生徒指導・進路指導論  2002年度・前期  @(4月12日)

 

 今年度から「生徒指導論」が「生徒指導・進路指導論」に変わった意味と、また「教職」志望の学生を対象とする必修科目として存在する意味と位置づけについて説明し、今後の授業の展開についての全体のガイダンスをした。昨年度の授業が少人数で学科の専攻教科であったのに比して、本年度は他学科の選択科目であり、バラエティがあるとともに人数の制限がなく、体験型のエクササイズ等が行ないにくいかもしれないことも話し、なおかつ工夫してとりいれていくことを話して初回の授業を終了した。




 

<授業の概要>
(1)生徒指導・進路指導とは何か?(なぜ、この授業があるのか?)
 ・教員による「指導」が必要という意味
 ・どのような指導が必要か?

 

(1)「生徒指導・進路指導」とはどのようなものか?

 *「なぜ、この『生徒指導・進路指導論』があるのか?」ということと、私の現場経験時における生徒指導あるいは進路指導のシーンを話すことで、「生徒指導・進路指導」とはどのようなものかと、どのようなことを学んで身につけていくべきかということを考えもらうようにした。

 まず、この「生徒指導」なり「進路指導」なりという科目が「教職課程」の中で(つまり教員になるために)必須のものとされるようになったのが比較的に「最近のこと」(新しい)ということと、さらに受講者の希望する「教職」というものがたんに「教科の授業」だけではないということを意識していただくことをねらいとして、次の図表をつかって説明を試みた。(*説明等は略する)

 

@生徒指導・進路指導論は新しいもの?

 *教職に関する科目(免許法施行規則に定める科目区分等)<現行法>

 科 目

各科目に含める必要事項

単位

●教職の意義等に関する科目

・教職の意義及び教員の役割、教員の職務内容、進路選択に資する各種の機会の提供等


 

▲教育の基礎理論に関する科目
 

・教育の理念並びに教育に関する歴史及び思想



 

・幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程

・教育に関する社会的、制度的又は経営的事項

■教育課程及び指導法に関する科目
 

・教育課程の意義及び編成の方法、各教科の指導法



 

・特別活動の指導法

・教育の方法及び技術

生徒指導、教育相談及び進路指導等に関する科目

・生徒指導の理論及び方法、進路指導の理論及び方法


 

・教育相談の理論及び方法(カウンセリングの基礎知識含む)

◆総合演習

 

©教育実習

 

 

 *次に、そのように「新しい」というのは「何か必要があって」とりいれられたのだろうと仮定して、「何が原因とされるのか」ということを考えてもらった。なおかつ、その結果その原因となった事項は解決しえたのか、どのような影響をのこしたのかということも考えていくべきと指摘しておいた。かつての「教育荒廃」から「教育の改革の必要」が自覚され、それまでの「勉強しておけばいい」→「生徒指導には消極的」(つまり「かかわらない」、生徒のことを「わからない」)から、「生徒の内面の理解が必要だから積極的に行なう」(「かかわっていく」「わかろう」とする)生徒指導観へと変わっていったのだと下記のようにして説明を試みた。

 

A「生徒指導」はなぜ必要となったのか?

 1970〜80年代の教育の荒廃→「いじめ、不登校、校内暴力の増加」

 臨時教育審議会の改革路線・・・(教育改革の要請)社会の変化や児童生徒の多様化への対応の必要・・・豊かな生活体験と人間関係を。自己教育力の育成、基礎基本の重視と個性を生かす教育の充実・・・・・平成元年学習指導要領改訂

 ・・・心身未発達や幼児性人格、ひきこもり等の問題→→問題行動の把握のため

      消極的生徒指導→積極的生徒指導

 

 昭和63年12月、教育職員免許法改正

 平成2年4月入学生から、「特別活動」「生徒指導」が教職単位の必修となる。

       それまでは教育原理・教育心理学・教育社会学の中に含んでいた。

   →→→新しいもの、ゆえに指導担当者・教材等まで課題が多い

 

 *当時の文部省(現在の文部科学省)が、どのように「課題」としてとらえていたかを資料で確認した。

文部省 昭和62年12月「教育改革の推進−現状と課題」(冊子)
第二部「教育改革の取組み」
 ア 初等中等教育の課題・・・社会の変化への対応、生徒の多様化への対応、心の教育の充
                 実、教育の資質の向上、学校教育の果たすべき役割の見直し
 イ 教育課程の改善
 ウ 徳育の充実
 エ 
生徒指導の充実等・・・児童生徒の問題行動の根本的な解決を図るためには、

