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特集 「ボイルス・タウンの狼男」(竹沢タカ子)

     

左から単行本第1巻、第2巻表紙(ともに新書館 WINGS COMICS絶版)、 WINGS誌掲載時扉絵(第3部PART7)。


「ボイルス・タウンの狼男」ってなに?
「ボイルス・タウンの狼男」ってどんな話?
雑記:「ボイルス・タウンの狼男」を知っていますか
「ボイルス・タウンの狼男」誌上掲載リスト
竹沢タカ子の単行本
竹沢タカ子作品リスト

特別公開「ボイルス・タウンの狼男 essence」(020822 UPDATE)
(「ボイルス・タウンの狼男 essence」は、「ボイルス・タウンの狼男」単行本未収録の第3部から原稿の一部をWeb公開用にリメイクしたものです。本作の著作権はSprucesoul氏にあり、作者のご好意により本サイトで公開させていただくものです。転載はご遠慮ください。)

(本ページ制作にあたり情報提供・ご協力に感謝します>kazari様、NON21様)


「ボイルス・タウンの狼男」ってなに?

マンガ雑誌WINGS(新書館)に、82年の創刊2号から86年11月号まで連載されたSFマンガ。単行本は2巻まで出たが現在は絶版。2巻の冒頭で作者が「第3巻(完結)をお楽しみにね。これを普通のSFと思ってたらあんた目をむくぜっ!!」 とコメントしているにもかかわらず、第3巻は出版されなかった。第2部終盤から最終回までの238P分が、未収録のまま埋もれている。

科学とオカルト、脳と意識へのユニークかつ刺激的な視点が秀逸。登場するSF的アイデア・小道具の数々は、日頃当たり前に受け入れている常識をさらりとすり抜けていく悪戯っぽさと怖さに満ちている。SF的センス・オブ・ワンダーの魅力とともに、作品終盤において既存の価値観を破壊しながら物語が暴走していくクライマックスが、その奔放なマンガ表現とあわせて大きな衝撃であった。問題作にして幻の傑作SFマンガである。

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「ボイルス・タウンの狼男」ってどんな話?

あらすじタイプA:
ノーイエス星の学術調査団に参加していたB工科大生のキトウが、故郷のボイルス・タウンに帰ってきた。その日から、街に怪物がたびたび出現するようになる。口から劇薬のアルカリを吐く、狼に似たその怪物の出現時刻は、キトウが意識を失っている時とぴったり一致していた。寮の友人でB工科大生のエド、ロブたちは狼男キトウの行方と謎を追うが、ノーイエス星を所有する巨大企業コロンバインもまた、狼男に異常な執着を見せるのだった。事件の背後に未知のテクノロジーの存在を確信したエドたちはノーイエス星へ向かう。
「おい これ以上の深入りは… もう死にすぎてる…!!」
「だからこそ!!」
そして、ノーイエス星で彼らを迎えたのは、巨大な脳型コンピュータに同調した社会だった…。

あらすじタイプB:
養子にもらわれてボイルス・タウンにやってきた少女メイシー。しかし、ほどなく交通事故でメイシーは死んだ。だが、それは計画された事故だった。やがていとこのB工科大生パーシーは、生体脳を機械に繋ぐ研究をしていた学生の部屋で、脳だけで生き続けるメイシーと再開する……。宇宙基地セデンの独立コロニー、ロフト区へ身を寄せるパーシーとメイシーだが、ノーイエス星での集団洗脳現象の影響は地球やロフトにもあらわれ始めていた。洗脳の真偽を疑い迷う者、洗脳を恐れて外界の情報を遮断する者、そして「流行」の黒服に身を包む者…。
「脳だけの… 意識だけのメイシーの意識が変化したら… それはメイシー!?」
パーシーはメイシーの治療のために大脳生理の専門家クインシーのもとを訪れるが、彼女もまたノーイエス星帰りで黒服を着ていた…。

(単行本1巻から大幅にはしょって紹介しました。)

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雑記:「ボイルス・タウンの狼男」を知っていますか
(または バックナンバー補完完遂記念企画)(または 思い出ばなし)

