生徒指導・進路指導論C (2002年10月25日)  

 今回は「不登校」の資料・統計から何がよみとれるのかということを勉強してもらいました。前回は「エクササイズ」中心でしたが、すでに予告したように「資料分析」「理論」も大切です。「数値」の面白さも伝えられるといいのですが。

(1)生徒指導・進路指導論とは何か?どのような指導が必要だろうか?
 1・校務(公務)としての生徒指導・進路指導
 2・教員対生徒(&家庭)との間での生徒指導・進路指導
 3・自立性・自主性の教育としての生徒指導・進路指導
(2)人間理解の方法−−「わかる」とはどういうことか?
 1・「知的理解」と「感情的理解」。知識と経験の両方が必要
 2・カウンセラーは万能ではない?







 

 

(2)人間理解の方法−−「わかる」とはどういうことか?

 

   「糸電話」モデル

      

    「再現可能性」

  コミュニケーション・ラインの重要性→つまり「話し」や「相談」が受けれる状態でいることこそ大切?

 

 2 カウンセラーは万能ではない?

 ★「不登校」現象を資料で理解する

  まずは数の変容を見て、次にその「内容」「傾向」を確認していく。認識や理解をする前提として「多様」さを知っておかねばならないであろう。

 

「平成10年度不登校状態となった直接のきっかけと不登校状態が継続している理由との関係」(文部科学省初等中等教育局児童生徒課『生徒指導上の諸問題の現状と文部科学省の施策について』平成13年)

※<小学校>
区分
 

不登校状態が継続している理由

学校生活上の
影響

あそび・非行
 

無気力
 

不安など情緒
混乱

意図的な拒否
 

複合
 

その他
 


 

比率(%)
 

学校生活
に起因


 

友人関係をめぐる問題   

596

15

179

922

111

802

48

2673

10.3

教師との関係をめぐる問題 

140

4

33

141

62

187

15

582

2.2

学業の不振 

85

31

367

200

24

220

22

949

3.7

クラブ活動、部活動等への不適応

3

1

6

15

2

14

2

43

0.2

学校のきまり等をめぐる問題

19

5

13

34

31

29

6

137

0.5

入学、転編入、進級時の不適応 

72

0

73

321

24

205

22

717

2.8

小計

915

56

671

1633

254

1457

115

5101

19.7

家庭生活
に起因
 

家庭の生活環境の急激な変化

71

31

458

714

39

610

162

2085

8.0

親子関係をめぐる問題   

91

59

821

1697

130

1251

205

4254

16.4

家庭内の不和

25

25

259

414

45

324

62

1154

4.5

小計
 

187
 

115
 

1538
 

2825
 

214
 

2185
 

429
 

7493
 

28.9
 

本人の問
題に起因
 

病気による欠席   

55
 

6
 

410
 

647
 

22
 

595
 

214
 

1949
 

7.5
 

その他本人に関わる問題  

176

51

1736

2701

281

2362

471

7778

30.0

小計
 

231
 

57
 

2146
 

3348
 

303
 

2957
 

685
 

9727
 

37.6
 

その他    

28

14

343

247

98

502

660

1892

7.3

不明    

39

3

211

365

57

627

389

1691

6.5

計     

1400

245

4909

8418

926

7728

2278

25904

100

比率(%)  

5.4

0.9

19.0

32.5

3.6

29.8

8.8

100.0

 

 

※<中学校>
区分
 

不登校状態が継続している理由

学校生活上の
影響

あそび・非行
 

無気力
 

不安など情緒
混乱

意図的な拒否
 

複合
 

その他
 


 

比率(%)
 

学校生活
に起因


 

友人関係をめぐる問題   

4548

1519

2146

6436

945

4595

342

20531

20.0

教師との関係をめぐる問題 

300

206

209

386

179

388

28

1696

1.7

学業の不振 

574

2217

3768

1394

289

1484

128

9854

9.6

クラブ活動、部活動等への不適応

211

52

205

448

62

328

24

1330

1.3

学校のきまり等をめぐる問題

177

1752

349

186

268

296

39

3067

3.0

入学、転編入、進級時の不適応 

318

243

559

1158

209

790

81

3358

3.3

小計

6128

5989

7236

10008

1952

7881

642

39836

38.9

家庭生活
に起因

家庭の生活環境の急激な変化

132

791

1314

1189

204

1143

217

4990

4.9

親子関係をめぐる問題   

207

1724

1856

2195

436

1836

219

8473

8.3

家庭内の不和

88

870

963

977

186

899

121

4104

4.0

小計

427

3385

4133

4361

826

3878

557

17567

17.1

本人の問
題に起因
 

病気による欠席   

284
 

162
 

1516
 

2251
 

160
 

1574
 

722
 

6669
 

6.5
 

その他本人に関わる問題  

805

3954

7939

7107

1467

7514

1093

29879

29.1

小計
 

1089
 

4116
 

9455
 

9358
 

1627
 

9088
 

1815
 

36548
 

35.6
 

その他    

90

327

514

382

241

895

720

3169

3.1

不明    

147

272

1007

1133

299

1849

700

5407

5.3

計     

7881

14089

22345

25242

4945

23591

4434

102527

100

比率(%)  

