TALK001
原始の呼び声

2000年11月23日脱稿
まるで別作品のような話でしたが、以外と注目されていない点があります。



「トランスフォーマー2010」第26話「原始の呼び声」は ファンの間では非常に有名な話であります。
当時はライバル番組「マシンロボ・クロノスの大逆襲」を製作していて、 後に「ビーストウォーズU」を制作する葦プロダクションが作画を担当しました。 そして、その話の作画といえば、’80年代のアニメ雑誌を中心にあった 「設定画とはまるで違うが、格好良ければOK」 といった風潮のもとに作られた書き下ろしイラストをそのまま動かしたようなモノでした。

さて、どのような特徴があるのかいくつか例をあげておきます。

A.身体にメリハリがついている
人間の身体は、筋肉が太くなっている関節と関節の間は盛り上がり、 筋肉が細くなっている関節のそばはくびれています。
トランスフォーマーの身体は、モーターやシリンダーといった機械で体を動かすので、 必ずしも人間のような凹凸は必要ではありません。 むしろ、変形時に手足を引っ込めずらいので邪魔になります。 ところが、この話のトランスフォーマー達は、 ボディービルダーにペインティングをしたかのような人間に近い体型をしています。
後半、合体兵士プレダキングの戦闘シーンにおいて、その傾向ははっきりとしています。

B.書き込みが非常に細かい
セル画アニメにおいて、時間の関係により線の数は設定画よりも減らされるのが常識であります。 しかし、この話だけは設定画にはない多くの線を使って描かれています。
ガルバトロンがアニマトロン部隊に司令を出すシーンがあり、胸からマイクがでてきます。 普段の話なら身体のどこかに穴がと開いて、中からマイクをつけた棒が伸びてくるという描写ですが、 今回はマイクを先端につけた複数の関節からなるアームが直線になるように展開されていきます。
他にもいろいろな特徴がありますが、これが本題というわけではないので止めておきます。

これら凄い作画の影に隠れていますが、興味深い点が多数あります。 しかも、その一部は後のTFシリーズに繋がっていきます。

1.謎のカセットロン
元プリマクロンの助手・オラクルの呼びかけにより、 野獣系トランスフォーマーは次々と戦線を離れていきました。 サウンドウェーブの体内に収まっていたカセットロンもその例外ではありません。
野獣系のカセットロンといえば、コンドル、バズソー、ジャガー、ラットバットが有名です。 しかし、実際に出てきたのはジャガー、ラットバット、そして恐竜型のロボットです。 一体はティラノサウルス型、もう一体はステゴサウルス型です。 各種TF本を見てもこの二体について書かれているものはありません。一体何者でしょうか?

2.マトリクス
オラクルは野獣戦士達にプリマクロンのことを話しました。 その中で、プリマクロンがユニクロンを製作し、反抗されたことも語られました。
そのときの画面に、謎のシーンがありました。 ユニクロンによって破壊されたプリマクロンの研究室から、 サイバトロンのリーダーの証・マトリクスが宇宙の彼方にゆっくりと飛び去っていったのです。
「マトリクスの創造主」としてプリマクロンが再登場する予定だったのでしょうか?

3.ドラゴンVS巨大メカ恐竜
これはズバリ「ドラゴンの姿になったトルネドロンとダイナザウラーの戦い」のことであります。 結果ですが、巨大メカ恐竜・ダイナザウラーがエネルギーを吸い取られて敗れます。
これとよく似たシーンがずっと後に作られた 「ビーストウォーズU」第30話「ギガストームの裏切り」にありました。
ギガストームはガルバトロン(「2010」の同名キャラとは別人) を暗殺しようとしますが失敗しました。 そのことがばれたギガストームはついにガルバトロンと直接対決に至ります。
ギガストームは巨大メカ恐竜に変形します。しかも、玩具自体がダイナザウラーの改修作です。 一方、ガルバトロンはドラゴンに変形します。 その結果ですが、巨大メカ恐竜・ギガストームが敗れました。
偶然の一致でしょうが、ここまで似ていると 「ひょっとしたら脚本家(大橋志吉氏)は『原始の呼び声』を見たのでは?」と思ってしまいます。

4.潰されたグリムロック
少し前にも書きましたが、ダイナザウラーはエネルギーを吸い取られてしまい、 ガス欠の巨体はバランスを崩して倒れました。 そのとき、グリムロックは逃げ遅れてダイナザウラーの下敷きになりました。
なんと、彼が下敷きにされたのはこれだけではありませんでした。
’89年〜’90年にかけてカバヤ食品がデフォルメキャラ食玩を発売していました。 それに付属していた漫画の一つにおいて、ダイナザウラーより大きいトランスフォーマー、 フォートレスマキシマスとメガザラッグが対決する話がありました。 なんと、そこにおいてグリムロックはどちらかに踏みつぶされていました。 (台詞のみで片付けられたのでどちらが踏んだのかは不明)
この漫画を書かれた吉岡英嗣氏は昔からTF玩具のパッケージイラストを描かれているので、 「原始の呼び声」を見たうえで描かれたのかもしれません。

「原始の呼び声」って、実際に見るまで「絵がいいだけの話」と思っていましたが、 本当は多くの点で凄かったんですね。 「百聞は一見にしかず」といいますけど、あらためて痛感した次第であります。



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