HAND MAID メイ 「幸せいっぱい?」

「よっ、ほっ、ほっ」
 とバランスを取りながら、かすみは梯子(はしご)を渡っていく。自分の部屋と、隣にある和也の部屋とを繋いでいるこの梯子は、彼女たちの専用通路だ。
「オイーッス。和也くん」
 いつもの挨拶をして、かすみは和也の部屋の窓を開ける。
「オイーッス、和也」
 その後ろにはナース服を着た少女、サイバドール・レナもいた。彼女はかすみと一緒に住んでいる。といっても、寝るとき以外はほとんど和也の部屋にいるのだが。
「あ、かすみちゃんにレナちゃん」
 パソコンに向かって作業をしていた和也が、それに気付いて振り向いた。こうして彼女たちが窓から入ってくるのは、もはや日課のようでもある。しかし。
(うわ……かすみちゃん、また下着が見えてるよ……)
 わざとなのかは知らないが、彼女はいつもミニスカートで無造作に足を上げるため、白い下着がちらちらと見えて、目の毒なのである。仕方なく、和也はできるだけそちらを見ないようにするのだった。
(もう……和也くんってば……)
 そんな様子に気付き、一瞬寂しそうな顔をする。しかしすぐにいつもの明るさに戻って、部屋の中を見回した。
「あれ? 今日はメイ……いないんだ? ……って、わわっ」
 下を見ていなかったため、窓を降りようとして、かすみが足を踏み外した。バランスを崩し、前のめりに倒れてくる。
「あ、危ないっ!」
 和也は咄嗟に手を伸ばし、椅子から飛び出した。
 どっしーんっ。
 ギリギリで自分の身体を下にし、彼女を抱きしめたまま背中から倒れてしまう。
「い、いててて……」
「ご、ごめん和也くんっ。大丈夫? ……って、ん?」
 慌てて謝るかすみだったが、妙な感触があることに気付く。
「……あ」
 と和也も気付いた。
 彼の右手の平が、彼女の胸をしっかりつかんでいたのである。
 二人は目が合うと、お互いにさっと素早く離れた。
「ご、ごごごごごめんっ」
「う、ううんっ。ぼ、ボクの方こそ転んじゃって……」
 背中を向けたまま、真っ赤になって謝る和也とかすみ。
「……何やってんだか」
 とレナは呆れ顔で部屋に入ると、さっそくイカロボットのイカリヤに挨拶をした。
「オイーッス、イカリヤ」
「オイーッス、レナチャン」
 イカリヤはレナの胸に飛び込んでくる。
「と、ところで和也くん。今一人なの?」
 かすみがごまかすように訊ねた。
「う、うん。ケイさんは大学で、メイとマミさんは一緒に買い物。僕はレポートを仕上げなきゃいけないから、こうして残ってるんだ」
「ふ〜ん……」
「ところで、かすみちゃんはどんな用事?」
「あ、ああー、そうだった」
 やや大げさに、ぽんと手を打ち、彼女は立ち上がる。
「和也くん。今日は一体、何の日でしょう?」
「え? 何の日って……」
 改まって訊くということは、誰かの誕生日だろうか。考えてみるが、思い当たる人物はいない。
「もうっ……」
仕方なく、かすみは答を言う。
「今日は、家賃の集金日でしょっ」
「ぐわっ。そうだった……」
 すっかり忘れていた。
「当かすみ荘は、みなさまの家賃で運営されておりま〜す。というわけで、はい」
 催促するように、かすみは手を出す。家賃を集めるのは、大家の娘としての彼女の仕事なのだ。
 しかし、和也には今払えるお金はなかった。
「ご、ごめん、かすみちゃんっ。もうちょっとだけ待ってっ」
「あはは、わかってるって。仕送りまだ届いていないのは知ってるから。言ってみただけなの。……ごめんね、和也くん」
「も、もう……人が悪いなあ、かすみちゃんは……」
 内心冷や汗ものである。
「というわけで、ボクはレナちゃんと一緒に、他の人の所も集金しに行くとこなんだ。行くよ、レナちゃん」
「は〜い。ねえ和也、イカリヤも連れてっていい?」
 イカリヤを頭の上に乗せ、レナが訊ねる。
「うん、いいよ」
 と和也は優しく答えた。
「わーい、やったねイカリヤ!」
「ヤッタネ、レナチャン!」
 二人は抱き合って喜ぶ。
「それじゃ、また後でね。和也くん」
「後で一緒に『愛のつむじ風』観ようね、和也」
「うん、また後で」
和也は手を振り、玄関から出ていく彼女たちを見送る。
「……さてと。それじゃ、レポートの続きでもしようかな」
 パソコンの前に座り直し、キーボードに手を伸ばした。が、そこでふと、右手に先程の感触が甦ってくる。
(すごく……柔らかかったな……)
 まるでマシュマロにでも触れたかのような、いや、それ以上に未知の柔らかさだった。
(もう少し触っていたかったような……って、なっ、何考えてるんだ、僕はっ)
雑念を振り払うかのように、頭を掻きむしる和也。確かにかすみは気になる存在ではあるが、せっかく親しくしてくれているのだ。彼女をそういう対象にすべきではない。
しかし和也の思いとは逆に、先程スカートから覗いた下着の映像が、目の前でちらつき始めていた。そんな二つの刺激で、和也の股間のモノは充血し、硬くなっていく。
(うわ……まいったなあ……)
 心ではいけないと思っているのに、身体は反応してしまう。こう股間のモノが大きくなってしまっては、とてもレポートに集中するどころではない。
 どうにも我慢ができなくなり、和也はズボンとパンツをずりさげる。幸い、というのか、今この部屋には他に誰もいない。かすみたちが集金から戻ってくるまで、まだしばらくはかかるだろう。
(ごめん、かすみちゃん……)
 心の中で彼女に謝りつつ、自分のモノをしごいていく。
 メイたちが同居するようになってからというもの、和也はこの部屋で性欲処理ができなくなっていた。周りを常に女の子たちが取り囲んでいるのだから、当然といえば当然だが、健康な男子にとって、それは逆につらくもある。仕方がないので大学のトイレでこっそり処理しているのだが、知り合いの目も気になるので、そう何度も利用できるわけではない。なので今、和也は相当溜まっていた。以前オカズにしていたビデオも、メイたちに見付かって処分されてしまい、イメージに頼るしかなくなっている。
「……………………」
 しかし。
 思い浮かぶのは、エッチな姿ではなく、彼女の明るい笑顔ばかり。それだけではなく、同時にメイの笑顔まで同時に浮かんでくる。
『和也さん、和也さ〜ん』
 幸せ一杯の表情で、自分を呼ぶ彼女。
『メイは、和也さんのお役に立ちたいんです』
 メイは十分僕の役に立っているんだよ。
 そう一言、言ってやれば、彼女は今よりももっと笑顔になるのだろうか。
『オイーッス、和也くん』
 そう言って、いつも窓から入ってくるかすみ。その挨拶も、和也がロボットにイカリヤという名前を付けてから、彼女が言い出したものだ。
『もうっ……機械ばっかりいじってないで、たまには女の子にも目を向けたら?』
 このアパートで一人暮らしを始めてから、彼女がずっと親しくしてくれたおかげで、少しも寂しさはなかった。
「やっぱ……いけないよな……」
 和也は手を止めた。そして椅子の背もたれに寄りかかり、天井を見上げる。
「僕を信用してくれてる彼女たちを、オカズにするなんて……」
 とはいっても、彼の股間のモノは心とは裏腹に、まだ硬いままである。
「はは……どうしようかな、これ……」
 渇いた笑いをこぼす和也。
 と、そのときだ。
「和也さ〜ん、ただいま〜」
「ただいま〜」
 突然玄関のドアが開き、買い物に行っていた二人が帰ってきた。メイド姿のサイバドール・メイと、割烹着姿のサイバドール・マミだ。しかし彼女たちは股間を丸だしにした和也に気付き、思わずその場に立ち尽くす。
「か、和也……さん……?」
「あらあら〜?」
「め、めめめめメイ! ままま、マミさんっ!」
 迂闊だった。かすみとレナが部屋を出たので、つい安心してしまったが、逆にメイとマミが帰る時間だったのである。
 慌てふためいた和也は、今自分が椅子を傾かせて不安定な状態であることを忘れ、手足をばたつかせた。そして――。
「うわああっ!」
椅子ごと、背中から倒れる和也。
「か、和也さんっ!」
 とメイが駆け付けるが、間に合わない。
 どしーんっ!