「ボイルス・タウンの狼男」は、佳作であり、問題作であり、そして不遇の作品である。

僕が最初にこの作品と出会ったのは、マンガ雑誌WINGS(新書館)1986年7月号であった。この号の巻末近くに掲載されていたのが「ボイルス・タウンの狼男」(竹沢タカ子)第3部PART8であった。 当時中学3年生。14歳の初夏、ふと目にとまったこの作品は、僕に衝撃を与え、虜にした。それまでのストーリーは全く知らなかったが関係無かった。

人間の脳はね 入力(キオク)はできても消去(けす)のはブキヨーなんだ。
わかる?
今まであった物が突然なくなったりすると「ない」ことが理解できなくて、仕方なく「変化して「ある」」と思いこんで安心するんだ。「ない」ことが脳には理解しにくい、それだけさ。「ないんだ」

どれをとってどれをガマンするか、そんな小さな主観の違いに夢中でいさかいして、
金も価値も名誉も成功も、
人間がでっちあげして、人間自身を洗脳(しばりつけ)して。
何かを信じてがまんするし、何かのこじつけを信じて苦しむのさ、人は。
その上、がまんしている自分は正しいと思いたくて、不当(しつれい)に相手を否定する。人類の歴史は「失礼の歴史」だよ。

みんな自分で自分を洗脳して、それで自分で勝手に苦しんできたんだ
その歴史(無明)の壮大さったら・・・!
------[第3部PART8より]

読んでいて、一貫したストーリーがあるのかすらわからなかった。
ことばはフクダシの中にとどまらず、写植で、手書き文字でページ中にまき散らされていた。頻出するダブルミーニングのルビ(「死後のみかえり(ごほうび)を期待して生き(がまんす)る?」)。コマ割りは段組みを無視して、枠線も途切れて消え去る。見開き一面に様々なイメージ画像が飛び交う。 今だから余裕を持ってあれこれ考えることもできるが、当時はとにかく「なんかすげえぞ」と思った。そして次号を心待ちにすることになった。
物語(?)はその後も加速・暴走を続けていった。登場する多くの人物やコンピュータの思考がないまぜになって、崩れていく価値が苦悩を呼ぶ。

日常(そまったふり)を演じて遊びましょう
自覚(コントロール)された無明(おろかさ)
いつやめてもいいただのゲーム(あそび)
忘れた(マジにとった)らおしまいよ!
------[第3部PART9より]
だって本当にわからない もう善悪も正否もわからない
日常の出来事ならその場(ぶんか)の善悪(モラル)に従えばすむけれど、
非日常(こんな)・・!!行動でき(あるけ)ない!!
------[第3部PART10より]
「誰がことの真相を知ることになるんだろう」
「もういい もう作り話(こう見ろ)はたくさんだ!!」「Enough tales!」
------[最終回より]

もとよりストーリーを知らないので勢いだけにのっかって読み進んだ。
作品は1986年10月号で最終回を迎える。地球に降りようとしていた巨大コンピュータは破壊された。しかし、それはただの「お話しの区切り」でしかない。結局ラストの数回しか読めず伏線やキャラや台詞の意味が理解できない不満を超えて、いいようのない快感と衝撃が残された。
 
単行本は地元の書店にはなかった。
そして僕は古本屋で掲載誌WINGSのバックナンバーをたまたま見つけると買ってみたりした。日常生活の合間に少しづつ(ほんとに少しづつ)揃っていく物語の断片は作品全体に深みを与えていった。その後、神保町に行った際に単行本を求め、既刊の「ボイルス・タウンの狼男」1、2巻を購入した。2巻の冒頭、あらすじ紹介の部分に作者のコメントがあった。
「第3巻(完結)をお楽しみにね。これを普通のSFと思ってたらあんた目をむくぜっ!!」

単行本1、2巻を読むと、そこにはまだ「普通のSF」があった。ノーイエス星から地球のボイルス・タウンに戻ってきたキトウ・オブライエンの周辺に謎の「狼」が出現し始める。狼の謎を追って、B工科大生たちや巨大企業が動く。 普通と言っても、瞬間移動やオカルト物理学、脳と認識などを盛り込んだSF的アイデアは充分面白かった。ばらばらな目的で好き勝手に行動するキャラクターたち。それに合わせるかのように細切れで唐突な場面展開。枝葉の多いネーム。(最近洗練されつつある物語手法、マルチ・プロットの失敗例か。単なる構成力不足か。) それらを楽しみ、ようやく合致した舞台設定や世界観を胸に抱いて、僕は最終巻を待った。

