死神見習いメル 作者 K&Aさん
私はメル。
現在、死神見習い中のカワイイ女の子。
今日も、一生懸命仕事を頑張ってま〜す。
でも・・・まだ見習いの私は、書類整理と命の蝋燭の見回りが仕事なの。
あっ、仕事の内容を説明しておくね。
どんな書類を整理するかというとね・・・えーと・・・まあ、とにかく色々な事が書いてある書類の事なの。
私は、書類を運ぶのが主な仕事だから、内容はよく知らないんだ。
でも、時々だけど、書類の内容を確認して分配する仕事もしてるの。
でもね、あれは私に向いてないのよね・・・。
なんか、ジッとして書類を読んでいると、イライラしてくるんだもん!
だから、あまりその仕事はしないようにしてるんだ。
次は、命の蝋燭の事を教えるね。
命の蝋燭って言うのは、人間の寿命なんだよ。
これが無くなると、人間は死んじゃうんだ。
それでね、これが無くなる頃、死神がその人の魂を迎えに行くんだよ。
ここでの私の仕事は、命の蝋燭の見回りをして、蝋燭が無くなりそうなモノを見付けたら、上司に報告するのが仕事なの。
そうすると、魂を回収する死神が、その人の魂を迎えにいくのよ。
そして、今日も、私は一人前になる為に、頑張って魂の蝋燭の見回りをしている最中なのよ・・・。
「ニヤニヤしながら歩いていると、失敗をしちゃうわよ」
あっ、お姉様が声を掛けてきた。
「大丈夫です! 失敗には、十分注意しています!」
私は、お姉さまに返事を返したの。
「そうね。この前のように書類を無くしちゃったら、今度は、どんなお仕置きが待っているか分からないものね」
「うっ!」
私は、この前の失敗を思い出した。
失敗とは、書類を無くした事なの。
それで、一生懸命探したけど、結局、見つけるのに三日もかかったの・・・。
あの時は、上司に酷く怒られたんだったなー。
私は知らなかったんだけど、何でも、その書類は天国と地獄へ行く人達のリストが載っていたらしくて、この魂管理室は、死んだ人の魂で一杯になってしまっちゃったの。
あっ、そうだ!
ここで皆に説明しておくね。
私達死神の働いているここは、魂管理室って呼ばれているの。
死んだ人は、一度ここにやって来て、生前の行いで地獄と天国に分けるのよ。
まあ、裁判所みたいな所ね。
それで、何でも今回の件で、私の上司は、閻魔様と最高神様に凄く怒られたんだって。
そして、私が上司から受けた罰は、死んじゃった人の生前の罪を調べる作業を、一ヶ月もやらされちゃったんだ。
あれは二度とやりたくないな・・・だって、あの仕事って、私に向いてないんだもん。
やっぱり、死神なんだから人の魂を運びたいのよねー。
でも、残念ながら、まだ半人前でやらせて貰えないけど・・・。
でもでも!
いつかは、お姉様の様な立派な死神になるのが、私の目標なのよ。
お姉様は、とっても優秀な死神なの。
もう、口では表せないくらい、凄い死神なのよ・・・。
「そうだ。レイド様がお呼びしていたわよ」
「えっ? レイド様が・・・?」
レイド様っていうのは、さっき話した上司の事よ。
顔はハンサムなんだけど、とっても厳しい人なの。
「何の用なんですか?」
「そうね、悪い話じゃないと思うわよ」
「何か知ってるんですか、お姉様?」
「自分の目で確かめてみなさい」
私は、とっても気になったので、お姉様と別れて、すぐにレイド様の部屋に向かったの。
「死神見習いナンバー1187番、メル入ります」
「入りなさい」
レイド様の部屋の前に着いて、ノックと自分の出席番号と名前を言ってから部屋に入ったの。
そして、部屋に入ったら、私の他にも何人かの死神見習いが来ていたのよ。
「では、全員揃ったので説明を始めるぞ」
レイド様は、そう言って説明を始めたの。
「ここに集まった君達は、我々死神の仕事で、最も難しいとされる魂の回収組を希望している者達だ」
へー、そうなんだー。
ここにいる人達全員、魂の回収の仕事を希望しているんだ。
「これより、魂回収組に適しているか、君達に試験を行うことにする」
「えーーー!」
私の驚きの叫びに、皆の視線が私に集中しちゃった。
「メル君。静かにしてくれないか」
「す・・・すみませんでした」
私は恥ずかしくて、その場から逃げ出したくなっちゃった。
でもダメ!
だって、この試験に合格出来れば、憧れのお姉様と同じ魂の回収組になれるんだもん。
頑張るぞーーー!
「では、説明する・・・」
ドキドキドキ・・・。
「一年間、人間界で生活するのが試験だ」
えっ?
それだけなの?
なんか、とっても簡単そう・・・。
「ただし、人間界で生活している間、決して『魔力』を使ってはいけない」
ええ〜〜〜!
そんなの酷いよ〜〜〜!
魔力が使えなかったら、普通の人間と変わらないよ〜〜〜!
レイド様のイジワル〜〜〜!