豪快に頭と背中を畳に打ち付ける和也。
「う……」
 と小さく呻いて、彼はそのまま気を失ってしまう。
「か、和也さん和也さんっ、しっかりしてくださいっ!」
「ちょっと待って、メイちゃん」
 身体を揺するメイを止め、マミは和也の顔を覗き込む。すぐに気絶しているだけだとわかったが、気になるのは股間の部分である。
(あらあら〜。和也ちゃんってば……)
 ここでマミにちょっとした悪戯心――もとい、お節介心が芽生えた。
「あ、あの〜、マミさん。和也さんはどうですか……?」
心配そうな瞳でメイが見つめてくる。
「そうね……、今は気を失っているだけみたい。けど――ちょっとだけ問題があるわね」
「も、問題……ですか?」
「ええ。メイちゃん、ちょっとここを見て」
そう言ってマミが指したのは、和也の股間だ。
「あ、あの……。お、大きく……なってますね」
 あえて見ないようにしていたが、彼のモノはまだ勃起したままである。
「そう。和也ちゃんのここは……突然大きくなってしまうという、男性特有の病気なのよっ」
「びょ、病気……?」
 真に受けて、愕然となるメイ。
「そ、そんな――マミさんっ。どうしたらいいんですかっ?」
「大丈夫。この病気はすぐに治せるものなの。……ねえ、メイちゃん」
 マミは彼女の肩を優しく叩き、正面から見つめて訊ねる。
「メイちゃんは、和也ちゃんのこと……好き?」
「え? えーと、その、それは……」
 頬を赤らめ、思わず視線をそらすメイ。照れている彼女の様子で答は明らかだが、マミは言葉にして言わせたかった。
「メイちゃん……。この病気はね、その人を大好きな気持ちで一杯にしないと、治すことができない特別な病気なの。だから――もしメイちゃんがそうでないのなら……」
「そ、そんなっ……。め、メイ、和也さんのこと……好きです! 大好きです!」
 顔を真っ赤にしながらも、メイはしっかりと声に出して言った。
「メイはまだまだドジで未熟で、和也さんに迷惑ばっかりかけてますけど、でも、和也さんはメイに優しくしてくれるんですっ。メイは……メイは、そんな和也さんのお役に立ちたいんですっ……!」
「…………」
 マミはメイの言葉にしっかりと頷き、そして優しい笑みを浮かべた。
「メイちゃんの気持ち……よくわかりました。それではっ」
 と唐突に立ち上がる。
「私がやり方を教えますから、メイちゃんは和也ちゃんを大好きな気持ちを、ドーンとドーンとぶつけるのよっ。ハートにアタック!」
 びしっ! とマミは親指を立てる。
「はいっ。メイっぱい、がんばります!」
 決めゼリフを言い、メイはガッツポーズを作った。

(ああ……何だろう……)
 股間に走るむずがゆさとくすぐったさに、和也の意識は目覚めていく。
(この妙になまめかしい感触は……)
 目を半開きにすると、何かがもぞもぞと動いていた。
(……メ……イ……?)
 ぴちゃぴちゃ、と妙に響く粘着音。
「ふっ……んっ……はあっ……んっ……」
 息が漏れて、股間にかかる。聞き覚えのある声と、見覚えのあるメイド服。
 そこで、和也はようやくその感触が、快感であることに気付く。同時に、股間でうごめくものの正体にも。
(メイ――!)
 驚いて起き上がろうとした和也だが、そのとき。
 ごりっ。
 くわえていた彼女の前歯が、カリの部分に引っかかってしまった。
「………………ぅぐぅうぅおわぁあぁああああっ!」
 和也は飛び起きてメイを払いのけ、股間を押さえて悶絶した。亀頭は敏感な部分なため、歯のような硬いものが当たると、我を忘れてしまうほど痛いのである。
「あうわうわわっ……! ごめんなさいごめんなさい、和也さんっ!」
 慌てて謝るメイ。
「あらあら〜。だめよ、メイちゃん。気を付けなくちゃ〜……」
「は、はい……ぐすん」
 マミに注意され、メイは涙目でうつむく。
「ごめんなさい、和也さん。メイ、和也さんの病気を治そうとしたんですけど……」
「び、病気?」
 ふーふー、と自分のモノに息を吹きかけながら、和也は訊ねる。
「……一体何のこと?」
「え、えーと、ですから……あっ」
 とメイは和也の股間を見て、目を見開く。
「和也さんのここ……小さくなってます」
 確かに、小さくなっていた。あんなところをかじられてしまっては、さすがに性欲全開、というわけにはいかない。
「きっと治ったんですよ、ね、マミさん?」
「マミさん……?」
 じーっ、と二人の視線が彼女に集まる。
「あ、あらあら〜まあまあ〜」
 笑顔でごまかしながら、マミは言い訳を考える。そしてそれはすぐに思い浮かんだ。
「まだよ、メイちゃんっ」
 そう言って、勢いよく立ち上がる。
「えっ?」
「今は病原体が体内に戻っただけ。外に排出しない限り、治ったとは言えないわ」
「そ、そうなんですか?」
 メイの顔に再び緊張が走る。
「そう。だからメイちゃん、和也ちゃんのモノから白い液が出るまで、治療を続けるのよっ」
「わ、わかりましたっ」
 マミの出任せの言葉に、メイはしっかりと頷く。
「な、何なんですか、それはーーーっ!」
「まあまあ〜、和也ちゃん」
 マミは真っ赤になる彼の頭をつかむと、強引に自分の膝の上に置いた。いわゆる、膝枕の状態である。
「あ、あの……マミさん……?」
 怪訝な表情で見上げる和也。戸惑う彼に、マミはそっと囁く。
「和也ちゃん……。あんまり女の子に恥をかかせちゃだめよ?」
「い、いや、でも……」
「ダ・メ」
「は、はあ……」
 強引さに負け、和也は頷いてしまった。
