自由連句百韻「ギヤマン」の巻

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 去年のうちに巻き上がっていたのに、道場主が怠けていて出品が遅れました。当道場3巻目の自由連句百韻です。
 この巻は最初のうち道場主以外の連衆で賑わっていて、おお、いい感じだなぁと思っていたのでしたが、三の裏あたりから亜月庵さんとの両吟の趣を呈してしまいました。三裏折端に玉ちゃんが付けてくれたぐらいですね。でも結果的に7名が参加したのですから、賑やかな一巻と言ってよいのでしょう。
 なお101句になっているのは、初裏折端に木菟さんの句が重複しているからです。自由連句の場合、重複を厭いませんから、これからもどんどん重複していいですよ。でもよく見ると木菟さんのお名前、字が違ってるのがありますね。木菟と木莵。わざと字を違えたのでしょうか?

自由連句百韻「ギヤマン」の巻
2001年7月16日首同年12月30日尾
初表 ギヤマンに滴したたるさくらんぼ 亜月庵
サマーハウスに吹き抜ける風
あの峰を越えて遥かな旅の果て 亜月庵
今朝は何かを忘れてないか 兼坊
振り向けば死屍累々と憂きことの 亜月庵
今でも残る原爆のあと 照英
青空にぽっかり浮かぶ雲の峰
空を見上げて思わずもらす 竹林着たきり
初裏 併殺打またやったかと監督が 兼坊
少し影差すイチロー人気
参院選さなか株価は急降下 兼坊
急反発か 行く先不安 竹林着たきり
靖国へ熟慮の期限近づきて 兼坊
泉のほとり花占いす
ちょっとあんた公園でゴミ出さないで 兼坊
ナンバーのない車が並ぶ 兼坊
ボロボロの船体波止場の隅に着き 亜月庵
稚内にはロシアのマフィア 兼坊
嫁ぐ娘に腕貸しあゆむ神の前 木莵
口ずさむのはフォーエバーラブ
戦いの絶えぬ国境砂嵐 亜月庵
埋もれし墓に青い罌粟咲く 木莵
銃口に挿す真っ赤な野ばら 木菟
二表 藁屋根の崩れ落ちたる過疎の村 亜月庵
山猫軒の特別メニュー 木莵
オニウシの帆立弁当いかがです 兼坊
ウシオニ祭りで春が来る町 亜月庵
風船がお空へ飛んだと泣いてる子 木莵
あした天気になれとうたった
憎らしや下駄の歯までが上を向く 亜月庵
無口な棟梁つげ櫛を買う 木莵
死ぬほどの苦労厭わず添う女房
幕が変わって書き割りの月 木莵
文化財伝統守る芝居小屋 照英
ホームページで宣伝するか 兼坊
ライオンは千尋の谷に飛び込むと 亜月庵
もののけ姫に出逢ったのです 兼坊
二裏 アニメだと何処の国でも人気者 照英
パソコンにまでネズミ顔出し 亜月庵
天井をLAN配線が駆けめぐる 兼坊
節穴覗けば間抜け面見え 亜月庵
新婚のお隣さんが気になって 兼坊
爽涼の中テラスでお茶を なず菜
小浜菊咲いて遠くに潮煙 木莵
旅行着の胸赤い羽根つけ 亜月庵
パックツアーアメリカ行きは中止にて 兼坊
さあ稼ぐぞとはしゃぐ温泉 亜月庵
リストラの嵐の中を就職し 兼坊
ストレスなどと病名が付く 亜月庵
藪医者の見立てはどこかずれていて 兼坊
当たるも八卦外れるもまた 亜月庵
三表 くじ引きで決める配役カラスのA 木菟
最前列で孫を見つめる
近頃はじじといえどもビデオ持ち 亜月庵
ブロードバンドで画像配信 兼坊
ウイルスに感染したのが命取り 亜月庵
生命保険五倍増額 木莵
被疑者とは事件第一発見者
見て見ぬ振りも仕方あんめぇ 亜月庵
なぜここに血染めの生理用品が 兼坊
眼鏡忘れてまた早とちり 木莵
数打てど闇夜の礫当たらずに
鬼が闊歩す節分の街 木莵
恐ろしき夷も心あるものぞ 兼坊
竪琴を弾く街角楽士 なずな
三裏 旅の果てイリス輝く石の町 亜月庵
出窓に花の鉢植え並ぶ 兼坊
襟元に赤い羽根挿す頃となり 亜月庵
酒のつまみは焼き鳥がよい 兼坊
下戸なのに一気呑みなど無理なこと 亜月庵
新入生にはこわい学寮 兼坊
今日もまたバックパッカー一人増え 亜月庵
洞爺湖温泉客足戻る 兼坊
恐いもの見たさに群れる平和ボケ 亜月庵
超望遠のレンズ抱えて 兼坊
流星雨見そこね長生きする覚悟 亜月庵
健忘症で死ぬこと忘れ 兼坊
すればいい愛でも恋でも不倫でも 亜月庵
思いを遂げて猫はご帰館
名残表 寝に帰るだけの二十三夜月 亜月庵
最近見ない子の起きた顔 兼坊
引きこもる部屋に生え出すサルマタケ 亜月庵
男おいどん美女が取り巻く 兼坊
千年を越えて源氏はニューハーフ 亜月庵
平氏時宗狂言役者 兼坊
萬斎は漫才師ではありません 亜月庵
おばんざいとは普段のおかず 兼坊
近頃は盆と正月毎日で 亜月庵
暑くなったり寒くなったり 兼坊
幸せにするなど言ったこともあり 亜月庵
末の松山波は越すもの 兼坊
確実に波も越えなむ気恥ずかし 亜月庵
隠れる陰もなき露天風呂 兼坊
名残裏 日本にもハワイ温泉ありと聞く 亜月庵
カナダにもあるMade in Japan 兼坊
名物はすべて我らにお任せを 亜月庵
元祖老舗の看板並び 兼坊
今日もまたほろ酔い機嫌夕景色 亜月庵
リストラの世に首にもならず 兼坊
春来るを待つ花の下草芽吹き 亜月庵
積もりし雪も雨に溶け行く 兼坊
於キョン太の連句道場本部


句上げ
亜月庵 36句 11句 兼坊 35句 照英 3句
竹林着たきり 2句 木莵 12句 なず菜 2句 計7名101句