生徒指導・進路指導論D (5月17日)

 

 前回の復習として、@カウンセリングの方法が「傾聴だけではない」ということを再確認した。「聴く」こと基本だが、「聴くだけ」ではない。Aもちろん「聞いてくれるだけでいい」という人に対してならばそれでも効果はある。カウンセリングの技術は基本的には対話の能力でもあるが、「相手と関係を結び」、そして「相手の思いを整理してあげる」ということが重要となる。そのため、B論理療法というものをとりあげる。「教員」として関わっていく中で問題を解決していく方向にもっていく方法論である。

 

 <続>○教師にあうカウンセリングの方法

『論理療法』・・・心因性・神経症型、ストレス型、不登校にフィット

    →→「論駁」(説得・指示)するカウンセリング




 


Activating
event
 




 


Belief

 




 


Consequence

 




 


Disputing

 




 


Effects

 




 

  (出来事)    (受け取り方)   (結果)        (論駁)      (効果)

 

  「悩み」「語ること」をそのまま受け止めてきいてあげるだけではなく、それが「論理性はあるのか?」、または「事実生はあるか?」というように「論駁」することを含むカウンセリングである。「哲学」的な方法ともいえる。相手の「悩む考え方」や「悩む理由と思い込んでいること」の中の「そうではないだろう」という部分を指摘して、相手がその「自分の考え方」に悩みを増していくことを抑えてあげる方法。

 

<普通>・・・人間の「悩み」(結果)はある「状況・出来事」に原因があると考えられるであろう。そして、そう「受け取る」私がいる。

  (例:「友だちができないから、私は学校に行けない。そう考える。)

<論理療法では>・・・ 人間の「悩み」は「状況・出来事」に由来するのではなく、その「受け取り方」に左右されると考える。

例:「友だちがいないのはダメなことだ。自分は友だちもできないダメな人間である。従って学校でも受け入れられない。ゆえに学校には行けない」

 

 このように人間は「思い込み」があってそれが身体状況などに出ていることがあるのではないか。

※「受け取り方」=「考え方」(固定観念・人生哲学)。変えることで「楽」になる。次に実質的な「状況」も変えていく。(情緒的な面、現実的な面のケア)

 おそらく通常のカウンセリングだと「僕が友だちになる」となるが、これでは問題が解決しないことが多く、また深刻なひきこもりになることも多い。

 

人間には思い込みがある。思い込みやすい気質(タイプ)をあげる。

心理的ひきこもりに陥る気質・・・おとなしい、まじめ、完全主義、神経質、感受性が強い、気が弱い、責任感が強い、内向的 

  →強迫的な考え方(不合理な思い込み)・・・融通のきかない人(正義、節操ある人)

 

<ポイント>「Belief(受けとり方)」が問題(となることが多い)


 

 程度の問題→→「情緒・行動」 病的レベル
                    健康レベル

 ・・・つまり程度の問題ともいえる。同じ悩みでも病的におちこむこともあれば、健康的に生きていけるという違いもある。体調やその時々によっても違うだろう。思い込みを解くことで少しでも「健康的」おちこみにまでアップさせていく。

 

 カウンセリング・スタンス

  Being ・・・自己の「存在」

   Being in You (まずは相手の世界に入る。共感的理解。想像力)

   Being for You (相手の味方として関わる。援助。weの関係)

   Being with You (相手と対等な関係)

 

考えてみよう〜具体的事例 *いくつか事例を紹介する

ひきこもりの少年Aくんの場合・・・小学校で水泳の強化選手だったが、中学校入学後、不登校になりひきこもる。本人の証言→「いじめられた」、「自分の匂いが気になる」、「強くなくては生きていけない」、「親を不幸にしている」、「他人は信用できない」、「そういう僕は社会に出られない」。

 

少女Bさんの場合・・・家庭で父親が厳格なため、ノイローゼから他人にも強度の不安をもつようになる。本人の証言→「父が異性との交際に反対する」、「異常に私に執着していると感じる」、「友だちも家によべない」、「男の人は皆そういう面を隠しているのではないか」、「恥ずかしい」「怖い」。