「それじゃ、メイちゃん。和也ちゃんの治療開始よ〜っ」
「は、はいっ。再びメイっぱい、頑張りますっ」
 むっ、と気合いを込め、メイは和也の股間ににじり寄る。
「め、メイ……本当に……」
「……メイは大丈夫です。和也さん、ちょっとだけ我慢してくださいね」
 そう言って微笑むと、メイは柔らかくなった股間のモノを両手で包むように持ち上げた。
 そして指先で軽く撫でると、それだけでムクムクと膨張し、硬度を増していく。
「あっ……またこんなに硬く……」
 呟き、ゆっくりと、メイの顔が近付いていく。彼女の息がかかると、ぞくぞくと背中に痺れが走る。
「和也さんの……硬くて……それに、すごく熱いです……」
 完全に勃起してしまった和也のモノを、メイは潤んだ目で見つめながら、指先で上下にさすっていく。
「め、メイ……」
 どくんっ、どくんっ。
 自分の心臓の音が、激しく脈を打っているのがわかった。これからメイにしてもらえるのかと思うと、想像するだけでもたまらない興奮である。
「さあ、メイちゃん。そろそろ舌を使って。さっき私が教えた通りによ」
 和也を膝枕したまま、マミが指示を出した。
「は、はいっ」
 メイは両手でモノを握ると、和也の顔を見上げる。
「で、では……いきます。和也さん」
「う、うん……」
 和也は真っ赤な顔で頷くだけだ。
 メイの顔が段々と下がっていき、そして、差し出された舌先が、亀頭に触れる。
「うわ……」
 とそれだけで、和也は思わず声を上げてしまう。温かくて柔らかくて、ヌメヌメとした感触。想像以上に気持ちがいい。
「んっ……」
 メイはまず、亀頭に唾液を染み込ませ、滑りを良くさせた。そしてよくフェラチオの例えとして使われる、まさに”アイスキャンディーを舐めるように”、ペロペロと亀頭を舐めていく。
「くぅっ……」
 と和也は呻いた。それだけで、腰が痺れてしまいそうだ。
「あらあら〜? メイちゃ〜ん、和也ちゃんはとっても気持ちいいみたいよ〜。どんどん続けて〜」
「は、はい」
 マミの言葉に、メイは一旦口を離し、手を持ち替える。亀頭を左手で持つと、今度は顔を横にし、竿の部分にキスをした。唇で軽く挟みながら、舌を小刻みに動かしていく。
「んっ……んむっ……ふっ……」
「ううっ」
 気持ちがいい、とただ和也は思った。
 マミの嘘を信じ、本気で心配しているメイには罪悪感を覚えるが、この快感の前ではその嘘も否定することができない。
(ごめんよ、メイ……。でもメイの舌、すごくいい……)
 さらに彼女の次の行為で、和也は何も考えられなくなる。
「んっ……」
 つつーっ、とメイは大きく裏筋を舐め上げた。それを何度か続けると、亀頭の先から透明の液がにじみ出てくる。
「あ、何か出てきました」
「あらあら。それは、治療がうまくいっている証拠よ。もう少しね〜」
 とマミが笑みを浮かべながら言う。
「それじゃ、メイちゃん。そろそろ口の中に入れてみましょうか」
「は、はいっ」
 きゅ、と両手で根本の方を握ると、メイは亀頭に唇を付け、そしてゆっくりと呑み込んでいく。
「んんっ……」
 口の中が熱いモノで一杯になった。
(和也さん……早くよくなって……)
 そう願いながら、メイは口に含んだまま、肉棒を舌で舐め回す。
「はうっ……」
 和也の腰が一瞬浮き上がる。このままでは、すぐにでも出てしまいそうだ。
「それじゃ、そろそろ上下に動かして。最初はゆっくり……そして段々早く……」
「んっ……ふっ……はあっ……ふむっ……」
 マミの指示で、メイは口の中で肉棒を抽挿させていく。
「音を立てるともっといいわよ、メイちゃん」
「音……? こ、こうですか……?」
 ちゅぷっ……ちゅっ……ちゅくっ……くちゅっ……。
 メイが動く度に、その口から粘液質のいやらしい音が漏れていく。
「うくっ……。よ、よすぎるよ、メイっ……」
 和也の肉棒は、メイの唇で締められ、舌で舐められながら口内ですられている。この快感を少しでも長く味わっていたいため、和也は歯を食いしばって耐えていた。
「んっ……んふっ……んんっ……はふっ……」
 ちゅっ……くちゅっ……ちゅっ……ちゅぷっ……。
「くっ、くうっ」
 懸命に耐えていたが、もう限界だった。射精感が、すぐそこまでこみ上げてきている。
「だ、だめだ、出るっ!」
 全身を震わす和也。
「んっ……!」
 その瞬間、彼の肉棒が、メイの唇から滑り出た。そしてありったけの精が彼女の顔をめがけて放たれる。
 びゅっ、びゅくっ! びゅっ!
「ひゃんっ」
 思わず目を閉じたメイに、白い液体が降り注いだ。
「はあっ……はあっ……はあっ……」
 射精の余韻に浸りながら、和也は力を抜いてぐったりする。
「……あっ……、すごく熱い……」
 自分にかかった液体に触れ、メイは赤みがかった顔で呟いた。
「あらあら〜。たくさん出したわね〜、和也ちゃん。メイちゃんも、よく頑張りました〜」
 相変わらずマイペースなノリで、マミが言う。
「あ、あの……マミさん。これで、和也さんの病気は治ったんですか……?」
「えっ……? 病気……?」
 思わず聞き返してから、はっとなるマミ。実はすっかり忘れていた。
「あ、あらあら〜。そ、そうね〜。治ったような、治ってないような〜」
 メイと目を合わせないように、視線を宙に這わせる。
「どっちなんですか、マミさんっ」
「それは〜……和也ちゃんに訊いた方が早いわね」
「和也さんに?」
 マミに言われ、メイは和也を見る。すると――。
 きゅぴーん!
