教育制度論H(11月30日)

 

前回の復習を兼ねて、「受験」に関するアンケートの結果を振り返ってみた(略する)。

 

今回から二回に分けて、「制度」を改革することで「教育問題」をなくしていくことができるのかということを考えていく。「制度」を与えられたものとして受け止めていくだけではなくて、必要なら働きかけていかなくてはいけないというのがこの「制度論」のテーマである。私は「不登校児童」と10年近く関わってきているが、「制度」という面ではまず「出席日数」の問題がある。進級や卒業ができない。実は私立の場合、義務教育であってもこれで排除された例もある。あとは大学入試制度でも「調査書」というのがまわってきて、点数を満たしていても会議で時々「出席日数」が問題視されることがある。「大学」ですよ? これが「高校も出席できないやつが来たって困る」という固定観念ではないことを祈りたい。大学は8年間在籍できるから不登校ぎみの方が儲かるなんていう考えよりは好意的かもしれないが、「出願条件・資格」を満たしているのにそういう材料にするということはどうであろうか。これは前回の「入試」と同じ問題である。「制度」が動きを失って固定されてしばられているともいえる。例えば「不登校」が長欠児といって30日間の欠席からいまでは年間で50日間以上の欠席を目安とすることになったが、それでは「49日」ならいいのでしょうか? ばかばかしい考えであるがしばられるというのはそういうこともありえる。調査だって保健室に来たり、あるいは身体測定に来たり、来ただけで授業を受けないで帰っても「出席」とカウントするところもあれば、切り捨ててしまってつける学校もある。「一律にみる」というのも「固定」である。すると、ぜんぜん、「制度」がまもってくれるとはならない。クリアする条件となるだけである。重荷になって、悪循環で学校に来れなくなって、すると異常でもなんでもなくていじめられて心の傷ができて来れない子も「被害者」のまま制度の中で消えてしまう。助けるといっても「あまく」ではなくて、何をするべきかを考えていくことである。「来なくてもいい」とするのが目的ではない(以下は略)。

 

1 不登校・登校拒否・ひきこもりの背景

 不登校・登校拒否は時代とともに変化してきている。その背景として考えられるものはなんであろうか・・・。(説かれるもののいくつかをあげてみる)

@少子化による人間関係の変化、崩れがみられること。

A地域社会の教育力の低下。

B学歴社会、幼児早期教育による新しいタイプの学力優等生の息切れがみられること。

C効率化優先の社会によって、競争原理の社会と家族の論理との間でゆがみ=矛盾が生じ、家庭内弱者の子どもに不登校やいじめ、援助交際などの症状があらわれていること。

D父性と母性の問題として、父性が昔のように受け継がれたり実子とのかかわりで機能しないように社会が変わっていることと、母性との問題として母子密着や過剰適応の問題があること。

 

2 タイプ別見分け方の一例

 「不登校」というひとことで語られるが実際の症状・様子・症例は様々である。(ひとことでくくられたとしても症例や状態は個別のものである)

@文部省分類型の7つの区分(学校生活に起因する型、あそび・非行型、無気力型、不安などの情緒混乱型、複合型、意図的な拒否の型、その他)

A梅垣弘による改良型(欠席のタイプとして、「学校生活に起因」、「遊び・非行」、「無気力」、「不安などの情緒混乱」、「アパシー」、「意図的な拒否」をあげ、それぞれに「欠席の理由」を明確・なんとなく・不明確、の3つと、「欠席の形態」として、継続的、断続的かや、他に外出、すくみ反応、身体不調の訴え、家庭内暴力、交友関係、睡眠、昼夜逆転、学習意欲、等でさらに細かく分類する)、の方がよりリアルに把握することが可能である。

 

3 情緒的混乱型(心因性)登校拒否の回復の過程

 不登校も時期によって状態も違うし、応対も変えるべきである。刺激を与えるか、見守るかの二元論を説くのは意味がなく、その事例ごとに把握していくことをこそ「考えて」いかなくてはならない。そして「制度」が二項対立で語られると結局は何も解決にはならない。

 前駆期→要因(きっかけ)→進行期→混乱期(ひきこもり期)→回復期→再登校期

 

4 「不登校」か「登校拒否」か

 ・国立国会図書館が所蔵する雑誌・論文の調査 「登校拒否」「不登校」の名称の使用傾向

  (『雑誌記事索引 カレント版』CD−ROM1990年〜1997年5月までのものを調査)

 

論文本数

不登校

登校拒否

1990年
1991年
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年(5月まで)

 69本
 49本
102本
 69本
115本
 43本
108本
 72本

 9本
 20本
 22本
 15本
 68本
 32本
 75本
 57本

 63本
 33本
 86本
 57本
 86本
 19本
 40本
 17本

 

 上の統計数字はあくまでもタイトルで「不登校」「登校拒否」「不登校・登校拒否」などのことばの使用傾向をみたものであって、タイトル表記以外は含んでいないため不十分なものである。しかし、それでも全体の件数は増えていることと、はじめ「登校拒否」がつかわれていたものが「不登校」とされてきたことはみてとれる。

 