だが、第3巻(最終巻)はついに出版されなかった。
2冊の単行本と何冊かのバックナンバー、そして記憶だけが僕に残された。
マンガ作品は埋もれ去ることがある。作品が完結していようと、単行本が続巻であろうと、埋もれ去ることがあるとわかった。そしてふと気付いてまわりを見渡せば、そんな作品は珍しくもなんともないのだった。

「ボイルス・タウンの狼男」に出会ってから10年以上が経った。相も変わらずのマンガ好きである。
インターネットなんぞを覗き始めた。 検索エンジンgooができたばかりの頃、「ボイルス・タウンの狼男」で検索してみた。0件だった。「ボイルスタウン」「竹沢タカ子」などで検索しても同じだった。 いつか自分でホームページを作ることがあるなら、この0を1にしようと思った。その作品が存在したささやかな証に。

ホームページの名前を決めた。
物語の舞台となるボイルス・タウンにあるB工科大の学生寮(みたいなもの)、その名は「B館」

いらっしゃいませ。ようこそ「B館」へ。
あなたと出逢えた幸運に、この言葉を。

「最後(ファイナル)」のあとにも時は流れる
------[「ボイルス・タウンの狼男」最終回より]

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「ボイルス・タウンの狼男」(竹沢タカ子) 誌上掲載リスト
掲載誌 Wings(新書館)

掲載無          創刊号(1982年7月)     読み切り「翼が帰る日」40P掲載
PART I          第2号(1982年10月)     24P     
PART 2          第3号(1982年12月)     24P     
PART III        第4号(1983年4月)      32P     
PART IV         第5号(1983年6月)      24P     
PART V          第6号(1983年8月)      16P     
PART VI         第7号(1983年10月)     20P     
PART VII        第8号(1983年12月)     16P     
PART VIII       第9号(1984年2月)      20P     

掲載無  月刊化記念増大第10号=1984年4月号
第2部PART I     1984年5月号     32P     
第2部PART II    1984年6月号     16P     
掲載無          1984年7月号
第2部PART III   1984年8月号     20P     
第2部PART IV    1984年9月号     17P     
第2部PART V     1984年10月号    17P     
掲載無          1984年11月号
第2部PART VI    1984年12月号    17P     
第2部PART VII   1985年1月号     17P     
第2部PART VIII  1985年2月号     17P     
掲載無          1985年3月号     読み切り「Bubbling Bubbling」24P掲載 
第2部PART IX    1985年4月号     17P     
第2部PART X     1985年5月号     17P     
掲載無          1985年6月号     読み切り「モダン・ケース・オブ・たたリング」16P掲載 

第2部PART XI    1985年7月号     17P     
掲載無          1985年8月号
第2部PART XII   1985年9月号     17P     
第2部PART XIII  1985年10月号    17P     
第2部PART XIV   1985年11月号    17P     
第3部PART II    1985年12月号    17P     
第3部PART 3     1986年1月号     17P     
第3部PART 4     1986年2月号     17P     
掲載無          1986年3月号
第3部PART 5     1986年4月号     17P     
第3部PART 6     1986年5月号     17P     
第3部PART 7     1986年6月号     17P     
第3部PART 8     1986年7月号     17P     
第3部PART 9     1986年8月号     17P     
第3部PART 10    1986年9月号     17P     
最終回          1986年10月号    21P

単行本第1巻
(WINGS COMICS)
1984年6月25日初版発行 カラーポスター付B6版200P (分)0-0-71(製)601055(出)3136 450円
第1部収録(第2号-第9号掲載分。PART VIIを冒頭へ移動の他、加筆、再構成して連載時より22P増)。

単行本第2巻(WINGS COMICS)
1985年7月25日初版発行 カラーポスター付B6版191P ISBN4-403-61081-1 C0079 450円
第2部収録(84年5月号-85年5月号掲載分(7月号掲載PART XIの4Pまで含む)に加筆)。