 和也の目が光っていた。
「ふふふ……」
 と不気味な笑みを浮かべる彼の股間は、今出したばかりだというのに萎えることはなく、天に向かってそびえ立っている。
「はうっ……」
 と硬直するメイ。
「ぜ、全然小さくなっていないです、マミさんっ。そ、それに和也さん、目が……目が光ってますぅっ」
「んー……」
 マミは顎に手を当て、考える。
「普通、一回出したらしばらくは回復しないものだけど〜……。どうやら、メイちゃんが頑張りすぎて、ますます火を付けちゃったみたいね。てへっ」
「てへっ、じゃありませーんっ。どうするんですかっ」
「大丈夫。こうなったら、奥の手よ」
 ぴしっ、と人差し指を立てるマミ。
「和也ちゃんと、肉体的に結ばれるしかありませ〜ん」
「肉体的に……?」
 メイは首を傾げた。彼女にはその意味がわからない。
「つまり〜……こういうことよ」
 ぼそぼそ、とマミは彼女の耳元に囁く。すると、メイは見る見るうちに、真っ赤になった。
「う、う、嘘ですぅぅっ! そ、そんなっ、そんなことするなんてぇぇぇっ!」
「あらあら〜、嘘じゃないのよ。男と女はそういう風にできてるの。もちろん、私たちサイバドールもね」
「はううっ……そ、そうなんですか……」
 納得はしたものの、メイは涙目でショックを隠しきれない。
「大丈夫よ、メイちゃん」
 タオルで、精液に濡れた彼女の顔を吹きながら、マミは優しく諭す。
「好きな人同士が肉体的に結ばれる、ということは、とても幸せなことなのよ」
「そ、そうなんですか……? で、でも、メイは和也さんの病気を治さないといけませんから、それどころじゃ……」
「あ、あらあら……。と、とにかく、後は若い二人に任せて、私はとんずら……じゃなくて、遠くで見守っているわね。それじゃ」
 マミは笑顔でごまかしながら、部屋を出ていく。
 しかし去り際に、和也の肩をポンと叩いた。
「しっかりね、和也ちゃん」
「…………はっ」
 我に返る和也。
(メイが僕のために健気に頑張ってくれたっていうのに、こんな欲望むき出しになるなんて――最低だよな……)
 自分自身に対して嫌悪が沸き上がった。そして、思わず彼は謝っていた。
「ごめん、メイ!」
「え……? ど、どうして和也さんが謝るんですか?」
「だって僕は……病気なんかじゃないから……」
 ぎゅっ、と拳を握りしめて告白した。
「えっ……?」
「そう、病気じゃない。マミさんの言ってたことは嘘なんだ。マミさんがどうしてそんな嘘を付いたのかはわからないけど……でも、僕はその嘘を利用して、メイを騙したんだ。自分が気持ちよくなりたいがために、本気で心配しているメイを騙したんだっ」
「和也さん……」
「だから……ごめん、メイ……」
 和也は深く頭を下げた。悔しくて、涙がにじんでくる。
「…………」
 しばしの沈黙があった。和也には、その沈黙がひどく長いものに感じられる。
「……顔を上げてください、和也さん」
 ようやく発せられたメイの言葉に、和也は首を振る。自分で自分が許せない。
「マミさんはきっと……メイたちのために嘘を付いたんだと思います」
「え……?」
「だって……そうでもしなければ、きっとメイは、いつまでもきっかけを作れなかったと思いますから」
「きっかけ……?」
 思わず顔を上げて問う和也に、彼女は顔を赤らめて言う。
「メイは……和也さんのこと好きです。だから……身体も結ばれたいです……」
「め、メイっ……」
 驚き、目を見開く和也。まさか、彼女からそんな言葉が飛び出すとは。
「そ、そんな、無理しなくていいんだよ、メイっ。僕が悪かったからっ……」
「違うんです。メイは、本当に……。きっと今を逃したら、もう……」
 きっかけを作るのは、ひどく難しくなる。
「……本当に、僕でいいのかい?」
「……はい」
 こくん、と頷くメイ。
「和也さんさえ、よければ……。あの、和也さんはメイのこと……?」
「もちろん――」
 そこまで言ってから、一瞬、かすみのことが頭をよぎった。だが、今は考えない。考えない。考え……ない……。
(くそっ……どうして僕は……)
 自分の優柔不断さに腹が立つ。こんなときだというのに、余計に彼女のことを考えてしまう。
「和也さん……もしかして……」
 和也のわずかな表情の変化に、メイは敏感に気付く。
「違う――」
 和也はメイを抱き寄せた。
「あっ……」
「僕が好きなのは……一番好きなのは……メイ、君だから……」
「……その言葉だけで十分です。メイはとっても、幸せです……」
 きゅ、とメイは彼の背中に手を回す。
 おそらく、メイは和也が迷っていることに気付いたのだろう。だが、それでも構わず、メイは求めてきた。
(この気持ちに……僕は応えなきゃ……!)
 だからせめて今だけは、かすみのことは考えない。頭の隅にもいてはならない。考えていいのは、メイのことだけだ。彼女のことだけに、全てを集中させる。
「メイ……」
 囁き、和也は彼女に上を向かせる。
「…………」
 さすがに何をするのか、メイにもわかった。静かに、目を閉じる。
 彼女のサクランボのような唇に、和也は段々と自分の唇を寄せていく。だが、和也は自分がひどく緊張していることに気付いた。
(口でしてもらったくせに、キスにこんなに緊張するなんて、何だか変な話だ……)
 心の中で苦笑する。
「和也さん」
 唇まであと一センチ、というところでメイが口を開いた。
「和也さんが病気じゃなくて……本当によかったです……」
「メイ――」
 愛おしさが募って、もうたまらなかった。だから――二人のファーストキスは、少し乱暴なものになってしまったかもしれない。

 メイの唇は温かく、そして柔らかかった。
 その感触に、和也は感動さえ覚えたが、それだけでは足りずに、舌を差し込んでいく。
(もっと――もっと、メイを感じたい――)
 だが、彼女の口内は、歯で遮られていた。知識がないせいもあるだろう。それに、緊張して身体を硬くしているメイには、これ以上自分から何をすればいいのか、わからないのかもしれない。
(メイ……)
 彼女の様子を見て、逆に冷静になった和也は、静かに舌先でメイの歯をノックする。
 うっすらと目を開けた彼女に、和也は頷いた。
「…………」
メイはためらいがちに、わずかに口を開いた。その隙を逃さず、和也はすぐさま舌を侵入させる。
「んんっ」
 突然の侵入者に驚き、メイは思わず声を漏らした。その声を心地よく感じながら、和也は彼女の舌をかきまわし、刺激を与えていく。舌先や舌裏を舐め、軽く吸ったりしながら、存分にメイの口内を味わった。
「……んっ……はあっ……あっ……ふっ……」
 ぴちゃぴちゃ、と互いの唾液が混じり合う。先程自分の肉棒を舐めたメイの舌だが、そんなことは気にならなかった。和也は夢中になって絡めていく。
(ああ……キスって……こんなに気持ちいいのか……)
 頭がぼーっとして、痺れていく。
 いつまでもこうしていたい気もするが、そろそろ次にも進めたい。
 名残惜しいが、和也は一旦、唇を離した。
「んっ……。はあ……はあ……はあ……」
 とろんとした表情で、メイは自分の呼吸を整えていく。
「和也さん……。キスって……すごいんですね……。メイ……とろけちゃいそうです……」
「じゃあ……もっととろけて……」
 耳元に囁きながら、和也はその耳に舌を差し込んだ。
「ひゃあっ。あっ……だ、だめです、そんなとこ……あっ……」
 メイの声が上がり、反応が大きくなった。
「あふっ……ふっ……はあっ………」
 震える手で和也にしがみつきながら、必死に彼の攻撃に耐えている。
(……こっちはどうかな?)
