<コラム>「サンボ戦士(サンビスト)の活躍!(その3)」 2005年2月24日

 PRIDE王者になったヒョードル−ノゲイラ戦について、またまた書かせていただきます。昨年、夏のグランプリの一週間前に受けたインタビューの内容(掲載されたもの)を、前回のコラムに掲載しました。後から語ることは「結果論」となることもありますが、いちおう指摘した「部分」は出ていた「たたかい」だったのではないでしょうか。私は「結果」が出てからビデオ等をもとに語るタイプの人間ではありません。そうではなくて、実はスポーツ競技には「永遠回帰」「循環」とでもよべるような法則があるということをいいたいのです。「常勝」「強豪」と呼ばれるものがなぜ存在するのか? もちろんいつかは負けるのですが、しかしある時に勝ち続けてそう呼ばれるものはたしかに存在するわけです。野球やフットボールなどの球技でも同じです。練習量が多い。勝ちパターンをもっている。選手層が厚い(これらは体力・体格、そして技術・戦術とも重なります)。あるいは、ハングリー(これだってそういう選手層・素養・社会的条件であり、そういう体格・技術と重なってきます)。「ロシア」「ブラジル」「日本」も、それぞれなかなかに強豪国なのではないでしょうか。

すると結局そういうところが戦うことになったら、そういうものの「量」で「勝敗」が左右されやすくなるわけです。拮抗して最後までもつれても、結局は「より勝ちやすい方が、勝つためのことを繰り返し、そして勝利を得る確率が高い」ということです。ちょっとわかりにくいですかね。

サッカーのゴールデンゴール、その後のPK戦、野球の中継ぎからおさえまでのリリーフ陣の陣容。テニスのタイブレーク・・・。他にもありますよね。

そういうものは「競技スポーツ」で生きてきた人間なら誰でも感じている部分ではないでしょうか。そして、もちろん格闘技にもそういうものはある。アマチュアで「強豪」とされるチームはなぜ強いのでしょうか。<レベルが高い、指導者が優秀、優秀な選手が集まる>・・・、と、こういうことが「勝つ」ゆえにさらに循環していくのですよね。そういうものが「戦力」とひとことでいえるのかもしれません。

こういう「永遠の循環」の法則が「競技」にはある。なぜなら、そこに「ルール」「きまり」があり、 「勝敗の条件」が決定されているからです。だから、そのための戦力を保持できるところが当然に勝利の循環でつねに上の位置にいやすくなる。これはもちろん、チームでも個人でも同じです。私たち個人も、その競技の中で使える技を磨くわけですよね。それで戦力を一つ一つアップしていく・・・。もちろんエリオ・グレイシーさんが「総合では柔術の技術をみなが認めて学ぶ」「従って、柔術は勝利している」というのもこの文脈です。たしかにいまの「総合」は柔術の技術多いですから。でも、私は「そういうものも含めて、循環の中の一部であって、すべてではない」と思っているんですけどね(いつか、また詳しく書きます)。

さて、手前味噌ですが、あの時の闘いで、フョードルはどうしていたか考えてみましょう。

●スタンドの打撃とテイクダウンで優位に立った。・・・寝技につきあわなかったわけですね。前回の記事の見出しは、「相手と向かい合う“ポジション”と“重心”、これがヒョードルの強さです」でした。フョードルはノゲイラと打撃の攻防をしていたとき、ボクシング特訓をしてオーソドックスにかまえるノゲイラに対して、ガードをかためていなかったのに気づいたでしょうか。あれで何故、ノゲイラの打撃をそんなにもらわなかったのでしょうか。それは「距離」が当たらない「位置」にいたからです。正面だけれど、届かない位置。ところがフョードルのパンチは当たり、そこが評価された。何故、同じ位置から片方だけの攻撃が当たるのか。これはフョードルが「攻撃」の「位置」に移動をして打っているからですね。細かくいえばノゲイラの攻撃の前後、特に後と、そして両者が動いてノゲイラが引いたとき(後ろにステップして体重が移動する瞬間)をねらって、フョードルは踏み込んでパンチを打っています。どちらかというと回転で連打するのではなく、遠間から一気にステップで入りながら、肩をまわしながら体重をのせていく・・・・という方法をとっています。これは移動しながら打つ練習をきっとしているのではないでしょうか。ようするに「打ち合い」はしていないのです。「位置」(ポジション)と素早い「重心」移動ですね。しかも打ったときに自分が移動しているのでそのまま「差し」の状態で相手を倒していくことが可能なわけです。ノゲイラの方がおそらくリーチは長いでしょう。おまけに正統派的なボクシングテクニックを使うわけです。ところがフョードルの戦法は、自分の「ポジション」と「重心」、つまり「バランス」を取り続けることによって、相手の攻撃を防いでしまっているわけです。このことは、

「ヒョードルの強さは「パンチ」にあると言う人がいますが、私は何よりも「ポジション」と「重心」にあると思っています。サンボに“相手の攻撃を受けない位置から相手を制する”という極意がありますが、ヒョードルの試合はまさにそれを体現している」と書いたとおりですし、「あとは自分の得意パターン、勝利の方程式を試合の中で延々と繰り返すことができる勤勉さ。自分が不利な時は下手に相手の攻撃に付き合わず、とにかく逃げて(試合中のリカバリーが恐ろしく完璧。逃げる練習も普段から相当していることが窺えます)、一度リセットしちゃう。ふつうそういう繰り返しはしんどくて疲れるから嫌がるんですけど、彼はすごく地道に勝つまでそれをやる」と書いた(答えた)とおりですよね。

 実は、サンボの試合では、立ち技で、わりとこの「出入り」が使われるのです。世界選手権とかをみられたかたはわかるかと思います。何故かというと、「投げ合い」をしないためです。止まっていて引き手とつり手で崩し、足で相手をくずして「つくり」、それから投げる・・・、これは「柔道」で素晴らしく進化(深化)しています。しかしサンボは別の競技です。そういう「位置」での争いは少ない。だから一見、腰を引いたかのような、投げられない遠間から、つかうとするなら前後のフェイントをつかって、一気に投げにきます。柔道だと左右のくずしがうまいし、足を崩すのがすぐれている。しかしサンボだと「前後」を一気に移動してくるような、「自分の移動」を使うことが多いのです。オリンピック柔道を見てると、ヨーロッパの選手がよくこういう動きをします。それが「サンボ」でいうところの「位置」「重心移動」の一つなのです。

 ちなみに、これは「サンボ」にしかない、というのではなく、そうではなくて柔道の試合にも通じて結果が出ている有効な方策で、それと同じような戦法が使われているというお話しがしたかったのです。「投げ合う」「打ち合う」ことをしないバランス。それがフョードル選手の最大の特徴なのではないでしょうか?

 


 

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