△Home

見学コースコイル・ヤード ->カッピング工程 ->成型工程 -> 洗浄工程 -> 装・印刷工程 -> 焼付・乾燥工程 ->

  内面コーディング・乾燥工程  ->ネッキング&フランジャー工程 -> 梱包工程 -> 出荷ヤード

缶はいったいどのようにして作られているのでしょうか? そのあたりを少しばかりお話してみましょう。 皆さんは、缶が作られていく様子を実際にご覧になったことはないでしょうから、これより某アルミ缶の製造工場にご案内しようと思います。 では、ご面倒でもここに準備いたしました安全帽と上衣を着用いただき、靴は備え付けの内履と履き替えていただきましたら出発いたしましょう。 工場内ではたくさんの機械が稼動しており危険が一杯ですので、歩行コースから決して出ないよう充分に注意いただきますようお願いいたします。
  コイル・ヤード
ここは缶の原材料が搬入されるところです。ご覧いただけますように「缶の原材料」であるアルミは1〜2m 幅の長〜ぃストリップ(裸踊りじゃぁあ りませんゾ)をコイル状に巻い姿で搬入されます。重さは5〜15ton あるのでこれを運ぶには大型トレ-ラ-が必要で、荷降ろしには頭上にみえま す走行クレーンが使用されます。そこにある大きなコイルは15tonコイルで、このコイル1個から約40万個のビール缶が作られます。 では、次に進みましょう。
カッピング工程
先ほどのコイルは「アンコイラー(UNCOILER)」と呼ばれる装置によって巻き戻されながら次の工程に導かれます。ここでは缶の原型となる「カップ」 がプレスで打ち抜かれます。 「カップ」は茶筒の蓋のように丸くて浅い円筒型をしていますが、皆さんにご覧いただいておりますプレスでは1回の打ち抜きで12個のカップが作ら れます。1分間に打ち抜く回数は125回ですから1台のプレスで1分間に約1,500缶分のカップが作られていることになります。プレスの手前にある のは、ストリップの表面に潤滑由を塗布する装置で「ルブリケーター(LUBLICATER)」と呼ばれます。
成型工程
いよいよ缶がその形をみせてくる工程に進みます。ここに並んでいる機械は「ボディ・メーカー(BODY MAKER)」と呼ばれるものです。前工程で作られた「カップ」 を1ストロークで缶の形になるまでパンチで押し「しごい」て引き伸ばしながら成型します。 実際の缶を手にとってご覧いただくとお分かりのように、缶底は元の板厚であるのに缶胴は随分と薄くなっていますが、これは缶底の部分がパンチの受金具に打ち 付けられて成型される(Dorming)のにたいして缶胴にあたる部分は「しごいて」伸ばされた結果としてそうなっているのです。 このようにして作られる缶を、「引き伸ばし(Drawing)」と「しごき(Ironing)」とでつくられることから、業界では「DI缶」と呼びます。 1台の「ボディ・メーカー」で毎分450缶の能力があり、先ほどの「カッピング・プレス」の能力に見合うためには4台の「ボディ・メーカー」が 必要となります。5台並んでいるうちの1台は、どれかの機械でトラブルが発生した場合に備えて何時でもバトンタッチできるようにスタンバイしているのです。 たとえどれかが停まっていても無闇に近づいてはいけません。前工程から送られてくる「カップ」の量を監視してコンピューターによる自動運転されております ので突然に動き出しますので危険です。各「ボディ・メーカー」には成型された缶の「高さ」を規定の寸法に切るための装置が付帯していますが、トリミングす ることから、これを「トリマー(Trimmer)」と呼びます。 ここを通って初めて缶の姿がみえてきますが、まだこの段階ではただの「円形筒」のままです。
洗浄工程