 メイの反応が楽しくなり、今度は首筋に口付けてみた。
「あっ……。だ、だめ、和也さんっ……んっ……ああっ……」
 舌を這わせると、明らかに感じている声が上がり始める。
(メイも、こんな声を出すんだ……)
 少し意外ではあるが、その声を出させているのが自分だということで、興奮も倍増だった。
(よ、よし。そろそろ……)
 メイを横たわらせて、和也は上から見下ろす。彼女の呼吸と共に、メイド服に包まれた膨らみが上下している。
(め、メイの胸に……胸に触れたい……)
 恐る恐る、和也は手を伸ばしていく。
「さ、触るよ。メイ……」
「は、はい……」
 恥ずかしそうに視線を合わせないようにしながら、メイはこくんと頷いた。
 それを見て、和也は両手で同時に彼女の胸に触れる。最初はそっと手を置くだけ。そしてゆっくりと指先に力を込め、その弾力を味わっていく。
「や、柔らかい……すごく……」
 感動のあまり、思わず声に出していた。
「は、恥ずかしいです……」
 真っ赤になりながら、メイは和也の手の動きを心配そうに見守る。
 和也は手の平で胸の先を撫でるようにし、そして感触を楽しむように揉んでいた。
(こんなに……こんなに柔らかいんだ……)
 今まで、偶然身体が触れてドキドキしたこともあったが、まさかこんな風に、好きなように触れる日が来るとは、思ってもみなかった。
 一通り感触を味わうと、やはり直に触ってみたくなる。
「ぬ、脱がすよ……」
 震える手で、彼女のメイド服のボタンを外していく。だが、順番を間違えたのか、うまく脱がせることができない。
「あ、あ、あれ? どうやって脱がすんだったかな」
 和也はメイと初めて会ったとき、彼女にUSB端子を取り付けるために、服を脱がせたことがある。しかしあのときの1/6サイズとは違うためなのか、それとも緊張のためなのか、なかなか手間取ってしまう。
「あ、あの……和也さん。メイ、自分で脱ぎますから……」
 見かねたメイが、起き上がり、自分で服を脱ぎだした。
「うっ……ご、ごめん……」
 何とも情けないが、こうして間近で彼女の脱衣シーンを見れたのは、逆によかったかもしれない。
 そしていよいよ、メイは下着姿となった。飾り気のない白い下着だが、かえって清純さを醸し出しており、彼女によく似合っている。
「メイ……。下着は、僕が脱がせていいかな……?」
「は、はい……。お願いします」
 メイは目を閉じ、身体を前に傾けた。その背中に、和也の腕が回される。
「ごくっ……」
 と彼は喉を鳴らした。いよいよメイの裸が見られるのかと思うと、たまらない興奮状態で、心臓が爆発してしまいそうだ。
 それはメイも同じなのだろう。その瞳は潤んでおり、身体を硬くして、小さく震えている。
「か、和也さん……」
 メイの思わず発した声と共に、ぱちん、とブラのホックがはずされた。肩紐をずらすと、そのままストンと落ちてしまう。
「きゃっ」
 思わず腕で隠そうとするメイだが、和也はその腕をつかんだ。
「隠さないで、メイ」
「で、で、でも……」
 覚悟はしていたが、やはり恥ずかしい。
「とっても、綺麗だから……」
「ほ、本当……ですか……?」
「うん」
 と頷く和也。
 確かにそれは、嘘偽りのない言葉だった。
 ふくよかな胸の膨らみの先にある、桜色の乳首。見た瞬間、息を呑んでしまった程である。想像以上に、メイの身体は美しかった。
「だから……もっともっと、メイに触れたい」
「和也さん……」
 再び口付けを交わし、和也はメイを押し倒す。
 そして今度は、直に膨らみに触れた。
「うわ……」
 触ってみて、さらに驚く。この感触は、服の上からではわからない。
 ふにゅん、という擬音が聞こえてきそうな柔らかさだった。
 さらに、肌はしっとりと吸い付いてくるようで、触り心地も抜群である。
「あっ……い、痛いです、和也さんっ……」
 急にメイが声を上げる。
「えっ……? あ、ご、ごめんっ」
 和也は慌てて手を離した。
 柔らかさに夢中になりすぎて、少し力を入れすぎたようだ。
「大丈夫かい、メイ? 今度は気を付けるから」
「は、はい……」
 頷くメイを見て、和也は再び彼女の胸を触り始める。今度は自分が楽しむばかりではなく、メイの快感を引き出させるようにしていく。
 膨らみの下の方を持ち上げ、円を描くように揉み上げる。乳房の先端には、まだ触れない。
「あっ……ふっ……」
 わずかに声を漏らし始めるメイ。何かを訴えるように、和也の方に視線を向ける。
「……どうかしたの、メイ?」
 少し意地悪く、訊いてみる。
「あ、その…………いえ、何でもないです……」
「……そう?」
 和也は笑みを浮かべ、指先でそっと、乳首をつまんでみる。
「本当はここを、触ってほしいんじゃない?」
「ひゃっ……あっ……ああんっ……」
 途端に、反応が大きくなった。既に乳首は固くなっており、感じている証拠ともいえる。
 メイの声に気を良くした和也は、片方の乳首を指でさすりながら、もう片方を口に含んでみる。実は早く舐めてみたくて仕方なかったのだ。
「あっ、ああっ」
 びくびく、とメイの身体が震える。
 和也は軽く吸いながら、舌で舐め回した。これが赤ちゃんのような感じ、なのかどうかはわからないが、何だか妙な気持ちではある。
「ああっ、あふっ……んっ……」
 もう片方の乳首も十分に吸うと、和也は唇を離した。メイの乳首は、彼の唾液ですっかり濡れてしまっている。
「メイ……どんな感じだった?」
 声は出していたが、やはり気になるので、ついつい訊いてしまう。
「はあ……はあ……。そ、その……よくわからないです……」
「え?」
 もしかして、気持ちよくなかったのだろうか。
 和也は一瞬、焦ってしまう。
「何だかくすぐったいような……痺れちゃいそうな……とろけちゃいそうな……。メイ、こんな感覚は初めてなんです……」
「あ、ああ……そういうことか」
 確かに、この感覚を初めて味わうのなら、どう表現していいのか、わからないのかもしれない。
「メイ……。その感覚はね、気持ちいいっていうことなんだよ」
「気持ちいい……ですか?」
「そう。気持ちいいんだ。ほら……ここを見てごらん」
「えっ……?」
 起き上がり、和也の指さす部分を見てみる。
「ほら、メイの下着……こんなにぐっしょりしてるよ」
「あ、そんな、嘘ですっ……」
 自分の下着が、いつの間にかこんなに濡れていることに、メイは驚き、目を見開く。
「……和也さんっ……。メイ……メイは、身体がおかしくなっちゃったんでしょうか……。こんなに、漏らしちゃうなんて……」
 メイは不安げに、涙目で訊ねた。
 知識のない彼女に、少し意地悪しすぎただろうか。
「大丈夫。メイはおかしくなんてなっていないんだ。女の子なら、これが正常の反応なんだよ」
「女の子なら……?」
「……確かにメイはサイバドールだけど、メイだって女の子なんだから。女の子は、男の子を受け入れるために、ここを濡らすんだよ」
「……そう……なんですか」
