<コラム>「カミングアウト(その1)」 2005年3月19日

 Monologue

 「サンボ」について、これから私の考えかたやスタンスを独白させていただく。まず、「今だから言える」ことを、書いておきたい。

 私(古賀徹)は、現在、左足の膝の靱帯が3本(ほぼ)切れている(2本切れ、1本が重度の損傷)。そのため、日常の歩行のときも引きずって歩いてしまうし、実は階段の昇り降りなどにも困難するのだ。だから練習で立っている時やフットワークやステップをつかっているときも、実はほぼ「右足」を中心にして動いている。両足ジャンプも普通にやっているように見えるかもしれないが実は右足だけで(もちろん上半身の引きつけもあるが)跳んでいる。もっと状態について述べれば、左足(膝)は、「曲げる」ことも「伸ばす」ことも不自由である。レッグカールやレッグエクステンションもできないのだ。膝上のサイズも5cmちかく違っている。靱帯が切れてから、また特にその後に「屈伸」ができなくなって使わなくなったこともあってか、左膝の上(腿)が細くなった。

 

 そろそろ本題に移りたい。私はいまのような「状態」になったのは、ちょうど大学卒業の時だった。これが重大な「告白」となる。私は大学卒業後、今に至るまで「ほぼ片足」の状態で暮らしてきているのだ。

 なぜ、それが重要で、そして今まで言わなかったのか? 私は、大学卒業後、いままで18年間の中で、何度もいろいろな格闘技の試合に出ているのだ。サンボも出たし、レスリングも出た。コンバットレスリングも空手も総合格闘技も、シューティングのプロにも出た。ついでにいえばプロレスにすら出たことがある。それぞれそれなりに勝ったりもしたし、善戦もした。もちろん負けたことも多い。しかし、実は私は「片足」だけしか動かない状態だったのだ。これはその時に言うわけにはいかなかった。

 これ、失礼な話しになってしまうのだ。あるいは負けたときには「いいわけ」になってしまう。もちろんどんな状態であろうと出場することは自分の意志なのだから、堂々と「俺は片足だけしかつかえない」と言って出てもよかった。しかし私には言えなかった。最後に試合に出てから(シューティング)10年ぐらいたつ。もう40歳になる。だから、あえて宣言しておいていいのではないかと考えた。もう、時間は過ぎた。十分に、時間は過ぎた。

 ちなみに、負傷していて、なぜ出たのか? 物好きに思われるだろうか。

 私は、大学卒業後、自分で試合に出ようと思ったことはないし、申し込んだことも「一度もない」。いろんな試合に出たから「物好き」「試合が好き」「目立ちたがり」「新しいものにくいつく」とか思われたこともあっただろう。もちろん「チャレンジャー」と評価されたこともあったかもしれない。とにかく私は自分で望んで出た試合はないのだ。

 だいたいの試合が、主催者側に誘われて出場している。これが今回の「主題」となる。

 つまり「真実」や「本質」を、何か表層に表れたものから判断するのは難しいということだ。少なくとも私はそう考えている。なぜなら、私はそういうことを「そのとき」に語らなかったわけだ。評価や、例えば評論や記事を書くのは「他者」なのだから、それは誰かの考えの範囲や思い込みにすぎないという限界をもっている。だから私は「記事」や「テキスト」そのままを受け取り、それを自分の知識とすることはない。いや知識にはするが、「知見」として把握するぐらいで、それを「俺のものだ」とすることはないのだ。きっと、書かれた「状態」の裏には、いろんな描かれないモノが含まれている可能性が強くあるのだ。それを看取できないと「わかったふり」の事実誤認となってしまいかねない。

 なにしろ、私のように10数年間、語らなかった人間がいる。雑誌にも、あるいは様々な業界内でも「彼はこういう人間」と評価されていても、それへの誤解を解こうとすらしなかった人間である。だから、「真実」はきっとそんなに簡単に語られないし、理解できるはずもない。私はそう考えている。私と試合をした人たち、それを見てきた人たちは、きっとその真実を気づいていなかったはずだから。「記事」や「教科書」には、なかなか真実など描かれないですよ。そんなに簡単に真実を「情報」から得ないでください。いや「うのみにする」のではなく、その「情報」から考えていってください。「サンボ」もなかなか複雑です。だからこそ、やりがいはあるのですが・・・。

 たぶん、「常に学び続ける」「常に考え続ける」「深めていく試み」しかないのではないか。今回の結論はひとことでいえばそのようなことです。

 


 

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