オトナの小旅行 秩父編



KAZ 2006年8月23日





 先日ひょんなことから東京へ向かうこととなり、その折にとも様から「秩父で蕎麦でもいかがですか」とお誘いをいただき、他にTAKA様・さいたま市民@西浦和様もご同行いただきながら「オトナの小旅行」を気取ってみました。その顛末などを・・・。

 秩父へ入るルートを色々と見当した結果、池袋から直行できる西武線経由での秩父入りとなり、池袋8:36発の快速急行に乗車。4000系のゆったりしたボックスシートは、小グループでの旅行には最適です。道中は沿線の様子や歴史的経緯などをさいたま市民@西浦和様がご説明下さるなど、なんとも贅沢な車窓見学です。そんなこんなで気が付けば飯能を過ぎ秩父線区間に入り、思いのほか急峻な山岳路線に驚きながら秩父盆地へ突入します。列車は分割編成で、私たちは敢えて寄居編成に乗り、名前の通り無骨なイメージの武甲山を望みながら連絡線を通って秩父鉄道の秩父駅へ。

西武線と秩父鉄道を結ぶ連絡線
 ・左築堤上−西武秩父駅
 ・中央軌道−連絡線
 ・右側軌道−秩父鉄道本線
武甲山をバックに秩父鉄道秩父駅に停車中の西武4000系
(直通寄居行)

 秩父駅では駅構内の観光案内所で蕎麦店の情報などを仕入れ、簡単に市街地を散策します。市内の様子は小規模ながらも思っていた以上に「都市」然としています。国道299号線を軸にして秩父線の駅や大型小売店(キンカ堂)のある宮側町から矢尾百貨店のある仲町地区が都心機能を有するエリアのようで、宮側町内は沿道の整備も進められており、小規模都市ながら色々と手が入っています。矢尾百貨店も小規模ながら品はそれなりに百貨店らしく、友の会サロンがあるということは外商も機能しているようで、単なる観光都市ではなく「現役の地域拠点」としての一面を見せています。
宮側町の整備された市街地
(電線の地中化・歩道の整備など)
未整備ながら市街地然とした様子
(本町から仲町・矢尾百貨店方面を望む)
歴史的建造物を活かした整備
(本町まちかどギャラリー)
観光客への巧みな演出
(西武秩父駅構内仲見世通り)

 とはいえ観光客の来訪も強く意識しており、歴史的建造物を保存・整備していたり新規建造物も歴史的景観を反映したファサードにしているものもあり、「まちづくり」を強く意識している様子が窺えます。
 仲町からは市街地を外れて秩父線の踏切を渡れば市街地外縁となり、バイパス道路や市役所などが立地する様子は典型的な地方都市といった印象ですが、既存市街地との隔絶といった状態ではなく、近くにある西武秩父駅の存在とあわせて市街地への新しい「ゲート」として機能している様子。
 その西武秩父駅には観光客の来訪を強く意識した「仲見世通り」が整備されており、地元の特産品や特急列車の車内持ち込みを意識した各種雑貨などが並び、観光気分を盛り上げてくれます。露店の賑わいをもイメージさせるモールを歩けば、大きな氷桶に入れられた地酒などもあり、「オトナ連中」の心を大きく揺さぶります(笑)。この演出を見ると、同じく観光案内所や物産店があるとは言え「前」時代的な秩父鉄道駅のそれは霞んでしまいます。

 



 仲見世通りで暫しの休息を取り、市役所の脇を抜けて御花畑駅から改めて秩父線で秩父駅へ向かい、ここでSL急行「パレオエキスプレス」と対面します。列車は団体客が多いらしく、ホームは列車から降りてSLを撮影する客で賑わっており、SLの威力を再認識しました。使用されている機関車もC58なので迫力もあり、SLの構造もよく見えることから普段あまりSLに興味のない私でも、ついつい見とれてしまいました。

秩父駅に停車中のパレオEXP. 撮影する客層はファミリーが中心

 SLも三峰口へ走り去り、時刻もちょうど昼時。ここで本来ならメインイベントであった「蕎麦」を食すべく、駅近くの蕎麦店で美味しい蕎麦をいただき、今度は宮側町を縦断して秩父鉄道の駅へ向かいます。途中の古い店舗兼屋敷には「武甲正宗」の暖簾が下がり、オトナの目は釘付け(笑)。ここでもうひとつのメインイベントである「地酒」を満喫すべく店内へ。風情ある店内で酒を物色&試飲、なかなかに美味しい酒でして、ここでオトナの虫がウズウズと騒ぎ出し、4人で協議の結果、配送用の発泡スチロールケースを使った「特製保冷ケース」を仕立てて、冷酒を買い込みます。駅近くのコンビニでロックアイスを買い足し、改めて秩父線秩父駅から三峰口へ。旧JR101系使用の列車でしたので、敢えて中間の非冷房車に乗車し、往年のゲタ電を想起しつつ緑深い車窓を楽しみます。三峰口では駅近辺を少々散策し、列車の時間を待ちます。

 時間を見計らい駅へ戻れば、旧国鉄165系を改造した急行車がホームに据え付けられています。窓口にて硬券(懐かしい・・・)の急行券を求め、いそいそと車内へ。落ち着いたところでオトナ4人組は準備にとりかかり、「特製保冷ケース」をご開帳。ひんやり冷えた日本酒を窓脇のテーブルに並べつつ、「急行列車」の旅をスタートさせます。車内は国鉄時代と変わらない雰囲気、乗客も適度な乗車率、車窓は山深い渓谷〜荒々しい武甲山〜川遊びが楽しげな荒川〜地域産業を物語るセメント工場、そして広々とした田園へと移ろい、適度なスピード感を維持しながらで進む列車は、往年の急行列車を偲ぶには最高の雰囲気。有料列車なので近距離の日常流動とは切り離された車内は安心して「旅行者気分」を味わうことができ、旨い冷酒を呷りながら歓談を楽しむ「心豊かな時間」を過ごせました。そんなこんなでふと気がつけばもう羽生に到着。ホーム隣には101系も停まっており、急行列車の旅を締めくくるには最高の演出でした。

旧165系の急行「秩父路」 テーブルに酒肴を並べ・・・

 最近の鉄道は、快適かつ合理的な設備を持ち、スピーディな移動を実現させた「輸送機関」として活躍していますが、今回の旅ではとかく批判を浴びがちな旧来型の設備とも言える「ボックスシート」で「快適」かつ「豊か」な時間を過ごすことができた小旅行(笑旅行?)でした。特に「秩父路」でのひとときは、楽しいだけでなく「鉄道輸送」の形態を改めて考えさせられるものでもありました。僅か「200円」の急行料金ですが、大きな意味のある「200円」でした。


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