「学校恐怖病」phablar→「登校拒否」School Refusal→「不登校」non attendance

 

 ・・・世界的にも「恐怖症状」という個人的病状のような理解から、「登校刺激へのいすくみ現象」(病気ではないが、しかし個人にも原因があるとする考えが多くなってか)、そして「登校というものをとらえなおすもっと広い意味のもの」というふうに「とらえかた」が変わってきた。

 

 研究のアプローチ ・・・次のようなパターンが多くないか

 (1)その構造を対象とする理論的・解釈的な研究、(2)特定事例を対象としてしぼった追跡型研究、

 (3) 質問紙法等による全体数量把握のための統計的調査研究、

 

準備されている機関、組織、対応(制度)など

 民間・・・フリースクール、フリースペース、夜間中学、予備校、山村留学

 学校・・・サポート校、心の相談室指導員、スクールカウンセラー

 行政・・・適応指導教室、児童相談所

  次回、行政のシステムなどを説明する。

 

 

 

「平成10年度不登校状態となった直接のきっかけと不登校状態が継続している理由との関係」

(文部科学省初等中等教育局児童生徒課『生徒指導上の諸問題の現状と文部科学省の施策について』平成13年)の数値から・・・。

 

<小学校>


区分
 

不登校状態が継続している理由

学校生活上の
影響

あそび・非行
 

無気力
 

不安など情緒
混乱

意図的な拒否
 

複合
 

その他
 


 

比率(%)
 

学校生活
に起因




 

友人関係をめぐる問題     

596

15

179

922

111

802

48

2673

10.3

教師との関係をめぐる問題   

140

4

33

141

62

187

15

582

2.2

学業の不振     

85

31

367

200

24

220

22

949

3.7

クラブ活動、部活動等への不適応

3

1

6

15

2

14

2

43

0.2

学校のきまり等をめぐる問題  

19

5

13

34

31

29

6

137

0.5

入学、転編入、進級時の不適応 

72

0

73

321

24

205

22

717

2.8

小計

915

56

671

1633

254

1457

115

5101

19.7

家庭生活
に起因

 

家庭の生活環境の急激な変化  

71

31

458

714

39

610

162

2085

8.0

親子関係をめぐる問題     

91

59

821

1697

130

1251

205

4254

16.4

家庭内の不和    

25

25

259

414

45

324

62

1154

4.5

小計

187

115

1538

2825

214

2185

429

7493

28.9

本人の問
題に起因
 

病気による欠席   

55

6

410

647

22

595

214

1949

7.5

その他本人に関わる問題    

176

51

1736

2701

281

2362

471

7778

30.0

小計

231

57

2146

3348

303

2957

685

9727

37.6

その他    

28

14

343

247

98

502

660

1892

7.3

不明    

39

3

211

365

57

627

389

1691

6.5

計     

1400

245

4909

8418

926

7728

2278

25904

100.0

比率(%)  

5.4

0.9

19.0

32.5

3.6

29.8

8.8

100.0

 

 

 

<中学校>


区分
 

不登校状態が継続している理由

学校生活上の
影響

あそび・非行
 

無気力
 

不安など情緒
混乱

意図的な拒否
 

複合
 

その他
 


 

比率(%)
 

学校生活
に起因




 

友人関係をめぐる問題     

4548

1519

2146

6436

945

4595

342

20531

20.0

教師との関係をめぐる問題   

300

206

209

386

179

388

28

1696

1.7

学業の不振     

574

2217

3768

1394

289

1484

128

9854

9.6

クラブ活動、部活動等への不適応

211

52

205

448

62

328

24

1330

1.3

学校のきまり等をめぐる問題  

177

1752

349

186

268

296

39

3067

3.0

入学、転編入、進級時の不適応 

318

243

559

1158

209

790

81

3358

3.3

小計

6128

5989

7236

10008

1952

7881

642

39836

38.9

家庭生活
に起因

 

家庭の生活環境の急激な変化  

132

791

1314

1189

204

1143

217

4990

4.9

親子関係をめぐる問題     

207

1724

1856

2195

436

1836

219

8473

8.3

家庭内の不和    

88

870

963

977

186

899

121

4104

4.0

小計

427

3385

4133

4361

826

3878

557

17567

17.1

本人の問
題に起因
 

病気による欠席   

284

162

1516

2251

160

1574

722

6669

6.5

その他本人に関わる問題    

805

3954

7939

7107

1467

7514

1093

29879

29.1

小計

1089

4116

9455

9358

1627

9088

1815

36548

35.6

その他    

90

327

514

382

241

895

720

3169

3.1

不明    

147

272

1007

1133

299

1849

700

5407

5.3

計     

7881

14089

22345

25242

4945

23591

4434

102527

100.0

比率(%)  

7.7

13.7

21.8

24.6

4.8

23.0

4.3

100.0

 

 

以上の数値から、「不登校」がどのようなもので、そしてとらえるのが困難で、固定することのできないものであることを読み取ってもらった。こういう資料なりグラフなりから事実を読み取って、説得力のある証拠をつくりあげていくことを教師は鍛えていくべきである。