ここで皆にも説明しておくけど、魔力って言うのはね、私達が使える不思議な力のことなんだ。
私はまだ、初歩の力しか使えないけど、お姉様くらいになると、地上に地震や嵐なんかを起こしたり出来るんだよ。
「生活するだけで良いのですか?」
あ、隣の子が質問した。
「いや、一年間で君達には『純粋な魂』を見つけてもらう」
「それは、どんな魂なんですか?」
「それは、君達が自分で考え、自分で見つけるのだ」
難しいな・・・。
『純粋な魂』って何なんだろう?
「では、明日、人間界に降り立ってもらう。一日で準備を済ませておく様に」
レイド様の話が終わって、皆が部屋から出て行ったから、私も出て行こうとしたの。
「メル君。君は少し残りなさい」
えっ、私だけ・・・?
「何の御用でしょうか?」
皆が出て行って、二人だけになった部屋で、レイド様は話し始めたの。
「今の君の成績では、この試験を受けることが出来ない」
「それって・・・どういう意味ですか・・・?」
・・・えっ!?
まさか・・・ここで不合格!?
「そう・・・普通は出来ない筈なのだか、ある人の推薦で、特別に今回の試験に加えることにした」
良かった・・・不合格じゃなかった・・・。
「あの・・・誰が推薦してくれたんですか?」
「彼女にお礼を言っておきなさい」
レイド様は名前を言わなかったけど、この言葉だけで誰が推薦してくれたか分かっちゃった。
「はい! ちゃんとお礼をしておきます!!」
私は部屋から出ると、真っ先にお姉様に会いに向かったの。
そう・・・推薦してくれたお姉様に会いに・・・。
「お姉様!!」
お姉様の姿を確認して、私は大声でお姉様の名前を叫んだの。
「あら、メル? ・・・きゃ!?」
私は、お姉様のムネの中に思いっきり飛び込んじゃった。
「お姉様! ありがとう!!」
私は、お姉様の豊かなムネに思いっきり顔をうずめた後、お姉様にお礼を言ったのよ。
「まだ、お礼は早いわよ。その言葉は、試験を合格してからにしましょう」
「はい!」
「貴女には、誰にも負けない才能があるのよ。自信を持って頑張りなさい」
お姉様に激励され、私は自分の部屋に戻ったの。
「よーーーし! 明日から頑張るぞー!」
明日、遅刻しないように、この日は準備を済ませて早くに寝たのよ。
そして、次の日がやってきたの。
勿論、早く寝たおかげで、私は遅刻せずにすんだわよ。
そして、皆がレイド様の部屋に集まって、レイド様のお話が始まったの・・・。
「・・・では、皆が合格して戻って来る事を期待しているぞ」
・・・えーと、レイド様の激励の言葉は、本当は1時間位あったんだけど、全部聞くのが面倒だったから、最後の言葉だけにしておくね。
さて、レイド様の激励の言葉が終わって、遂に人間界に私達が向かう時が来たわ・・・。
「メル」
皆が人間界に降り立ち、私も人間界に降り立とうとした時、お姉様が私に声を掛けてきたの。
「お姉様」
「頑張ってね、メル」
「はい!!」
私は元気に返事をして、人間界に降りたったのよ。
「さー! 頑張るぞー!!」
今日から、私の人間界の生活が始まるの。
この試験に絶対合格して、お姉様の仲間入りを果たすんだ!
その為に、必ず見つけるぞーーー!
合格に必要な『純粋な魂』を・・・・・・。
メルが人間界に降り立つと、そこには二人の人影だけが残った。
「メルは大丈夫かな・・・」
「あら? 心配なんですか、レイド様」
「当たり前だろう。我が子を心配しない親はいないさ・・・」
「なら何故、この試験を受けさせたの? 貴方の権限なら、あの子一人くらい受けさせなくする事なんて、簡単でしょう?」
「元々、あの子はこの試験を受けるだけの成績を取っていなかった。それを、お前が如何してもと、私に言ったんだろう?」
「あら? 私の責任にするんですか?」
「いや・・・そうは言わんが・・・」
「大丈夫ですよ」
「何処から、そんな言葉が出て来るんだ?」
「だって・・・。あの子は、私と貴方の子なんですもの。心配ないわ」
「一人前の死神になったら、あの子に、私達が親だと言う事を告白しなければいけないんだよな・・・」
「もしかして、親だと告白するのが怖くて、そんなに渋っていたんですか?」
「そんなに苛めないでくれ」
「大丈夫よ。あの子はきっと、この試験を合格して戻ってくるわ。そして、私たちの事も受け入れてくれるわよ」
「・・・そうだな、あの子は強い子だ。なにせ、昔の君にそっくりだからね」
「あら? 私って、あんなにドジでしたか?」
「もう忘れたのか、ミトラ?」
「自分に都合が悪い事は、すぐに忘れることにしてるんです」
「あの子は、本当に昔の君にそっくりだよ」
「ふふふ。当たり前ですよ。だって、私はあの子の母親なんですからね」
「父親としては、あまり君に似てほしくはなかったんだがな・・・」
「レイド様。あれこれ言ってないで、信じて待ちませんか? あの子の帰りを・・・」
「そうだな・・・・・・」
レイドとミトラは肩を寄せ合い、二人で最愛の娘が無事に戻って来る事を祈った・・・。
おわり
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