生徒指導・進路指導論 I2002年12月13日
前回のグループ討議の講評 |
★進路指導の傾向を資料で読む
これまで以下のような資料を読み込んできた。
●「中学生・高校生の悩み」(スクールカウンセラーについて)第三回
●「不登校状態になったきっかけと継続している理由」(小・中学生)第三回
●「生徒指導資料」(戦後以降の教育政策の変遷をみる)第三回
●「心と行動のネットワーク」(最新の生徒指導指針)第七回
今回はまず、子どもの「進路指導」のためにその傾向を理解しておくことが必要と考え、そのために資料から理解を深めたい。一般に現在まで「教育改革」では次のように指摘されてきている。
現代の子どもたちには「就労に対する意識、自覚」が欠けている。「職業・勤労に対する尊重の意識」を育てることが必要である。 |
そして、「フリーター志向」といった傾向が指摘され、嘆かれる。さらに大学生の不本意入学や、入学時からの明確な意識が欠如しているなどが指摘され、「なんとなく進学」することを嘆かれる。
たしかに傾向はみられるであろうが、「不景気」などの理由は「教育」でなんとかできるのであろうか。かつての好景気の時代をイレギュラーとして現在をレギュラリーに考えて、ふさわしい指導を探していくべきであろうか(その時代に「見事な進路指導」があったとも思えないが)。いまを生きる上での「自分の人生の考え方」としても「進路指導」は重要とはなろう。ここではまず「学校」自体が進路を考えていく上で「役に立つ」と思われなくなってきている(信頼をなくしかけている)ということと、そして生徒の「進路」意識が変容したと思われる社会的背景を「資料」から考えていく。前者の問題は「信頼していないのに『指導』なりがなりたつのか」ということであり、また後者では「現実的変数を受けてその意識すら規定されてしまうのではないか」という問題があるのではないか。
(1)「学校」を信頼して、期待しているのか?
●「中学生の学校信頼関係データ」(教育改革の効果)→図表略
同資料から、階層分けしてみても、あるいは全体的にも「学校」への依存度と期待感が年々と低下していっているのがわかる。学校に期待はしないが、とくに不満ももたないで、自ら「今がよければいい」(現在志向)と考える生徒の増加傾向をどのように指導していくべきであろうか。
(2)「進路傾向」と背景を読む
●「高校生の進路状況:学校基本調査報告書から」(進路指導用の調査資料)
※他に、労働白書、文部統計要覧、国勢調査なども参考になる
高校卒業後の進路状況:(資料出所は文部省「学校基本調査報告書」であるが、この表は『高校生文化と進路形成の変容』学事出版・2000年:で要約されたもの)
|
昭和54〜平成1年 |
平成2〜5年 |
平成6〜10年 |
||||
卒業者数 |
138万→170万 |
+23% |
180万弱が持続 |
+0.0% |
166万→144万 |
−13% |
|
大学短大進学率 |
31.9%→30.7% |
−1.2% |
30.6%→34.5% |
+3.9% |
36.1%→42.5% |
+6.4% |
|
内訳 |
志願率 |
45.7%→48.5% |
+2.8% |
49.2%→52.4% |
+3.2% |
53.4%→55.0% |
+1.6% |
合格率 |
69.9%→63.3% |
−6.8% |
62.2%→65.8% |
+3.6% |
67.6%→77.3% |
+9.7% |
|
一浪率 |
10.8%→13.1% |
+2.3% |
12.8%→12.2% |
−0.6% |
12.6%→10.3% |
−2.3% |
|
就職率 |
41.4%→34.7% |
−6.7% |
34.4%→29.7% |
−4.7% |
26.9%→22.2% |
−4.7% |
|
専各等入学率 |
19.5%→28.9% |
+9.4% |
29.8%→30.5% |
+0.7% |
30.5%→27.4% |
−3.1% |
|
内訳推計 |
予備校 |
7.1%→10.1% |
+3.0% |
9.6%→8.8% |
−0.8% |
8.7%→5.9% |
−2.8% |
純粋専各 |
12.4%→18.8% |
+6.4% |
20.2%→21.7% |
+1.5% |
21.8%→21.5% |
−0.3% |
|
無業者率 |
6.9%→5.6% |
−1.3% |
5.2%→5.2% |
±0.0% |
6.4%→7.9% |
+1.5% |
|
内訳推計 |
宅浪 |
3.8%→3.0% |
−0.8% |
3.3%→3.4% |
+0.1% |
3.8%→3.6% |
−0.2% |
純粋無業 |
3.1%→2.6% |
−0.5% |
1.9%→1.8% |
−0.1% |
2.6%→4.0% |
+1.4% |
<※解説の詳細は略する。>「大学短大進学率」(大学か短大への進学)、「就職率」(進学しないで就職を選択)、「専各等入学率」(専門、各種学校への進学)、「無業者率」(「宅浪」=「自宅での浪人」か、「純粋に無業」)、及び数に表れていない(省かれている)が「死亡や不詳」も含め、高校生の「進路」変容を表わしたものである。「時期」区分でその背景等もみることができる。複合的に数字の変容をあわせて考えられたい。
1、人口の変動 |
他に「全体としての進路志望の変化」や「学校ランク別」の様々な数値や「補習授業」及び「カリキュラム」等をみてもらったが略する(全部で9つの統計を確認した)。
以上の数字をふまえて、いま(これから)、どのような進路指導が必要なのかを考えていく。「なぜ、変わったのか?」、「何が問題であったのか?」を理解したうえで、「進路」を生徒自身が理解して、考えていくためにはどのような「指導・教育」が必要であるか。
今回の内容は小レポートのように考えてきてもらって、試験でそれを反映させたいとして授業を終わった。
(リアクションカードの配布→回収)