている。道の両脇は深くなっていて水が溜まっている――。雨季だからたまっているのか、元々が小川なのかは良く分からないが、その水の中で子供達が楽しそうに裸で泳いでいる。―――かと思えば、ぐわりと水面が盛り上がって、水牛が「ウモオォォ〜」ってな具合で顔を出す。(←これ、最初は物凄く驚いた!)とにかく、牛はそこらじゅうにいる。繋がれていない連中も多い。あれ……野生なんだろうか???夜に外出して出くわしたら、さぞ怖いだろうなあ〜。
 やがて、少し建物が見えてくると、道の脇に露天が顔を出し始める。露天といっても、小学校の机のような小さな台の上に、何かが乗っかっている…という程度である。たぶん、売っているんだろう。頻繁に見たのは、フランスパンとジュースのペットボトルらしきもの。
 フランスパン――。これが絶品なんである。カンボジアとフランスパン――とっさに結びつかないかもしれないが、元はフランス統治下である。フランスパンは朝食に欠かせないらしい。我らの朝食にもフランスパンが出たが、本当に美味しかった。日本で食べたどんなフランスパンよりイける!ああもう一度食べたひ……。
 そして、もうひとつの、ジュースのペットボトルらしきもの。
 これがくせものである。
 何故か、色がなんである。どれも、黄色っぽい。コーラの瓶にしか見えないヤツの中にも、黄色い液体が入っているのだ。
 これ、間違えて買ってはいけない。飲んだりしたら、絶対に駄目。
 ガイドさんに聞いたところよると、「ガソリン」なのだそうな。
 車よりもバイクが多い、カンボジア。ガソリンスタンドなどは殆どないので、ああやって空き瓶に詰めて道端でガソリンを売っているのだそう。
 「やっぱ、観光地だねー。ジュースなんか、売ってるんだー」などと、暢気なことを考えていた自分が、ちょっと恥ずかしかった風魔である――。