個別の問題行動への対応とともに、児童生徒の個性を伸長し、社会性を涵養し、

豊かな情操を培うことができるようにすることが大切である。

  このため児童生徒の生活体験や人間関係を豊かにする取組を充実するなど、

生き生きとした学校づくりを推進し、一人一人が充実感をもって学校生活を送れ

るようにすることが必要である。このような観点から、今後とも、前述の中・長期

的な視野に立った施策の一層の充実を図る必要がある。

 

 

 *次に、「生徒指導」「進路指導」というものの定義と、実際に対象とされて実施されている「政策」(対策)がどのようなものか確認した(BとC)。それぞれ「ガイダンス」や「カウンセリング」とされ、また悩みを抱えた児童への様々な政策があるが、実際にイメージされる「指導」がどのようなものか、それがふさわしいものであったのかということを考えてもらうことを試みた。

 

 B「生徒指導」の定義と政策

生徒指導とは Education Guidance 

              Guidunce for Junior High School Pupils 

  School Guidance and Counseling

 すべての児童生徒それぞれの人格のよりよい発達を目指すとともに,学校生活が一人ひとりにとって有意義なものとなるよう,生徒指導の充実に努めています。
 最近の児童生徒の問題行動・学校不適応については,いじめを苦に中学生が自殺するという痛ましい事件が発生するなど,いじめの問題が極めて憂慮すべき事態となっています。
 また,校内暴力及び登校拒否も増加傾向にあり,一方,高等学校中途退学者も相当数にのぼっています。
 これらの原因・背景は,学校・家庭・社会それぞれの要因が複雑に絡み合っていると考えられ,この問題の解決を図るためには,学校・家庭・地域社会の一体となった取り組みが必要となっています。
 文部省は,生徒指導について,(1)児童生徒の個別の問題行動に対する緊急の対応,(2)児童生徒の生活体験,人間関係を豊かなものとする積極的な視点に立った指導の充実の両面から,生徒指導資料の作成・配布,生徒指導講座等の教員研修の実施や,教育相談活動推進事業の実施など教育相談の充実,学校における「スクールカウンセラー」の活用についての調査研究,国立教育会館へ「いじめ問題対策情報センター」の設置,登校拒否児童生徒の適応指導教室事業,児童生徒を豊かな自然環境に移動させて行う集団宿泊活動を通じ,心身ともに調和のとれた健全な育成を図るための自然教室推進事業や奉仕体験,生活体験等の体験学習を推進するためのいきいき体験活動モデル推進事業,道徳教育の充実等種々の施策を講じています。

 

 C「進路指導」とは何か?

 進路指導・・・特別活動、学級活動・ホームルーム活動の中の「将来の生き方と進路の適切な選択に関すること」の活動。・・・@進路適性の吟味、A進路情報の理解と活用、B望ましい職業観の形成、C将来の生活設計、D適切な進路の選択 等。・・・生徒に将来の進路を自ら選択する能力を養う。

 

 

 *続いて、私が勤務していた高等学校における「校務分掌」について説明した。ある個人のカリスマ教師が指導だと「よくなる」とされることもあるが、その「特定の個人まかせ」であっていいのかと指摘し、「教員ができること」「やらねばならない本質的事項とは何か」ということを考え、身につけることをこの授業の目的としていくことを確認した。

 

 D教員の活動としての「指導」

 学校内におけるシステム

<校務分掌>

 A.教務・・・(略)

 B.総務・・・(略)

 C.進路・・・(略)

 D.生活指導・・・@生徒部・生徒指導係→→頭髪、風紀、問題行動への対応等

          A生徒部・生徒会

 E.社会福祉・・・(略)

 

 *どのような「指導」が必要なのか。それを考えていくことから次回のはじめとして、その必要な事項にそって今後の授業を組み立てていくこととして終わった。最後にアンケートにその意見の反映をお願いした。どのようなことを「生徒指導・進路指導」とイメージするか。あるいはこれまで実際にどのような指導を受けてきたか。そしてどのような「指導」が本来のありかたと考えるか。今後の指導としてどのようなものが望まれるか。現段階で考えることを書いていただいた。

 

 Eどのような指導が必要だろうか?

(次回以降)