HAND MAID メイ 「メイっぱい……」
「う〜ん……」
和也は悩んでいた。
四六時中可愛い女の子たちに囲まれているという、誰もが羨むこの状況で、何を悩むことがあるのかと、他人が聞いたら言うかもしれない。
しかし。しかしである。
四六時中囲まれているからこそ、起きる悩みというのもあるのだ。ましてや、それが健康的な若い男子なら。
そう。”オナニー”ができないのである。
メイはいつも側にべったりだし、ケイとマミはいつの間にか部屋に住み着き、かすみやレナを始め、南原やサラまで、とにかく突然部屋に入ってくる連中が多すぎるのだ。イカリヤも誰かに言わないとも限らないので、見られるのはまずい。
いつも風呂場や大学のトイレで、こっそりと処理をするという情けない始末。
だが――そんな和也に、チャンスがやってきた。
ケイは大学に行き、マミもお出かけ。メイ、かすみ、レナ、イカリヤは一緒に買い物に行き、しばらく帰ってこない。本当は和也も誘われたのだが、用事があるからと一旦出かけ、頃合いを見て部屋に戻ってきたのだ。
「久々に一人きり……。この機会を逃すわけにはいかないっ」
きらーん、と彼の眼鏡が怪しく光る。そしてリュックから取り出したのは、レンタルしてきたアダルトDVD。
「メイたちに見付かるとまずいから、早く済ませて早く返さないと……」
ティッシュを用意し、さっそくパソコンにディスクを差し込む。
「しかし、周りを女の子たちに囲まれているというのに、こっそりこんなことしている俺って……すごく情けないかも……」
とほほ、とため息をつく。
『あっ、ああ〜んっ』
そうこうしているうちに、さっそく始まった。
「おおっ、いきなりエッチシーンからとはっ。ではさっそく……」
ズボンとパンツを脱ぎ、自分のモノを握る。そして――。
ガチャリ。
玄関のドアが開いた。
「え……?」
凍り付いた表情のまま、和也は後ろを振り返る。
「あらあら〜?」
と、そこにはいつも通りのとぼけた顔をしたマミが立っていた。
「まっ、ままっ、マミさんっ! どうしてここに!っ」
しかも玄関には鍵をかけておいたはずである。
「用事が済んだので帰ってきたんですけど〜鍵がかかっていたので開けてしまいました〜」
悪びれた様子もなく、笑顔で言う。
「あ、開けてしまいました〜って、……はっ!」
ふと我に返り、自分が下半身丸だしだということに気付く。
慌てて、DVDを止め、ズボンを履く。
「あらあら〜和也ちゃんってば……」
真っ赤になっている彼に、マミは意味深な笑みを浮かべて、囁く。
「……たまっているのね?」
「そっ、それはっ、えーとっ、そのっ」
「いいのよ、和也ちゃん。気付かなかった私のせいね。これは責任を取らなくては……」
「せ、責任って……ええっ? ま、まさか!」
まさかマミさんが性欲の処理を?
などという想像が一瞬よぎったが、全然違った。
「このマミさんに、どーんと任せなさ〜い。明日になれば、万事解決で〜す」
自信満々に胸を叩いてみせるマミ。
「あ、明日?」
「そう。だから和也ちゃん、今日は我慢して、明日まで待ってね」
「は、はあ……」
何故明日なのだろうか。もっとも、こんな状況ではもうオナニーどころではない。
「メイちゃんたち、もうすぐ戻ってきま〜す。そのDVDは返してきた方がいいですよ〜」
「ええっ、もう? まだ少ししか観てないのに……」
しかしまさか、メイたちと一緒にこれを観るわけにもいかない。仕方なく、和也は返しにいくことにした。
「あ、あの、マミさん。くれぐれもこのことは内緒に……」
「わかってま〜す」
にっこり笑顔で、マミは和也を送り出した。
「さてと……うふふふ」
溢れる笑みを押さえながら、マミはメイたちの帰りを待つのだった。 そして何事もなく、その日は終わりを迎え、やがて夜が明ける。
(ああ……何だろう……)
まどろみの中、和也は布団の中で心地よさにひたっていた。
(この暖かくて……柔らかい……気持ちいいのは一体……)
ふと、妙になまめかしい感触に、違和感を覚える。
「……えっ? こ、これは……?」
はっと目が覚めると、布団がやけに盛り上がっているのがわかった。慌てて布団をめくると、そこには――。
「めっ、めっ、メイっ!」