 安心したように頷くメイ。
「それじゃ……これは正常な反応なんですね」
「そうだよ」
 和也は優しく、彼女の髪を撫でて言う。
「あ、でも……和也さん。やっぱり……何だか恥ずかしいです」
「それでいいんだよ。恥ずかしがっている女の子の方が、恥ずかしがらない子より、可愛いから」
「メイも……可愛い……ですか?」
「もちろん」
 そう言って、ちゅっと軽くキスをする。
「それじゃ、そろそろ脱がすよ」
「は、はい」
 メイを寝かせ、和也はゆっくりと、パンティーをずり下ろしていく。腰から下に行くときに、透明な糸が引いていた。
「す、すごいな。こんなに……」
「は、恥ずかしいです、和也さんっ」
 メイは真っ赤になって、顔を覆ってしまう。
 しかしここまで彼女を濡らしたのは、和也自身だ。彼としては非常に嬉しい。
 下着を脱がし終えると、いよいよ性器への愛撫を始める。
 和也はメイの固く閉じている脚を優しく撫でながら、ゆっくりと開いていく。
(あ……こうなってるんだ……)
 メイのそこは愛液で濡れており、以前にUSB端子を取り付けるときに見たときとは、印象が違っていた。それにそのときは、こんなにじっくり見ることはなかったし、サイズも違った。女の子の部分をこんなに間近で観察するのは、初めてともいえる。
「か、和也さんっ。そんなに見られたら、恥ずかしいですっ……」
「でもメイだって、僕のをじっくり見たじゃないか」
「そ、それはそうですけど…………あ、あんっ」
 急に指先で秘裂を撫でられ、メイは声を上げる。
 和也は触れるか触れないか、という微妙なタッチで愛撫してきた。それが彼女には、何だかもどかしい。
「あっ……も、もっと……和也さん……」
 自然と、そんな言葉が口をついて出た。
「えっ……?」
「もっと……たくさん触ってほしいですっ……」
 恥ずかしさで一杯になりながらも、メイは懸命に言った。
「メイ……」
 少し意外だが、和也としては嬉しい反応だ。
「それじゃ……もっと触るよ」
 指先に愛液を十分にまぶしてから、膣口の周辺をなぞってみる。それから、中指を少しだけ入れてみた。
「あっ、あああっ」
 腰を震わせながら、メイは髪を振り乱し、声を上げる。和也はそのまま指を軽く前後させた後、舌で舐め上げた。
「はあぅっ……ふうっ……あんっ、ああっ……」
 大陰唇を唇で挟み、小陰唇の方を、舌で小刻みに動かしてみる。
「うあっ、あっ……か、和也さんっ……。メイ……メイ……とろけちゃいそうですっ……」
 激しい息づかいで、身体がガクガクと震えている。
「もっと感じて……メイ」
 秘裂の上の方に付いている、ぷっくりと膨らんだ突起。和也はそこを口に含むと、軽く吸ってみた。
「ひうっ、はうっ……うっ…………ふっ、ああああああっ」
 びくびくっ、とメイは突然痙攣した。同時に、太股で和也は頭を締められる。
「ふぐっ」
 顔を性器に押しつけられ、息ができなかった。
「ふぐぐぐーっ」
 慌てて頭を持ち上げると、何とか太股を外す。
「はあ……はあ……びっくりした……」
 和也は手の甲で、口に付いた愛液を拭いながら、ぐったりしているメイを見下ろす。
「……メイ……、大丈夫……?」
「はぁ……ふぁ……はあ……。メイは、大丈夫です……」
 とろんとした表情で、呟くように言うメイ。呼吸と共に、大量の汗が吹き出してくる。
(……これはもしかして)
 実際に目にするのは初めてだが、おそらく間違いないだろう。
「メイ……イッちゃったの……?」
「……メイは……どこにもいきませんよ、和也さん」
「……い、いや。そうじゃなくてね……」
 まあ、それはそれで嬉しくはあるが。
「メイ……何だか頭が真っ白になって……身体がふわふわしちゃって……」
「……それをイクっていうんだ。とっても気持ちいいってことだよ」
「そ、そうなんですか……。こんなになっちゃうなんて、何だかすごいです……」
 大分呼吸が落ち着いてきたところで、メイは和也の股間の状態に気付く。
「あっ……。ごめんなさい、和也さん。メイだけ……その、イッちゃって……」
「いいよ。次に一緒にイケればいいから」
 そう言って微笑み、和也はメイの秘裂に指を入れる。入り口付近を軽くかき回すと、くちゅくちゅ、と派手な粘液音がした。
「ああっ……か、和也さんっ……」
「……入れていいかな、メイ……」
「あっ――は、はい……」
 頬を赤らめ、彼女は小さく頷く。
 いよいよ、二人が繋がるときがきたのだ。
(め、メイの膣って、どんな感じなんだろう……)
 和也は自分のモノに手を握り、メイの入り口にあてがう。そしてたっぷりと愛液をまぶし、滑りを良くさせた。
(やっぱりフェラチオより気持ちいいのかな。でもそんなに気持ちよかったら、あっという間に射精して終わり、なんて情けないことになるかも……)
 経験がないと、色々不安である。何しろ、こうして入り口に触れているだけでも、十分に気持ちいいのだから。
「あ、あの……んんっ……。ま、まだですか……?」
 いつまでも進んでこない和也に、メイは不安を覚えた表情で見る。
「あ、ああ……ごめんごめん。でも……もう一度訊くけど、本当に僕でいいんだよね……?」
「……はい。メイは、和也さんがいいです」
「うん……わかった。それじゃ、いくよ」
 肉棒に手を添えたまま、前傾姿勢を取る和也。
「…………」
 不安なのはメイも同じだ。思わず、ぎゅっと目を閉じてしまう。
 しかし――。
 つるんっ。
「あ、あれ?」
 滑って入り口を外れてしまった。あれだけ膣口を確認したというのに。
「……?」
 入ってくると思っていたメイは、わけがわからず首を傾げる。
「あ、あの……和也さん?」
「だ、大丈夫っ。ちょっとしたお茶目だからっ。つ、次はちゃんと入れるからねっ」
 予想外の失敗に焦った和也は、必死で笑いながらごまかす。
「は、はあ……」
「じゃ、じゃあ、今度こそいくよ」
 そう言って、再び肉棒をあてがう。もう少し下に向けた方がよさそうだ。
「あっ……ま、待ってくださいっ」
「えっ?」
 身体を進めようとした瞬間、慌ててメイが止める。
「ど、どうしたの、メイ?」
 やはり怖くなったのだろうか。それはそれで仕方ないかもしれないが。
「……やめるかい?」
「い、いえ……そうじゃないんです。ただ、メイはこういうこと初めてですから、その……」
 恥ずかしそうに、和也を見上げる。
「不安を消したいので、メイと……あ、あの、キス……しながら、してくれますか……?」
「……キス、しながら……?」
「…………」
 こくん、と頷くメイ。
「そっか……」
 和也は微笑む。自分のキスで不安が消せるのなら、喜んでキスしてあげたい。
「……大好きだよ、メイ」
「和也さん……」
 二人は身体を密着させ、静かにそっと、唇を重ねた。そして――。
 ずぷぅっ……。
 和也の肉棒は、メイの膣に挿入された。
「んっ、んぅんんんんーーーっ」
 顔をしかめ、メイは必死に、和也の背中に回した手に力を込める。
(は、入った――!)