先の「カッピング」及び「成型」工程では、打ち抜いたり「しごいたり」する際に成型性をよくするために、潤滑・冷却材(「クーラント」と言います)が使用され ますので、これを完全に除去する工程で、ここで使用されている装置を「缶ウォッシャー(Can Washer)」と呼びます。 缶は幅広の金属製コンベヤー上に底を上にして乗せられ洗浄ブース内を通過しながら、スプレーで薬液をを噴霧して「クーラント」を洗い落とします。 その後湯洗ブースを通過した後、熱風乾燥炉で乾かされて次の工程に運ばれます。
塗装・印刷工程
いよいよ皆さんが最も関心をもっておられる外面印刷の工程です。2-ピース缶の誕生は、ひとえに円筒外面(曲面)印刷技術の開発によって 始まったと言えます。それまでの缶はシート(平面)に印刷した後これを丸めて筒を作り底蓋をつけて缶とした、いわゆる「3ピース」缶でした。 つまり、缶の成型よりも前に印刷工程があったのですが2ピース缶の場合は、缶を成型した後でその外面に印刷することになり印刷工程が成型工程 の後になります。 通常の場合、印刷の鮮明さを引き立たせるために「白色」塗装をしますが、この機械を「ベース・コーター(Base Coater)」と呼びます。塗装した後、 一旦焼き付け乾燥してその上に印刷します。印刷する機械は「デコレーター(Decorater)」と呼ばれます。 日本で2-ピース缶の生産が始まった当初は、毎分450缶の4色機でしたがその後、600缶、800缶、1200缶、1500缶...と高速化されおおよそ35年を経て 今日では毎分1800缶(最大2000缶)の高速マシーンとなり、しかも8色の印刷機が使用されるようになりました。 「毎分1800缶」の速度と言えば、即ち約0.03秒に1缶が印刷されていることになります。正に「目にもとまらぬ」速さと言えましょう。 毎分450缶の時代には流れている缶を手で抜き取って印刷の出来具合を検視し流れの中に戻しておりましたが、今の速度では至難の技です。 缶を収集しておられる皆さんは、印刷の出来具合をじっくりと観察されたことがおありでしょうか? そこには、この現場で印刷に携わっているオペレーター諸君の 日夜気の抜けない努力の結晶が刷り込まれております。インクの調合、印圧のかけ具合、文字の鮮明さ、版の位置合わせ、色の濃淡...等など、手にしたルーペで 細かく検視を重ね針先程のミスも見過ごさぬ努力の結晶が皆さんの収集棚に並んでいる...ということになります。 わが国の缶の印刷品質の高さは諸外国で認知されておりますが、それはここで働く諸君の技術レベルの高さと責任感の強さによるものなのでございます。 余談ながら、こんな話があります。それはアメリカの某工場でのことでありますが、最終工程で検品しておる者が何も印刷されていない缶がどんどんと 送られてくるのに驚いて、大急ぎで印刷工程に走って行ってみると、なんと印刷機のインク壷が空になっているのにも気づかず、オペレーターがすっかり「夢の世界」 で高いびき!実際には起こりえない話でしょうが、現場の緊張感が外国と日本とではさほどに違っている....とのジョーク話であります。 ところで、缶を手にとってしげしげと眺める時には、いったい何色のインキが使用されているのか観察してみてください。また、どこかに製缶会社のマークが小さく 刷り込まれていることにも注意して観て下さい。楽しさが倍増しますよ。
焼き付け・乾燥工程
「ベース・コーター」および「デコレーター」の後にはそれぞれ塗装、印刷された缶を熱風で乾燥させる装置があります。この装置は通常「ピン・オーブン」 と呼ばれています。塗装あるいは印刷された缶は「ピン・チェーン」と称する装置によって「ピン・オーブン」内を搬送されながら熱風を吹き付けられて乾燥 されます。「ピン・チェーン」は、一定間隔で延長ピンが付いているローラー・チェーンでこのピンに缶が差し込まれて搬送されます。「ピン・オーブン」とは ピン・チェーンに由来する呼び名であります。高速のラインですと、このピン・チェーンの長さが200〜250mにもなります。これが塗装機あるいは印刷機によって 駆動され、200〜230℃の熱風が循環しているオーブン内を通ってエンドレスに走行しています。