ズボンをずり下げ、いきり立った和也のモノに舌を這わせるメイがいたのである。
「か、和也さんっ、しーっ。みんな起きちゃいますっ」
メイが慌てて彼の口に手を当てる。この部屋には、他にマミとケイ、さらに昨日そのままここで寝てしまった、かすみとレナもいるのだ。
こくこく、と和也が頷くので、メイは手を離す。そしてもう一度布団をかけると、和也は真っ赤な顔で訊ねた。
「め、メイっ。一体何してるんだよっ?」
「和也さんに、朝のご奉仕です」
「あ、朝のご奉仕〜?」
「マミさんから聞きました。和也さんは、その……ここが大きくなって悩んでいるって。だから私、小さくするやり方を聞いて、こうして……」
「ま、マミさんが……?」
ちらりと見ると、近くの布団で何事もないかのように、ぐっすり眠っている。明日まで待てと言うのは、こういうことだったらしい。
「い、いいんだよ、メイ。君はこんなことしなくても……」
やっぱりこういうのはよくないだろう。第一、みんなが側にいるので、いつ見付からないかと気が気でない。
「いいえ。私、マミさんに聞きました。朝のご奉仕をするのはメイドさんであるメイの役目だって。それに、私も大好きな和也さんのお役に立ちたいんですっ」
「め、メイ……」
マミのいい加減な教えには呆れるが、ここまで言われて感激しないはずがない。
「そ、それとも……」
メイは悲しそうに視線を下げる。
「メイはロボットだから、迷惑なんでしょうか……?」
「そ、そんなことないっ。そんなことないよ、メイっ。僕もメイのこと大好きだよ」
「ほ、本当ですか、和也さん?」
メイの表情が一転して、明るいものになる。
「ああ。それが証拠に、ほら……」
と和也は指をさす。そこには、朝起ちとメイに触られたせいで、痛い程に勃起している和也の肉棒があった。
「あっ……」
顔を真っ赤にするメイ。
「ご奉仕、してくれるかい?」
「はいっ。メイに任せてください」
彼女は笑顔でそっと包むように肉棒を握ると、静かに口づけた。
「うっ……」
それだけだというのに、しびれるような快感が、和也の全身を駆け巡る。
「和也さんのここ……とっても熱いです……」
ちゅっちゅっ。
亀頭から竿を渡り、袋の方へとキスを移動していく。
「うあ……」
思わず声を上げる和也。
「……気持ちいいですか、和也さん?」
「ああ……とってもいいよ、メイ……」
「うふふっ……それじゃ、もっともっと頑張りますね……」
メイは右手で和也のモノを軽くさすりながら、亀頭に唇をあて、ふにふにと動かす。そして撫でるように舌を動かした。
「ううっ……」
和也は奥歯を噛みしめ、快感に耐える。すぐにでも出てしまいそうだ。
「んっ……んっ……はあっ……」
唇ではさむようにしながら、メイは亀頭のカリの部分に舌を這わせる。そして――。
「んっ……」
ちゅぷっ……。
亀頭の先に唇があてられ、和也の肉棒は、ゆっくりと呑み込まれていった。メイのとろとろの唾液が潤滑剤となり、スムーズに上下に動き始める。
「んっ……んふっ……ふっ……んっ……」
くちゅっ……ちゅっ……ちゅっ……ずちゅっ……。
いやらしい粘着音がメイの口から漏れていた。彼女の口の中はとても温かく、舐められるのとはまた違った快感をもたらしてくる。
「うああっ……メイっ……!」
あまりの気持ちよさに、思わず腰が浮いてしまう。とろけてしまいそうだ。
直接の感触もそうだが、自分のモノがメイの口の中を上下している様を見るのも、また刺激的な光景だった。さらにメイは、唇をすぼめて吸い上げるようにし、動きにも緩急を付ける。
「くっ……で、出そうだよっ……」
「んんっ……んっ……」
和也の言葉にも構わず、メイは動きを続ける。もう終わりが近いことを悟ったのか、手を添えてしごきながら、激しく頭を揺すり始める。
「だ、出して、和也さん。このまま、メイの口の中にっ……」
ちゅぷっ……くちゅっ……ちゅっ……ちゅくっ……!
和也の肉棒が、メイの口の中ですられていく。
「だ、だめだっ、メイっ。出るっ……!」
瞬間、腰をすぼめ、彼女の頭を押さえる。
「んっ、んんーーーっ」
どぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅぴゅっ!