 

不登校児(中学2年生)をかかえるお母さんCさんの場合・・・専業主婦で子育てをしてきたが中2で不登校になった長男にショックを受けている。本人の証言→「私が手をかけてきたつもりだが育児に失敗した」、「中2なのに、もうこの子の人生を駄目にしてしまった」、「私はダメな母親、親失格である」、「夫にもうしわけない」。

 

 

やってみよう〜具体的方法

「強迫観念」「被害妄想」「思い込み」の部分をみつけだしていくが、まず相手の考えを整理させてあげる。「そのとき、どう思ったの?」。次に「どうしてそう思ったの?」。相手に考えを整理させていくが、この家庭で「自分がなぜそう考えたのか」を客観視していければそれでセルフ・カウンセリングが可能になるかもしれない。強い思い込みで自らを縛っているように感じられたら次に具体的な「論駁」にとうつる。

 具体的に意識するのは、相手に「〜でなければならない」、「耐えられない」、「駄目である」、「もう絶望だ」と思い込んでいる部分をもう一度整理してあげて、それを 「○○だけれども、それにもかかわらずいいではないか(と考えられないか)」、「たしかに○○だが、だからといって〜ということではない」といいかえさせるよう指導する。

 

 

次の<ケース1>について上で学んだことを参考にして、問題や思い込みをみつけ、論駁してみよう。(実施)

  「あなたは(〇〇さん)、高校生。(その時のことを想像して、気持ちを思い出してください。)ごく普通の高校ですが・・・、3年生になりました。

 最近、自分に友だちはいないのではないかと迷っています。3年生でクラスがかわった時、仲のよかったグループとは一人だけ別クラスになってしまったからです。もともと積極的に自分から他人のワに入っていくタイプではなかったし、周りの皆も進路を考えはじめてか・・・、バラバラで近寄りがたいと思っていました。

 おとなしめの、少し話す・・・、お互いにおとなしいからよくしゃべるのではないのですが、そういう人はクラスにいます。たぶん似たタイプでクラスで積極的になれないタイプだと思う。この子たちが学校を休むとつまらない。・・・お昼のお弁当をいっしょに食べる相手がいなくなります。そういう時はつらい。食欲もなくなります。

 クラスには私たちとは正反対のにぎやかなグループもいて、先生を茶化したり、なんだかんだリーダーシップをとりたがります。

 私は彼女たちが苦手です。一人でごはん食べてる時、「ひとりぃ?」と声をかけてきます。話すことが得意でない私はそのグループへも入れないと思い・・・、「今日は〇〇ちゃん休みだから」とかいったりします。「ふ〜〜ん」といって彼女は去っていきます。目をつけられるんじゃないかと私たちは心配していました。

 〇〇ちゃんが不登校ぎみになりました。理由はわかりません。でも、私はさみしくなりました。

 私はよく腹痛や偏頭痛があって、朝、布団から出れないことがあります。そういう時は一日憂鬱です。

 体育の時間も見学が多いので一人になることが多いです。そういう時は周りの目が気になります。つらいです。

 ある日、遅れて2時間目の途中から登校しました。「音楽」の時間でした。音楽室は移動教室です。廊下を歩いていても他のクラスも授業中、また孤独を感じました。

 音楽室に着いて静かに後ろのドアをあけると、皆は笛を吹いていました。その時、あの目立つグループの子たちが、彼女たちの目線・視線が私に集中しました。

 また遅れてきた私は、その目が「白い目」でにらまれているようにみえました。そういう目でみられている。先生は何もいってくれない。皆の視線が私を責めているような気がする。「なに遅れて来てるんだよぉ!」と語っているように感じました。

 「もうここにはいたくない」。

 そう考えて私は学校を出ました。(それから彼女は不登校になりました。)」

 

 →→さて、「もうここにはいたくない」と彼女がアタマの中で思った時、なぜそう考えたのか。「〇〇となった(理由・事柄)」ゆえに「××と考えた」と書いて下さい。 次にどのように彼女に接して、そしてどのように論駁していくか書いてください。(次回、講評します)