 初めての女の子の感触に、和也は感動さえ覚えた。
 温かく、そしてヌメヌメとした肉ひだが、和也のモノにからみついてくる。
(うわっ……な、何だこれ……。気持ちよすぎるっ……)
 このままでは、少し動いただけでも出てしまいそうだ。なので、しばらくこのままでいることにする。
「メイ……大丈夫かい……?」
 顔をしかめたままの彼女に、和也は心配そうに訊ねた。こぼれた涙の粒を、舌で拭い取ると、メイは目を開いた。
「……大丈夫……です。和也さん……」
 そう言って、嬉しそうに微笑む。
「メイの中に……和也さんの温かさを感じます。今、和也さんとメイは繋がっているんですよね……?」
「うん、そうだよ」
 彼女の顔を見ていると、和也の方も嬉しくなってくる。
「メイは……とっても幸せです」
「僕もだよ」
 和也はもう一度口付けし、舌をからめる。今度はメイの方もそれに応じてきた。
「んっ……あんっ……」
 ちゅぷっ……ちゅっ……。
 互いの唾液が混じり合い、音が漏れる。
「はあ……はあ……」
 名残惜しいが、和也は唇を離した。
「それじゃ……メイ。そろそろ動くよ……」
 腰をつかみ、ゆっくりと、慎重に肉棒を引いていく。それを逃すまいとするかのように、肉ひだは複雑にからみついてきた。
「ふああっ、あっ……はあっ……」
 微妙な感覚を堪えながら、彼女は自分の中から出ていく肉棒を見つめている。
「んっ」
 そして和也は一気に押し出した。
「あああんっ……あうっ……ふあ……」
 おとがいをのけ反らせ、びくびくと震えるメイ。
 和也は今度は素早く引き、ゆっくり入れていく。
「んんっ……あっ……あんっ……んんっ……」
 奥まで到達すると、メイは涙をこぼしながら、和也を抱きしめた。
「か、和也さぁん……こ、これ……これ……すごすぎますっ……。め、メイ、またおかしくなっちゃいますぅっ……」
「いいんだよ、おかしくなっても」
 しかし、和也にも余裕があるわけではない。少しでも気を抜くと、あっと言う間に射精してしまいそうだ。
「ふああっ、あっ……はんっ、んあっ……んっ、あっ……ああっ」
 和也が抽挿する度に、メイは快楽に喘ぎ、ふくよかな乳房が揺れていた。それに愛液が溢れ、くちゅくちゅ、と部屋に響いている。
「んっ、くっ――」
 悩ましいメイの姿を見ながら、夢中で腰を動かしていた和也だが、射精感がこみ上げてくると、慌てて動きを止めた。
「あ、んあっ……はあ……。ど、どうしたんですか、和也さん……?」
「……せっかくメイと結ばれたんだ。だから、まだ終わりにしたくない……」
 一旦密着していた身体を離し、和也は呼吸を整える。そして波が引いたのを感じると、メイの腰を持ち上げ、向かい合う形になる。
「あっ……か、和也さん――」
「いくよ、メイ」
 彼女の柔らかいお尻を揉みながら、和也はその体勢のまま動き始める。
「ひゃううっ……ふあっ……あっ、あああっ……」
 動く度に、メイの乳首が和也の胸に擦られていく。その感触が、和也も気持ちいい。
「メイ……」
 上下に揺すりながら、彼女にキスをする。
「んっ、んふっ、んんーっ」
 舌をからめながら、メイは喘いだ。今日はもう、何回キスをしただろうか。何度しても、まだまだ足りない。
「はあ……んっ……」
 お互いに動きを止め、キスの方に集中した。
「メイ……」
「はい……」
 唇を離すと、お互いに微笑む。だが、和也はあることを企んでいた。
 脚を伸ばすと、急に身体を後ろに倒す。
「えっ――?」
 驚くメイ。
 和也は笑みを浮かべながら、彼女に言った。
「今度は、メイが動いてみてよ」
「えっ、め、メイが動くんですかっ?」
「うん。やり方はわかるよね?」
「…………」
 メイは困ったようにうつむいてしまう。ここまで関係が進んでいても、やはり自分から動くのは恥ずかしいのだ。
「ほら、僕の身体に手を付いていいから」
「は、はい……」
 彼のお腹の辺りに手を置き、メイはゆっくりと腰を持ち上げる。
 ちゅぷっ……。
 そして脚で踏ん張りながら、徐々に降ろしていく。
 くちゅっ……。
「はううっ……。ど、どうですか、和也さん……?」
「う、うん、そんな感じだよ。段々早くしていって」
「は、はい……う、ああっ……」
 メイは快感に震えながら、少しずつ少しずつ、腰を使い始めた。
「んっ、くっ……はうっ……」
 ぷるぷると、彼女の胸が弾むように揺れる。いつまでも見ていたいような、魅力的な眺めだ。
「メイ……」
 我慢できずに、和也はその胸に手を伸ばす。
「あっ、ああっ……か、和也さんっ……」
 メイの動きを感じながら、和也は手の平一杯に、彼女の乳房の感触を楽しんだ。
(くっ……そ、そろそろ……)
 腰が痺れ、限界を感じ始めたそのとき、メイの身体が倒れてくる。
「ふあっ、ああっ……あっ……」
 荒い息づかいで、和也の胸に頭を乗せた。
「メイ……?」
「か、和也さぁん……。メイ……これ以上はもう……はあ……あっ……動けないです……」
「……そっか。ありがとう、メイ。とっても気持ちよかったよ」
 そう褒めながら、彼女の髪を優しく撫でる。
「……そうやって髪を触られるのも、メイは気持ちいいです……」
「メイの髪、好きだよ」
 一房をつまみ、口付けてみせる。
「も、もう……和也さんったら……」
 照れるメイ。
「……それじゃ、そろそろいくよ」
 彼女を抱きしめ、静かに仰向けにする。彼の肉棒は、既に限界まで膨張していた。
 右手でクリトリスをさすって刺激を与えながら、和也は最後の抽挿を始める。
「んんっ……んああっ、はあっ……ふっ、ああっ……あ、ああっ……」
 くちゅっ……ちゅっ……じゅぷっ……ちゅっ……。
 すぐに右手がぐっしょりとなった。クリトリスをいじる度に、きゅっきゅっ、と膣口が締め付けてくる。
「……す、すごくいいよ、メイっ……」
 手を離し、両手で彼女の腰を持ち上げる。
「ひあっ、ああっ、んあっ……め、メイもっ……メイもいいですっ……ふあっ……ああんっ……」
 メイの声が大きくなり、段々と抽挿の間隔も短くなっていった。
 腰もそうだが、頭の方もとろけるように痺れていく。
「んっ、あんっ、ああっ…………か、和也さんっ、和也さんっ……」
「め、メイっ……」
 もう何も考えずに、和也は腰を打ち出していた。
 熱いものが、すぐそこまで迫ってきている。
「で、出そうだっ、メイっ……」
 ちゅっ、ちゅぷっ、くちゅっ、ちゅっ!
「はああっ、んあっ、あああっ、ふあっ、あっ、あああっ……め、メイ……メイ、もうだめですぅぅっ……」
 きゅーっ、とメイの膣が、和也の肉棒を締め付けてきた。
「ぼ、僕もっ……で、出るっ!」
 どくっ! どくどくどくっ!