和也の熱い液体が奔流となって、メイの口の中に何度も放たれた。
「め、メイっ……」
「んっ……ふっ……うっ……うん……」
ゆっくりと呼吸しながら、メイは最後の一滴も残すまいと、尿道口まで吸い上げると、ようやく和也のモノから唇を離す。そして顔を上げて微笑むと、
こくん。
と口に含んだものを呑み込んだ。
「あっ……め、メイ……」
「呑んじゃいました」
てへ、と小さく舌を出して照れ笑いをする。
「……メイのおクチは気持ちよかったですか、和也さん?」
「う、うんっ。最高だったよ、メイっ」
愛おしさがこみ上げてきて、和也はメイを抱きしめる。
「か、和也さん……」
メイも腕を回し、抱きしめ返す。
「……それにしても、メイ。フェラチオの仕方なんて、どこで覚えたの? まさか、それもマミさんに?」
「は、はい。昨日、夜中にこっそりバナナで練習したんです」
「ば、バナナで……ね。ったく、マミさんは……」
「うふふ。でもこれからは毎日、メイがしてあげますからね。和也さんのために、メイっぱい、頑張りますから」
そう言って、小さくガッツポーズをする。
「ありがとう、メイ……」
「和也さん……」
二人は見つめ合った。そして段々と唇が近付いて――。
ガバッ。
いきなり布団をはぎ取られた。
「え?」
「は?」
状況把握できずに、周囲を見回す。
「朝から何してんのよ! いい加減にしてよね、二人とも!」
「抜け駆けはいけないわよ、メイちゃん」
「あらあら〜まあまあ〜」
レナ、ケイ、マミの三人が、抱き合う二人を見下ろしていた。
ピキーン。
凍り付く和也とメイ。
「ま、まま、まさか……気付いてた……?」
顔面蒼白になりながら、和也は恐る恐る訊ねる。
「うん」
と三人は頷いた。
「そ、そんなーーーっ」
絶叫する和也。しかしあれだけ声や音を立てていれば、当然といえば当然である。
「う〜っ……ずるいよ和也。メイとばっかり仲良くしてっ」
うるんだ瞳でレナが見つめてくる。
「うっ……れ、レナちゃん……」
さすがに一瞬、罪悪感がよぎる。しかし――。
「だったら、レナちゃんだってやるんだからっ」
言うが早いか、彼女は和也の肉棒に飛び付いてきた。
「何いいーーーっ」
「私だって負けないわっ。私の華麗なるテクニックで、和也くんを虜にしてあげるっ」
ケイまで一緒になって手を伸ばしてくる。
「ちょ、ちょっとっ。二人ともっ」
「だ、だめですっ。それはメイのお役目なんですぅっ」
我に返ったメイが、二人の手を払いのけようと、股間に飛び込んだ。
「邪魔しないで、メイっ」
「あなたはもうやったからいいじゃないっ」
「だめですだめですーーーっ」
和也の股間の上で、三人が争う。
「あ、あわわわ……ま、マミさんっ。見てないで何とかしてくださいよっ」
一人離れて見ているマミに向かって、和也は呼びかける。
「あらあら〜。そうねぇ〜……それじゃあ、私も一緒に混ざる、ということで……」
「解決になってませーーーんっ」
どたばたどたばた。
四人のサイバドールたちが、和也の肉棒を巡り争いを続ける。
「う、うぅ〜ん……もう、何よ。うるさいわね……」
騒音でようやく目を覚ましたかすみが、目をこすりながら起き上がった。
「ゆっくり寝られやしな…………いいっ?」
部屋の状況を見て、かすみは目を見開き愕然となった。
「……あ」
和也とかすみ、二人の目が合う。
「か〜ず〜や〜く〜ん〜っ」
ごごごごごっ。
かすみの身体から、怒りのオーラが立ち上がった。
「ち、違うんだよ、かすみちゃんっ。いや、本当に……」
必死で言い訳する和也だが、今のかすみは聞く耳など持ってはいない。
「最っ低っ! 女の子四人も相手に乱交するなんてっ! しかもそばであたしが寝てるっていうのにっ!」
「違うんだって。ご、誤解なんだよっ」
しかし股間に群がるメイたちの姿を見ては、まるで説得力がなかった。
「和也くんのバカーーーっ!」
「違うんだあああーーーっ!」
二人の叫びがこだまする。
「あらあら〜。だったら……」
ぽん、といつの間に来たのか、マミがかすみの肩を抱くようにして叩く。
「かすみちゃんも一緒に……ね?」
「…………えっ?」
呆然と振り向くかすみ。そしてその言葉を理解すると、
「ええええっ!」
思わず絶叫していた。
それから――。
かすみを含め、サイバドールたちは、和也の朝起ちを巡り、バトルを繰り広げるようになったという……。羨ましいような、恐ろしいような。
「か、身体がもたない……」
おわり。
|