●<コラム>「サンビストの想い」 2006年5月28日
「文化圏という考え方」・・・ 1年間以上、このコラムを書かないでいました。もちろんジャーナル類の連載でもブログでもなく、そういった類の何らかの企画ものではないですし、「サンボアカデミー横浜」の活動の一環として「サンボの紹介」になればいいという気軽さで書いていますので・・・。 この1年間、サンボの試合や練習をみて、いろいろ気づかされることがありました。まだまだ学んでいきたい・・・。いや、これからが本格的に、そして誠実に学ばないといけない時期なんだなと思っています。 ・+・×・+・×・+・×・+・×・+・×・+・ さて、「サンボ」は旧ソ連時代に形成されたスポーツです。そして、以前に書いたようにユーラシア各地の伝統的な民族格技の要素をもとにして形成され、そこに外国のスポーツ・格技をも研究してその要素が加えられたといえるでしょうか。日本の柔術・柔道はとくにエキゾチックなものとして注目されましたし、初期においては軍事的目的(軍部内・内務省で研究され兵士強化を目的とする意図もあった)から護身術的要素を強く含んでいたため、空手や合気道なども研究されていました。フランスのサバットや英国のボクシング、中国拳法なども研究対象となっていました。日本の相撲やトルコのオイルレスリング(ヤール・ギュレシュ)など、世界中の民族的相撲・レスリングもその注目の対象となっていたのですね。言うまでもなくフリースタイルやグレコ・ローマンスタイルのレスリングも影響を与えています。今回の背景画像はロシアの資料の一部ですが、ここにもそれらが示されています。 今回は「文化圏」について書いてみます。 1年間、mixi等、他でサンボのことを書いていたとき、「サンボに準備運動や基本姿勢はあるのか」という質問をいただきました。「サンボの本」のコーナーにあげたように何冊かロシアの本は読んでいますが、いちおうどの本にも準備運動や基本姿勢も書いてあります。あちらで練習しても、そういう基本も教わることができます。「中国拳法」や「日本の武術」のような様式はないのかという照会に対して(そのときは)だいたい以下のように答えてみました。 サンボはだいたい70年弱程度の歴史ですし、前史あわせても新しいものです。中国や日本の拳法・武術のような伝書とは比べるのは難しいと思います。 中国拳法は古典ですね。やはり伝統が違います。また、とくに「紙」がある文化圏(東アジアですね)の武術・格技は「絵図」や「文字」で表記が可能ですが(伝書がありえるわけです=2世紀から紙がありますので「書きつけることができる」)、ヨーロッパではイスラム圏(トルコ帝国の影響)から紙が伝わったのが15世紀ですから、それに印刷術や「洋紙」が生産可能になったのが18世紀です。ですから石像に「相撲やレスリング」像はあったり、また石窟に描かれた絵はありえますが、それ以外は「あらわしかた、のこしかた」が難しいという限界があったのではないでしょうか。 そのかわりかとも思いますが、レスリング、チダオバ、オイルレスリング、モンゴル相撲などは「まつり」が行われるわけです。「かたち」や「まつり」として継承されることになったんじゃないでしょうかと。
そんな仮説をもっております。 日本も6世紀頃から紙をつかい、和紙を生み出せた。こうぞ、みつまた、がんぴなどの原料となる喬木があったためです。中国・朝鮮半島・日本らはこれにより「文字文化圏」として「進化」することができたのではないでしょうか。ヨーロッパが自由に紙をつかって資料をのこせるようになるには時間がかかった。だから彼らは言論や思考に磨きをかける「言語文化圏」となった。必然的に古典が大量に現存する前者では保守的な思考法になりやすく、過去に重きをおく文化圏となる。儒教道徳などの社会観もこういうものですよね。対する後者では新しい創造に価値観をおくようになり、そのため「近代化」の舞台になりえたと思うのです。現在は「洋紙」の時代、あるいはペーパーレスの時代ですが、この1000年以上の伝統の差は「文化圏」を形成するほど「いま」も影響を強くのこしているわけです。西洋のスポーツ類が違ってみえるのは、そういう「伝統・文化の差」の部分なのかもしれません。 「形」としてはあるが「文字」「絵」が少ない伝統格技を統合してつくられていったものがサンボです。しかし、まさに「近代」に新たに創出されたため、「まつり」等のみではなく、かなりシステマティックに考えられています。古典とよべるほどの古い文献はありませんが、初期の文献から「基本」「準備運動」「形」などが整理された「新しい競技」がサンボです。そして舞台が「創造の文化圏」であったため、たしかにプレイヤーには創造たくましい選手達(や技術)がみられます。 プーチン大統領も「サンボ」という年鑑に昨年書いています。 「サンボは常に創造を忘れない格闘技だ」と・・・。 |
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