7.7

13.7

21.8

24.6

4.8

23.0

4.3

100.0

 

 

<資料1「中学生・高校生の悩み」(スクールカウンセラーについて)>

<資料2『生徒指導資料』>1966年(昭和41年)

「第2集 生徒指導の実践上の諸問題とその解明」では「社会的諸事情の変化」によって「中等教育の急速な普及」と「教育課程の内容の質量両面における水準の向上が要請される」という「いまだかつてなかった大きな課題に直面」することになったととらえていて、生徒指導に充実も必須としている。学校カウンセラー=相談教師も登場することになった。
 しかし、1969年(昭和44年)の「第5集 生徒理解に関する諸問題」では進路指導を踏まえた「生徒理解」というのが重視されるようになり、「ひとりひとりの生徒について生徒理解をいっそう深めること」と書かれているものの「生徒理解のための資料収集の方法」というのが強調されていた。「生徒のもつ性格・行動の傾向や情緒的な問題をはあく」「生徒の環境をはあく」するために「友人関係」「家庭環境」などのデータを収集することが強調された。ホームルーム等がそのために(自立・自主性などではなく)データ収集の時間となったが、これらのデータ収集が「生徒理解」であり単純に信頼や自立に結びつくのであろうか。当時が学力教科詰め込みの最盛期であったということを勘案しなくてはなるまい。
 1972年(昭和47年)の「第8集 中学校におけるカウンセリングの進め方」では、従来の政策を批判してか「生徒指導というと、非行対策のような外側からの規制であるという考え方がかなり残っておりますが、そこから一歩前進して、教師と生徒との暖かい心の交流を確立することがたいせつ」であるとして、「この意味からも、学校におけるカウンセリングについて、あらためて見直してみる必要があると考えます」としている。これは「いま」の意見にも近い。しかし、それではこの考えが反映されなかったのであろうか。カウンセリングの必要がこれほど認識されていたのに、実はこの時代からより荒れたという事実もみられる。1970〜80年代の荒廃を受けて現在では「生徒指導・進路指導」が必修となったというのを初回の授業でみてきた。
 1982年(昭和57年)の「第17集 生徒の健全育成をめぐる諸問題−校内暴力問題を中心に」というのをみればそのことを補完してくれるだろうか。その年代の荒れについてである。「近年、校内暴力が増加し、社会的にも大きな問題となっている」ことと、特に「中学生による事件、特に教師に対する暴力が著しく増加」して「悪質化」や「全国的に発生」していることが記されている。これは現在との関わりでみるとどうであろうか。「校内暴力は、学校、家庭、社会それぞれの在り方や生徒自身の成長過程において形成されてきた性格や意識など種々の要因が複雑に絡み合って発生していると考えられる」としていて、「学校、家庭及び地域社会」が「一致協力して取り組んでいくことが必要」であるが、特に学校が「教育によってこの問題を克服し得るという確信をもって最大限の努力を払っていくこと」が現在最も期待されるという。この認識も前回の私たちとそして文部科学省の方針(現在)とも一致する(まま)です。それでも解決されない難しい問題なのかともいえますが、しかし「その方針下」のはずの私たちは「取り締まり型」ばかりをイメージしてしまっているという事実。もちろんこの資料では「学級指導、クラブ活動、進路指導などの教育活動」の充実や学校生活の充実もあげていますし、「善悪の判断力」をつけさせること、例えば「自主自律と社会連帯、勤労の尊重、自然愛・人間愛や奉仕の精神、規律と責任などの徳性の涵養を重視した実践的な教育活動」を充実させるようにも言っていて、これなども教育改革国民会議(2000年)で論じられていることと変わらないようにも思える。「生徒の問題行動については、早期発見と早期指導がいかなる場合においても大切」だというのも「予防」の観点にも近い。しかし、それが「早期発見による取り締まり」という問題対応になってしまったのでしょうか。「学校における教育相談の機能の充実を図っていく」と認識されていながら、いまもその「カウンセラー養成」や加配が求められるということは「この20年間」に何が行なわれていたのでしょうか。
 「カウンセラー」の登場はそれより以前からでしたが、それが何年もかかっていまに至るのだとしたら、いま早急にと急がれるのがインスタントに考えられないでしょうか。「なぜできなかったのか」という十分な実態把握もなしに、特効薬的に楽観的に、あるいはものすごい期待感で語られる。「そういうもの」がどのように成功するとありえるのでしょうか。もちろん「効果はある」し、導入を訴える人を責めるわけではありません。しかし、以前にもあったということと、それがうまく機能しなかった原因の究明もなしに、それに全面的に依存するというのは「何も考えないに等しい」のではないかと思います。

 (●参照した資料「生徒指導資料」・・・戦後以降の教育政策の変遷をみるために)

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