内面コーティング・乾燥工程
ここは缶内面にコーティングする工程です。並んでいる装置は「スプレー・マシーン」と呼ばれ、スプレーノズルで塗料を缶内部に向かって吹き付けて塗装します。 均一に塗装されるように缶は高速で回転しながら通過します。塗装された缶は金属製のネット・コンベヤーに並べられて熱風が循環するオーブン内を通過して乾燥 されます。アルミ製の缶はせいぜい15gr程度の重さであるために、熱風に吹かれて転倒することのないように搬送するのは結構難しいことです。
ネッキング & フランジャー工程
ここでは缶の蓋(「エンド」といいます)をする側を絞って細くし(ネッキング)、蓋を「かしめる」ためのフランジを加工します。 初期の頃は「エンド」の大きさが缶の外径とほぼ同じで、絞る回数が1段でありましたが、その後材料の節約を目的として「エンド」の 外径がどんどん小さくなり、従って絞る段数が増えてきました。 皆さんの”収集缶”を見ていただければ判りますが、1段(シングル・ネック)、2段(ダブル・ネック)、3段(トリプル・ネック)と 様々なネック形状があることに気付かれることでしょう。現在では「4段絞り」の缶が大勢を占めております。 なかには段がなくて滑らかな曲線で絞られた缶もありますが、これを「スムース・ネック」と呼んでおります。蓋の外径が小さくなるのに あわせて、缶底の形状も変わってきました。これは、缶を重ねて積み上げる時に、うまく缶底を蓋にはまりこませる(スタッカブル)ためであります。
ここで缶の加工工程は終わり製品として出荷されます。蓋(「エンド」)は他の場所で製造されて缶とは別にビール会社に納められ、中身を充填した後で かしめ(巻き絞められます。
梱包工程
ここは製品となった缶を梱包する所で、ここにある設備は「パレタイザー」と呼ばれ、パレット上に整列して並べ積み上げる機械です。積み上げられたあと ビニールを被せてカバーし、オーブンを通して熱を加えシュリンクします。梱包された缶は一旦倉庫に積み上げられて出荷されます。
出荷ヤード
ここは梱包した製品を出荷に備えて保管しておく倉庫で、コンピューター制御される自動搬送機が種類別に分類して搬入、搬出を行います。 製品は「ビール缶」のみならず、各種の「炭酸飲料缶」「お茶缶」「ジュース缶」と多種類ありますのでその仕分けをコンピューターで行います。 1列の製缶ラインで1日に作られる缶は、おおよそ140万個にもなり、当工場には3列の製缶ラインがありますので合計すると1日当り約420万個の缶がここに 運び込まれてくることになります。わが国全体でこのような2ピース缶の製造ラインは、あわせて60ライン程ありますので単純計算すると年間約300億缶程度の 生産能力があることになります......が、実際には低速ラインもあり、その上稼動率を加味すれば年間240〜250億缶が「2ピース缶」として出荷されているのが 実状でしょうか。 アニメーション
お疲れさまでした
ここで本日の見学コースは終わりとなりますが、缶1個はぜいぜい15gr程の軽さであり、片手でグシャリと握り潰すことのできる程度のか弱い容器ではありますが その製造設備は実に大規模で、コンピューター化された近代的な工場で目にも留まらぬ高速で日夜生産されている現場を見学され感慨新たなるものを感じられたことと思います。 ここの各工程での作業に従事している諸君の努力と苦労を心にとめていただき、飲み干されたあとの缶に一時なりとも愛顧の眼差しをかけて いただければ本日の案内役として大いに幸せであります。
お気をつけて「Top Page」にお帰り下さい。->[△Home]