第2部PART XI-第3部までの238Pは単行本未収録。

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竹沢タカ子の単行本

「ラストゲイル」(東京三世社 マイコミックス)1981年11月10日初版発行 オビ付A5ハードカバー208P 0071-0033-5297 定価980円

収録作品&初出
・「ラストゲイル」40P    '81年「少年/少女SFマンガ競作大全集PART12」
・「かっぱ」32P    '81年「少年/少女SFマンガ競作大全集PART10」
・「万華鏡」32P    '80年「少年/少女SFマンガ競作大全集PART6」
・「山」24P    '80年「マンガ奇想天外3」
・「プリズナー」24P    '80年「ぱふ3月号」
・全作品完全リスト
・「ハピネス イズ ア ヘイハウス」24P    '80年 同人誌メテオール11
・「ザ・ホスピタル」8P    '76年「りぼんデラックス夏の号」
・「最初で最後の大ヒット」9P    '76年「りぼんデラックス秋の号」
・「女のかばん」2P    '80年 同人誌メテオール12
・ハピネスQ&A
・竹沢タカ子全調書
・作品後記
・解説・寺沢武一
 

「潮風の子どもさ」(徳間書店 アニメージュコミックスAC-57)S59年(1984年)12月10日初版発行 おまけシール付B6版198P 雑誌47810‐62 定価450円

収録作品&初出
・「潮風の子どもさ」32P    '81年「リュウ」11月号
・「潮騒の仲間たち」32P    '82年「リュウ」3月号
・「なぎさのお客さま」32P    '82年「リュウ」11月号
・「雨ふり小僧」12P    '83年「リュウ」3月号 
・「秋風の雑民さ」16P    '83年「リュウ」11月号 
・「今週のひょーい霊」32P    '84年「リュウ」1月号 
・「THE NIGHT」31P    描き下ろし 
・「逗子日記」3P    描き下ろし (あとがき漫画)
・おまけ「もののけシール」
 

「ボイルス・タウンの狼男」第1巻(新書館 ウイングスコミックス)1984年6月25日初版発行 カラーポスター付B6版200P (分)0-0-71(製)601055(出)3136 定価450円

「ボイルス・タウンの狼男」第2巻(新書館 ウイングスコミックス)1985年7月25日初版発行 カラーポスター付B6版191P ISBN4-403-61081-1 C0079 定価450円
 

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竹沢タカ子作品リスト(不完全)
(単行本収録の作品リストを参考に、わかる範囲で追加しました。)

1975
「コウの笑タイム」    りぼん10月大増刊号*
1976
「ワン!」    りぼん夏の増刊号
「ザ・ホスピタル」    りぼんデラックス夏の号
「最初で最後の大ヒット」    りぼんデラックス秋の号
1978
「万華鏡(I)」    メテオール9
1979
「TVゲーム」    マガジンスペシャル2号
1980
「プリズナー」    ぱふ3月号
「ハピネス イズ ア ヘイハウス」    メテオール11
「万華鏡(IV)」    少年/少女SFマンガ競作大全集PART6
「女のかばん」    メテオール12
「テレビゲーム」    少年/少女SFマンガ競作大全集PART7
「山」    マンガ奇想天外3
1981
「かっぱ」    少年/少女SFマンガ競作大全集PART10
「イエス・ソングズ」    ヤングマガジン7月20日号
「ラストゲイル」    少年/少女SFマンガ競作大全集PART12
「潮風の子どもさ」    リュウ11月号
「ネの国大冒険」    別冊コロコロコミック第4号
1982
「潮騒の仲間たち」    リュウ3月号
「翼が帰る日」    Wings創刊号(1982年7月)
「なぎさのお客さま」    リュウ11月号
「ボイルス・タウンの狼男」    Wings第2号(1982年10月)〜1986年10月号
「ワープレオ!!」 別冊コロコロコミック第6号
1983
「雨ふり小僧」    リュウ3月号 
「秋風の雑民さ」    リュウ11月号
1984
「今週のひょーい霊」    リュウ1月号
「夢酒場」comicマルガリータVol.3、笠倉出版社SAKURA MOOK
1985
「Bubbling Bubbling」    Wings3月号
「モダン・ケース・オブ・たたリング」    Wings6月号
描き下ろし
「THE NIGHT」    単行本「潮風の子供さ」収録
「逗子日記」    単行本「潮風の子供さ」収録(あとがき漫画)

*デビュー当時のペンネームは「竹沢コウ」だったそうです。

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