 限界まで堪えた精液がようやく解放され、彼女の膣内に激しく迸った。
「んああああっ! 和也さぁんっ!」
 背中をのけ反らせ、メイはビクビクと身体を痙攣させた。
「くっ、ううっ――……」
「ふああ……ああっ……」
 硬直した後、ゆっくりと、二人はそのまま重なり合った。
「はあ……はあ……はあ……はあ……」
 しばらくは口も聞けないまま、呼吸音だけが響いていた。

 やがてお互いに見つめ合うと、二人はにっこりと笑みを交わす。
「……ねえ、和也さん。やっぱりマミさんの言ってたこと……本当でした」
「え? 何が?」
「好きな人と結ばれるのは、とっても幸せなことだって、言ってたんです。嘘じゃない証拠に、こうして和也さんと結ばれることができて、メイはとっても幸せな気分なんです」
「そっか……」
 和也がメイの頬をそっと撫でると、彼女は自分から擦り寄せてきた。
「僕だってそうだよ。メイと結ばれて、とっても幸せな気分だ」
「はい……」
 と頷くメイ。
「でもメイ、少し疲れちゃいました」
 和也の胸に頭を乗せ、目を閉じた。
「まあ、確かに激しかったし……って、ちょっとメイっ。このまま寝たら、みんなに見られちゃうよっ」
「……ふにゃあ〜」
 しかし既に、彼女はまどろみの中だ。
「め、メイ〜っ」
 身体を揺するが、メイはなかなか動こうとしなかった。

「あ、あらあら……まあまあ……。こんなにうまくいくなんて、ちょっとびっくりで〜す……」
 和也の部屋の玄関前に立っている、怪しい割烹着姿の女性の姿。それはもちろんマミだった。出ていくふりをしてこっそり隙間を開け、こうしてずっとのぞき見をしていたのである。
「それにしても、二人とも初めてなのに、随分激しかったわね〜」
「……何が激しいのかしら?」
 突然後ろから聞こえる声に、マミは驚き、慌てて振り返った。
「あ、あらあら〜……ケイちゃん。いつの間に……」
 部屋の様子に夢中になっていて、気付かなかった。
 いや、ケイだけではない。家賃の集金を終えた、かすみとレナ、イカリヤもいる。
「何してるの、マミさん?」
「どうしたの?」
「ドウシタ、マダムマミー?」
 部屋の住人が全員、帰ってきていた。非常にまずい状況だ。
「あらあら……。みんな、用事はもう終わったのかしら?」
「ええ、大学の方は一息付きましたので」
「集金はレナちゃんのおかげで、順調にね。ただ、敷島さんにはまたしても逃げられたけど……まったく」
 かすみは悔しそうに拳を握りしめる。
「それより、マミさんがいるということは、一緒に買い物に行ったメイも帰ってるんでしょ? メイに牛乳もらおーっと」
「それに、そろそろ『愛のつむじ風』が始まる時間よね」
 中に入ろうとするかすみたち。
「わ、わーっ、わーっ」
 わざとらしく両手を広げ、マミが彼女たちの前に立ちふさがる。
「……マミさん?」
「何してるの?」
「……まさか」
 きらん、とケイの目が輝く。
「さては、中に何か隠してるわね、マミさん?」
「そ、そんなことありませ〜ん。和也ちゃんとメイちゃんが、中でラブラブだなんてことは、絶対にありませ〜ん」
 しーん……。
 と、沈黙。
「……ラブラブ?」
「……らぶらぶ?」
「ラブラブと言ったわね、確かに」
「ラブラブ、ッテナンダー?」
 みんなの目が怖かった。
「あ、あらあら〜……私、そんなこと言ったかしら〜……」
 しかし今さら、言い訳は通用しない。
 ダッ、とマミを押しのけ、全員で一斉に中に入る。
「和也くんっ」
「和也ーっ」
「えっ……?」
 突然押し入ってきた彼女たちに、顔を上げる和也。彼はまだ、裸でメイと抱き合ったままだった。
「なっ――!」
 お互いに、呆然とし、全員硬直する。
「か、か、か、和也くんっ……どういうことっ……!」
 彼に向けるかすみの指先が、ぷるぷると震えていた。
「……男女が裸で抱き合っている……。推測できる事柄は一つだけ……。……不潔だわ……」
 ぼそぼそと呟くケイ。
「……え? 何? 何してるの?」
 何だか理解できず、レナは首を傾げる。
「あ、あの、えーと、その、これはっ……」
 必死に言い訳を考えようとする和也だが、何も浮かぶはずがなかった。メイとはまだ繋がった状態のままなのだから、これで言い逃れができるはずがない。
 しかも。
「か〜ずやさ〜ん……」
 寝ぼけたメイが、すりすりと頬を擦り寄せて甘えてくる。
「和也さんと結ばれて〜メイは幸せですぅ〜……」
「め、メイっ……」
 青ざめる和也。
 こんなときに何てことを言うのか。
「決定的ね……」
 眼鏡をずり上げ、ケイがため息を付く。
「うっ、ううっ、う、うう……」
 うつむき、うなり声を上げるかすみ。彼女の感情は、驚きから怒り、そして悲しみへと変化していった。
「か、和也くんの……」
 涙を浮かべながら、震える声で言う。
「和也くんの、バカーーーっ!」
 ダッ、と玄関に向かって走り出した。
「か、かすみちゃんっ」
 慌てて手を伸ばすが、彼女の姿は消えてしまう。
「あ……」
 何となく、罪悪感の和也。
(な、何よ何よ! 和也くんたら、ボクが出かけている間に、メイとあんな……あんなことしてたなんてっ!)
 涙を拭いながら、かすみは階段を降りようとした。が、そのとき。
「ねえねえ、和也っ。この白いの何? 牛乳なの?」
 場違いなレナの明るい声が聞こえてきた。
「…………」
 ピタリ、と止まるかすみ。
「ち、違うよレナちゃんっ。これは牛乳なんかじゃなくて……」
「……精液ね。男性器が刺激を受け、快楽が高まると出てくるのよ」
「何を解説してるんですか、ケイさんっ」
「精液ーっ。レナちゃん、出るとこ見たいーっ」
「オレモ、ミタイー」
「ちょっとレナちゃん、ダメだって。そんな、触っちゃ……」
「あー、ヌルヌルしてるー」
「だ、ダメだって。け、ケイさん、止めてくださいっ」
「……メイちゃんとしたのはもう仕方ないけど。でもこれから和也くんが全員とすれば、公平になるわよね」
「公平ってどういうことですかーっ。って、うわ、服を脱がないでくださいっ」
「うふふふ……」
「レナちゃんもするー」
「オレモー」
「うわああああっ」
 響く和也の絶叫。
「…………」
 ぷるぷるぷるぷる。
 かすみの拳が、激しく震えていた。
「まったく……和也くんったら……和也くんったら……」
 ふうっ……。
 ため息と共に、彼女は顔を上げる。
「ま、しょーがないか」
 身体が結ばれたからといって、それが終着点というわけではない。これから自分に振り向かせることも、可能ではあるのだ。
「和也くん、優柔不断な所あるし」
 メイの方から迫ったとも思えないが、とりあえずは詳しく話を聞いてからにしよう。そう思うかすみだった。
「まあ、今はとにかく――」
 再び和也の部屋へと、彼女は戻っていく。
「こらーっ、レナちゃんっ。ケイさんもっ、やめなさーいっ」

 ちなみに。
 そもそもの騒ぎを作ったマミはどこに行ったかというと――。
 かすみ荘の屋根の上にいた。
「あらあら〜。いつになったら部屋に戻れるのかしらね〜」
 今戻ったら、質問責めに会うのは目に見えている。
 ほとぼりが冷めるまで、ここにいるしかなかった。
「和也ちゃん……それにメイちゃん……」
 目を閉じ、下から聞こえてくる声を聞きながら、マミは目を閉じる。
「確かに二人は、私がきっかけで結ばれたのかもしれないけど……その後どう進展していくのかは、あなたたち次第なのよ」
 静かな風を感じながら、そっと呟く。
「だから――頑張ってね」


   おわり