教育制度論J(2001年12月14日)

苅谷剛彦氏の「階層分化」と「意欲格差」、そして「平等」ということをとりあげて、「制度改革論」において何に注意しておくべきか、その「見る目」(複眼的思考)を大切にしなくてはならないというふうにお話ししました。苅谷氏のNHK用テキストを読んでいきながらの講義でした。

 

「教育改革」の成果を予測する(社会学の方法)

こうして比較してみると、1992年をピークにして、中学生の学校以外での勉強時間が減ってきているのがわかる。これは1992年からの「ゆとり教育」の改革の成果があらわれているともいえないか。

 

それでは「ゆとり」を持った子どもたちが「なに」をしているのか。有意義に学んだり、体験したりしているのか?
左のように調査データからみると、テレビ等の視聴時間になってしまっているのではないか。

 

データで家計・収入等をもとに上・中・下の階層に分けてみると、昔(1979年)より今(1997年)の方が勉強時間が短くなっているのがわかる。そして下位階層ほど深刻にあらわれている。


 

「成績への不満」や意欲、あるいは向上心というものも、昔より今の中学生の方が少なくなっている。「意欲」が低価しているのである。これも下位ほど大きい。

「自分を他人よりすぐれていると思う」自信をもっている子への質問で、「学校が役に立つか」ときくと左のような反応であったという。今の生徒は学校を信頼していないのか。


 

同じ生徒たちに「現在」がよければいいか、「将来」のために頑張れるかとの質問には左のような反応があった。「上位」の子だけは頑張れるのである。



 

 

以上、代表的な資料のみを載せたが、「教育改革」は思わぬ影響を及ぼしているのではないか。そしてこれは「学力」というよりも「やる気」や「機会」「競争への参加」というものへの「意識格差」がつくられつつあるのではないかというのを確認していただいた。